ガルパンに学ぶリーダーシップ

先日上映終了寸前の「ガールズ&パンツァー劇場版」を観てきましたが、かなり面白かったので、テレビで放送していた本編も観てみました。

そしたら、やっぱり面白い!
もちろん、主人公・西住みほの属する大洗女子学園の活躍や彼女を取り巻く人物たちの友情にもホロリとさせられますが、社会人として考えさせられることも多いです。

特に勉強になったのが、リーダーシップとマネジメントについて。
両方ともMBAで学ぶべき内容で、留学前からそれをどのように身につけるかということを考えてこれまで過ごしてきましたが、漠然とした概念であることもあり、それが何なのか、どのような形が望ましいのか、ということはMBA課程を終わってすらはっきりとはつかめない感じがしていました。

【リーダーシップとは?】
そんな折、リーダーシップについて「なるほど!」と思われた記事に出会いました。
ブロガーとして有名なちきりんさんの記事です(「なんで全員にリーダーシップを求めるの?」)。

この記事を読んで、自分としては「リーダーシップというのは、リーダーというポジションにおいて人を引っ張っていく力」ではなく、「自分の役割を理解して、組織が最も良い状態になるように、能動的に動くこと」という風に理解しました。
つまり、リーダーシップという資質を多くのメンバーが持っているほど、組織は円滑の機能してその能力をより発揮できる、ということです。

じゃあマネジメントとは?と言われると確たる答えはないのですが、それこそ「リーダーというポジションでメンバーをうまくまとめてゴールを目指す」という、よく言われるリーダーシップに近いものなのかな、と思っています。

 

【ガルパンに学ぶリーダーシップのあり方】
それはさておき、ガルパンの舞台である戦車道は戦車部隊同士の対戦なので、当然に組織やメンバーのあり方が問われます。

戦車道では、チームの総指揮官として隊長(大規模な編成の場合は大隊長)がいて、その下に各戦車のメンバーのまとめ役である車長(大規模な場合は中隊が編成される)がいます。

基本的には作戦立案は隊長(大隊長)が行いますが、刻々と変化する戦況の中、すべてのことを隊長が行っていては後手後手の対応になり、臨機応変な戦いができません。

そのため、中隊長や各車長、そしてそのメンバーそれぞれが自分の役割を理解し、リーダーの意思決定に依存せず、能動的に行動するというリーダーシップが重要になります。

【自分で自分の果たすべき役割を考えて動く】
そんなリーダーシップのあり方が垣間見えるのが、本編12話(最終話)の一コマ。
強敵相手にギリギリの戦いを強いられる中、ウサギさんチームの車長・澤梓は、とある役割は自分たちに任せてほしいと申し出ます。
それはその局面で大事な役割だったのですが、実はこのウサギさんチームというのは1年生のチームで、経験が浅いメンバーです(もっとも、主人公の西住みほ属する県立大洗女子学園では、みほ以外は全員初心者ですが)。

その経験の浅い、しかも最下級生が自らのできることを踏まえて、いま必要とされている役割を自ら担おうとする。
これこそが、まさにポジションとは関係ないリーダーシップと言えます。


©GIRLS und PANZER Projekt

 

そしていくつかの戦果をあげた後、最後に大物戦車・ヤークトティーガーとの一騎打ちになります。
戦いは劣勢でしたが、仕留めるのも彼女たちの役割。
失敗すると戦局に致命的な影響が出ることは明らかでした。

そこで同じ戦車のメンバーがテンパってる中、車長の梓は「ヤークト(ティーガー)を(別行動している)西住隊長のところに絶対に向かわせちゃいけない。ここでやっつけよう。」とメンバーを鼓舞します。
戦局全体を理解したうえで自らに課された役割を果たそうとする姿はやはりリーダーシップだなー、と思います。


©GIRLS und PANZER Projekt

 

このような梓のリーダーシップは劇場版でも垣間見られます。
本編に登場する学校のオールスター軍団を束ねる大隊長・みほが各メンバーに「自分たちにできる戦いをしよう」と鼓舞したのに対して、「自分たちにできることは何か」を問い続けます。
ここにも、自分たちの能力や戦車のスペックでどのような役割を果たすべきか、ということを能動的に考え、動こうとする彼女のリーダーシップが見えてきます。


©GIRLS und PANZER Projekt

 

このようなリーダーシップは大洗女子学園だけのものではありません。

劇場版はオールスターということもあり、本編で対戦した各校のメンバーの姿もよく見えて興味深いです。

例えばプラウダ高校(ソ連をモチーフにした学校)のKV-2のメンバーは、彼らのリーダーがピンチに陥ると、自らを盾にしてリーダーを逃がすという行動を自発的に取ります。
そのリーダーがピンチを脱することがチーム全体の利益になることを知っていたためです。
彼女たちもチーム内ではリーダー的ポジションではありませんが、自ら果たすべき役割を能動的に行動に移しました。

  
©GIRLS und PANZER Projekt

 

そして、終盤には大物戦車を倒すために、大洗女子学園のライバルでもあった聖グロリアーナ女学院(英国をモチーフにした学校)の隊長・ダージリンは自らのポリシーである「優雅な勝ち方」を捨てても戦果を求めました(オールスターチームの中では中隊の副隊長として活躍しています)。

さすがに隊長を務めているだけあって、その辺のリーダーシップはしっかりしています。

ちなみに彼女は劇場版で他にも重要なリーダーシップを発揮する機会があって、さすが隊長ってところです。


©GIRLS und PANZER Projekt

 

【アニメから学ぶことも多い】
たかがアニメ、されどアニメ。
マンガから学ぶものが少なくないように、アニメから学ぶこともまた多いと思います。

彼女たちの行動はアニメを見ていると割と自然ですが、実社会では指示待ち人間が少なくありません。
どの世代にもそういう人はいると思いますが、自分も含め若い世代は指示を受けて行動することが多いため、受動的な役割に終始してしまうこともやむなしとなってしまうかもしれません。
ただ、それだと自分の成長速度は鈍化するし、いざリーダーシップが求められたときにも適切な行動がとれないような気がします。

だからこそ、自分は自分なりのリーダーシップを身につけて、どのような立場でも自分なりに組織を動かしていけるような人間になりたいと思います。
そういう点からもガルパンに感じるところは多々ありました。

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研究の道筋を描く

「資産運用会社の忠実義務」を研究するために大学院に入って1年が経ちました。

会社の方針や上司からの指示を受けて仕事をする日常業務とは異なり、全く白紙の状態から自分で研究の方向性を考えて論文を書き上げるというのは創造的である一方、基本的には方向性から調べる資料まで全て自分で考えなければいけないので、自分の判断が正しいか不安になることも少なくありません。

といって、自分の考えだけで進めていくと、学術的な研究としてはあさっての方向に行っていて、気がついたときには取り返しがつかないことになる恐れがあります。

そのため、1月にゼミで自分の研究の方向性を発表し、教官やゼミ生の意見を聞いて大体の研究の方向性を固めました。

発表前は自分の研究の具体的な論点や論文の構成などが適切かどうか不安がありましたが、意見を聞いて必要な修正を行い方向性が固まった現在はとりあえずその方向に向かって論文の作成を行っています。

論文の作成を進めてみると、自分の考えていた仮説が実は簡単には導けなかったりしてどのように自説を補強するか悩んでいるところですが、方向性自体には問題がなさそうなので、あとは掘り下げるだけという安心感があります。

博士課程というのは、誰も手を付けていない内容について博士論文を書き上げるというプロジェクトと言えますが、そのようなプロジェクトを真っ白な状態から始めるにあたって、まずは方向性を決めることが大事ということを学ぶことができました。

論文の内容に絡むことについて学ぶのはもちろんですが、せっかくの一人プロジェクトなので、プロジェクトマネジメントの観点からも何かしら身につけていきたいところです。

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Company presentation for RSM visitors

多くのビジネススクールでは他国に修学旅行のように訪れて、その国の会社などを訪れるということが行われています。

我が母校のRSM(Rotterdam School of Management)も同様のことを行うことがあるようで、1か月ほど前に金融専攻の在校生から会社訪問をさせてもらえないかと打診がありました。

卒業生として在校生相手にプレゼンを行うということは非常に光栄なことですが、人前で話すことは得意でないですし、しかも英語でプレゼンに質疑応答となるとそれなりにハードです。

そのため少し悩みましたが、やはり光栄なことですし、ブログのネタにもなるし、何より英語のプレゼン一つもできないようでは外資系の会社で今後やっていけないだろうと考え、引き受けることにしました。

プレゼンをするとなるとまずは資料作りです。
せっかく海外から来てもらうわけですし、日本の金融市場や運用業界のことを知ってもらいたいと思い、「会社の紹介」「日本の運用業界を取り巻く環境」「資産運用会社の業務」の三本立てでいくことにしました。

「日本の運用業界を取り巻く環境」については日本の家計の特徴としてリスク資産に対する投資の割合が小さいことはよく知られていますが、日米欧の比較と日本市場における運用業界のポテンシャル、海外運用会社を呼び込む金融庁や東京都の取り組みなどを紹介することにしました。

「資産運用会社の業務」については、ファンドマネージャーやアナリストだけでなく、それを支えるミドル・バック部門の紹介やコンプライアンス担当者として自分がどのような役割を担っているかなどを紹介することにしました。

 

資料が完成したら次はプレゼンのイメトレ。
日本語でもプレゼンをするときは事前に練習しますが、英語となるとなおさらイメトレが必要です。
必ずしもイメージ通りにプレゼンが進められるわけではないとはいえ、準備をしていると気持ちが楽になってやりやすくなります。

 

そして本番当日。
参加者26名を迎えていよいよプレゼンです。

頭の中では一通り説明したらいくつか質疑応答があっておしまい、という想定でしたが、そこは海外流。
プレゼンの途中でガンガン質問が飛んできます。
こちらが一方的に話すのならともかく、質問を理解して話すということは得意ではないので少し焦りましたが、これも練習だと腹をくくりました。
質問があること自体は関心を持ってくれているということでありがたいですし。

 

説明と質疑応答を繰り返し、何とか最後まで説明しきったところで、改めて質疑応答。

下手な英語の説明だし、みんな退屈していたかと思いきや、質問が出るわ出るわ。
冷や汗が出そうでしたが、何度か質問を聞き返しながら答えきりました。

ちなみに、質問としては記憶にあるだけでも下記のようなものがありました。
・日本の投資家が欧米に比べて保守的なのはなぜか。文化的なものか。
・NISAは英国のISAのように投資額に制限があるのか
・役職員は自分の取引をすべて会社に開示しなければならないのか
・当社が日本の投資家に提供している運用プロダクトについて
・なぜMBAの後にコンプライアンスというキャリアを選んだのか

ちなみにMBAの後にコンプライアンスの仕事を選んだのは、単にそれしかポジションがなかったからです(涙)
先輩として正直に答えました(笑)

 

最後にみんなで写真撮影。
最後までヒヤヒヤでしたが、無事に終わってよかったです。自分にとっても大変有意義な経験になりました。
このプレゼンが在校生の方にとって少しでも役立つものになったらと思います。

英語はもっと練習しなくては。。。

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ガルパンに学ぶ「学ぶことの大切さ」

先日Amazon Fireのコンテンツをいろいろ見ていたら、長期間の公開が続いていることでも話題になっている「ガールズ&パンツァー劇場版」があって、ガルパンは見たことこそなかったものの、気になっていたタイトルではあったので、テレビ版を飛ばして劇場版から見てみました。

ちなみにガルパンの概要はこんな感じです。
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戦車を使った武道「戦車道」が華道や茶道と並んで大和撫子のたしなみとされている世界。
県立大洗女子学園に転校生・西住みほがやってきた。
戦車道が嫌いで、戦車道のない大洗女子を選んだみほ。
ところが転校そうそう生徒会長に呼び出され、必修選択科目で戦車道を選択し、戦車道全国大会に出場するよう強要される。
しかも、集まったメンバーは個性派ばかり。
華道家元の娘の五十鈴華、恋に恋する武部沙織、戦車マニアの秋山優花里、朝に弱い優等生の冷泉麻子――。
友達とのフツーの女子高生活を夢見るみほの、ささやかな願いは叶うのか―?

出所:NHKウェブサイト http://www.bs11.jp/anime/post-96/
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キャラクターとかストーリーの背景をほとんど知らない状態で見たのですが、これが結構面白い。
キャラクターが個性的なこともありますが、戦闘(試合)は迫力あるし、戦術も面白い(荒唐無稽だけど(笑))。
登場人物同士の友情もホロリときます。

で、これを映画館で観たらどれだけ迫力あるんだろうと思い、まだ上映している映画館があるか見てみると、ギリギリ上映している映画館があったので、さっそく観に行ってみました。
普段は映画館に行かなかいので知らなかったのですが、最近は4DXという上映スタイルがあるようで、椅子が動いたり霧が吹いたり香りが出たり、とより臨場感が出ています。
特にガルパンのようなアウトドアで砲弾が飛び交うようなものだとかなり楽しめると思います。

劇場版を見ていて気付いたのは、小ネタが多いこと。
所々で歴史上の出来事などをモチーフにしている演出が見受けられました。

キャラクター自体が各国の(歴史上の)陸軍をモデルにしているので当然ですが、例えば撤退を「転進」と言ったりするところは旧日本軍の典型的な慣行ですし、試合において重要な地点を日露戦争の激戦があった203高地に例えたりしていました。

自分が気付かない演出もあるんだろうと思って、他の人の感想を見ていると、興味深い考察をされている記事がありました。

正直、驚きました。
自分の想像をはるかに超えて色んなことが詰め込まれていました。
この記事を読んで見直してみると、より深く物語を読み込むことができました。

そして、やっぱり何事も学ぶことは大切なんだということを改めて感じました。
知識があればあるほど新しいものをメッセージを込めて作りこむことができるし、同じように知識があるほどその作り手の意図を察して鑑賞することができる、と。
自分が作るものによりメッセージを込めることができたり、物語や芸術作品からより多くのメッセージを得られることは、人生を豊かにしてくれると思います。

例えば、物語の重要な局面でとある詩が読まれるのですが、最初その意味が全く分かりませんでした。
その詩はフランスの詩人ヴェルレーヌの「秋の歌」という詩で、第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦決行時の暗号として用いられていたものです。
それが分かっていると、より物語を深く楽しめると思います。

上記のブログ記事で考察されているように、劇場版のテーマ自体が「新しい世界を知ることによる成長」だとすると、自分もまた素晴らしい成長の機会をもらえたと思います。
劇中にある通り、「戦車道には人生にとって大切なことが詰まっている」ということでしょうか。

もし、これから誰かに「なぜ勉強しなければいけないのか?」と聞かれたら、「物事を知っている方がいいものを作れるし、色んなことを感じられて人生を楽しくできるから」と答えようと思います。

せっかく素晴らしい物語から素晴らしい教訓をもらったので、今後はいろんなことをできるだけ吸収できるような人間になりたいものです。
もっとも、未だに戦車のことはよくわかりませんが。。。

で、やっぱりこの言葉で締めたいと思います。

ガルパンはいいぞ。

 

そういえば以前、ガルパンの舞台である大洗に行ったことがあって、その時に撮影した写真があったので、ついでに載せておきます。
やっぱり大洗はガルパンの街でした。

ガルパンを見て行ってたらまた違った見方があったと思うとちょっと残念…

 

 

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アセットマネジメント業界の魅力(4)

この記事では、アセットマネジメント業界の魅力を何回かに分けてお伝えします。
1.アセットマネジメント業界とは?
2.アセットマネジメント業界におけるキャリア形成
3.アセットマネジメント会社の待遇や労働環境
4.アセットマネジメント会社のコンプライアンスというキャリア(本記事)
5.新規参入が相次ぐ資産運用業

本記事では、自分が築いてきた「アセットマネジメント会社のコンプライアンスというキャリア」についてご紹介したいと思います。

アセマネ会社というと、やはりファンドマネージャーやアナリスト、あるいは商品企画といった花形部門に注目が集まり、アセットマネジメントというビジネス・仕組みを支えているミドル・バック部門は陰に隠れがちです。

実際、アセマネ会社の新卒採用の仕事紹介のコンテンツを見ていても、運用部門や商品企画、営業部門を前面に出していて、ミドル・バックの業務の紹介は少なかったりします。
コンプライアンスに至ってはほとんど見かけたことがありません(涙)

しかし、ミドル・バックが存在しなければ、アセマネというビジネス自体が成り立ちませんし、中でもコンプライアンスは規制業界という性格上重要な存在です。

ということで、世の大手資産運用会社の代わりに、「アセマネ会社の中の人」として資産運用会社のコンプライアンスというキャリアについてご紹介します。
(本当は大手資産運用会社のコンテンツにあるべきだと思うんですけどね。。。)

 

資産運用会社のコンプライアンスとは

コンプライアンスとは「法令遵守」と訳されますが、運用会社の業務が法令を含めた色んなルールを遵守することを確保していくことがその役目です。

運用会社は規制業種であるため、運用や営業、ミドル・バックそれぞれが法令その他のルールの制約を受けるため、コンプライアンスの活躍の場は会社全体にわたります。
運用や営業、その他の各業務を理解し、どのようにすればそれらの業務で法令違反を起こさないようにできるかを考え、実行していくのがコンプライアンス担当者の役割です。

 

コンプライアンスとライセンス

資産運用会社は金融商品取引法で「投資運用業者」として登録し、ライセンスを保持することが求められています。
そのライセンスがないと資産運用業のビジネスを行うことができないため、ライセンスは会社の生命線といえます。

そして、そのライセンスを取得・維持するためにはコンプライアンスが最重要になります。
まず、新しく資産運用会社を設立したいと思ったら投資運用業者として登録することが必要ですが、その要件は細かく定められており、その中の一つに「資産運用業者のコンプライアンス経験が豊富なコンプライアンスの責任者がいること」があります。

また、資産運用業務を開始してからは法令遵守をしっかり行うことが求められ、その体制が脆弱で法令違反を繰り返していると、最悪の場合はライセンスの剥奪という可能性もあります。
そのため、現に資産運用ビジネスを行っている資産運用会社にとってもコンプライアンスは非常に重要です。

 

コンプライアンス業務

前述のとおり、会社の多くの業務が法令の制約を受けており、そのすべてで法令遵守を確保する必要があるため、コンプライアンスの業務も多岐にわたります。
その中でも主なものを挙げると下記のものがあります。

文書のレビュー

資産運用会社は投資信託の広告や目論見書・運用報告書、契約締結前交付書面・契約締結時交付書面といった投資家向け資料のほか、各種の届出書、お知らせ文書など様々な書面を社外に出しています。
それらのほとんどは法令などのルールで書くべきこと、書いてはいけないことが決められています。そのため、その内容をコンプライアンス部門が事前にチェックして、直す必要があれば直したうえで、社外に出すことになります。
その際に求められるのは、法令上記載内容が問題ないか、読み手の誤解を招かないか、という観点の確認になります(ときどき「てにおは」ばかり指摘するような人も見かけますが、それはコンプライアンス担当者として求められる確認事項ではありません)。

運用モニタリング

資産運用会社は運用においても法令や運用方針などで制約を受けています。
そのため、コンプライアンス部門が運用担当者による取引の発注前や発注後にその取引内容が問題ないか、ポートフォリオ(運用資産の構成)に問題がないかなどを確認します。
その結果、取引前に問題が発覚すれば運用担当者にその取引が認められない旨を伝え、ポートフォリオに問題があれば、すぐに調整して法令や運用方針で認められる構成にしてもらうように依頼します。

運用やポートフォリオのことが理解できないと問題を正確に認識できないため、運用や投信計理に関する知識も求められる(得ることができる)仕事です。

社内規程の改定

法令や業界ルールでは様々な規制がありますが、それを具体的にどのように守るかを示すため、あるいはそれら以上に厳しいルールを設けて自らを律するために、それぞれの会社は社内規程を設けています。
そして、社内規程は法令等のルールを守るものであるため、法令その他の社会環境の変化に応じて改定する必要があります。
コンプライアンス部門では特に法令の動向をチェックし、必要があれば社内規程の改定を進めていくことになります。

コンプライアンス研修

運用会社のそれぞれの業務に法令その他のルールによる制約があるため、法令遵守はコンプライアンス部門の人間だけでなく、すべての役職員が意識する必要があります。
そのためコンプライアンス部門では、役職員向けに基本的な業界のルールや重大な法令改正などについてコンプライアンス研修を行い、役職員の意識を高めるようにしています。

当局とのコミュニケーション

資産運用業界は規制業種であるため、当局とのコミュニケーションは重要です。
会社の業務内容や役員などに変更があったり、不祥事があったりした場合は当局に届出を行う必要がありますし、新しい事業を行う場合に法令の解釈に疑問があれば解釈を確認する必要もあります。
また、当局や業界団体がオフィスに来て検査を行うことがあれば、それ以外にも書類の提出を求められることもあります。
そのような当局とのコミュニケーションの窓口はコンプライアンス部門が担うことが多いようです(コンプライアンス部門だけで完結しないことが多いので、その場合はコンプライアンス部門がとりまとめを行います)。

他部署へのアドバイス

運用会社の業務の細部にまで規制による制約があることから、大小さまざまな相談がコンプライアンス部門には寄せられます。
トラブルが発生した時はもちろん、新規の商品を考えるとき、新しいのキャンペーンを行うとき、システムの変更を行うとき、ちょっとしたお客様向け文書を送るとき、など挙げていけばきりがないほどです。
考慮すべき法令も金商法や投信法といったいわゆる業法から、個人情報保護法や景表法、著作権法といった一般的な法令など様々です。
そういったときに、法令上の問題点がないか、あるいはどのようにすれば問題を解消できるか、といったことをアドバイスします。

 

社内におけるコンプライアンスの立ち位置

前述のとおり、運用会社の業務の大半は法令等による制約を受けるため、コンプライアンス部門が何らかの関与をすることになります。
多くの場合、コンプライアンス部門が承認しなければ話が前に進まないので、それなりに力を持つ部署ともいえます。
(運用業務についてはコンプライアンス部門が逐一承認するわけではありませんが、ルール違反の懸念がある取引が抽出されると、コンプライアンス部門等の承認がなければ発注できない仕組みになっています)

したがって、立場上多くの部署から許可・承認を求められるわけですが、それゆえに煙たがられたり、怖がられたりする部署でもあります。
また、時としてブレーキ役になるがゆえに、物事をスムーズに進めるための柔軟性やスピード感が求められます。
少し前までは保守的で融通が利かず代替案も出さないコンプラは「『No』しか言わないコンプラ」と揶揄されたものです。さすがにこの手のコンプライアンスは少なくなってきたようですが、そのようなコンプライアンスがいる会社は物事が進められず不協和音が噴出しそうです。

そして、他部署からあまりいい顔をされず、敬遠されがちな部署であるからこそ、コンプライアンス担当者にはコミュニケーション能力や積極的に解決案を提示できるクリエイティブな能力が求められるのだと思います。

この辺は被害妄想(?)が入っているのかもしれませんが、何かあってコンプラに話を持ってくる人はたいていどんよりした顔をしている気がします。。。
だからこそ、愛想よく振る舞って円滑なコミュニケーションをとることがお互いのためになるのだと思います。

コンプライアンスというキャリアの魅力

経験

繰り返しになりますが、コンプライアンスの領域は運用会社の業務のほぼ全域にわたります。
したがって会社のビジネス全体を見渡すことが容易で、また情報も幅広く入ってきます。
そのため、他の部署に比べて資産運用業の仕組み全体について把握することが可能であると言えます。

もちろん各部署の実務に精通するわけではありませんが、どの部署が何をしていて、各部の業務がどのようにつながっているのかということを理解できることは好奇心を満たせますし、応用も利く経験になると思います。

安定性

運用や営業のポジションは市況や会社の業績に大きな影響を受けますが、コンプライアンスは市況や会社の業績が悪かろうと一定の人数が必要なポジションです。
また、運用業を新たに行おうと思った場合には、コンプライアンスの経験者が求められます。
また業務が定型的でないこともあり、アウトソースのあおりを受けて人員削減ということも今のところあまりないようです。

したがってリストラに遭う可能性が比較的低く、また人材マーケットにおけるニーズもかなり多いので、雇用の安定性という点では非常に優れていると思います。

報酬

残念ながらコンプライアンスという役割は利益を生むものではないこともあり、運用や営業といった収益部門と比べると給与は高くないと思われます。
とはいえ、運用会社にとっては生命線ともいえる役割であることからそれなりの扱いはされていると思います。
また、フロント部門と比べると業績による給与の変動は少ないと思われます。
(そもそも、自分の評価がそれほど上下しないことが多いです)

・・・と、今回はアセマネ会社のコンプライアンスというキャリアの魅力を書いてみました。

自分ももともと意図していなかったキャリアではありますが、担当してみると結構好奇心を刺激されることも多く、自分に合った仕事だと思うようになりました。

視野も広がるし、待遇も安定しているので悪くないキャリアだと思うのですが、なぜか注目されないコンプライアンス(若手の人が移動の希望を持っていると聞いたことは一度もありません…)。
今後Fintechや国際的な規制環境の変化などもあり、コンプライアンスの重要性は高まることはあっても下がることはないと思います。
そのような環境にある中で、花形とはいかなくても、もう少し多くの人に注目され、そしてどんどん上を目指せるキャリアパスになってほしいと切に願います。

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アセットマネジメント業界の魅力(3)

この記事では、アセットマネジメント業界の魅力を何回かに分けてお伝えします。
1.アセットマネジメント業界とは?
2.アセットマネジメント業界におけるキャリア形成
3.アセットマネジメント会社の待遇や労働環境(本記事)
4.アセットマネジメント会社のコンプライアンスというキャリア
5.新規参入が相次ぐ資産運用業

就職・転職活動を行っている人の大きな関心事として、待遇や労働環境があると思います。
自分の人生の長い時間を預けるわけですし、生活の基盤ともなりますから、その要素は職業を選択するに当たって重要な要素です。

では、アセマネ会社の待遇や労働環境はどのような感じでしょうか。
あくまで個人的な見方で、会社によっても違うと思いますが、自分の経験を踏まえて紹介してみたいと思います。

 

給与水準

アセマネ業界の特徴の一つに労働市場が流動的ということがあります。
つまり中途採用で入ってきている人が多いということですが、中途採用の場合、経験や前職の給与によって個別に給与が決められます。
また、アセマネ業界には様々な業界から人が入ってきますし、入ってくるときのステータス(正社員、派遣社員)や年齢も異なるので、本当に人によって給与水準は異なります。
そのため、終身雇用を前提とした年齢・職階ごとの給与テーブルが機能しにくくなっています。

それを前提として、給与水準の傾向を考えてみたいと思います。

アセマネ会社の給与水準を考える際には、日系か外資か、で大きく異なります。
<日系>
日系の場合、大手金融機関の傘下にあることが多いです。
グループ会社の一員ですので、親会社にあたる金融機関の給与水準を参考にしているように思われます。
したがって、給与水準を推定するなら、その親会社(銀行や証券、保険会社)の給与水準を想定するとよいと思います。
もちろん親会社とは別会社なので、業績に影響される賞与や昇進速度によって給与水準に差は生じますが、大きく異なることはないのではないでしょうか。

<外資系>
外資系の場合、中途採用が一般的で、ほぼ経験年数と前職の給与、およびそれを基にした交渉で給与が決まりますので、人によって給与水準はまちまちです。
大手だからといって給与が高いとも限りませんし、小所帯だからといって給与が低いとも限りません。
ただ、個人的な印象では、独立系・証券系の会社は銀行・保険系より、米系の会社は欧州系の会社よりも給与水準が高い傾向にあるように思われます。
ただし、会社は千差万別ですし、個人によって給与の前提条件が異なるので、あくまで傾向として捉えてもらえればと思います。

日系と外資系を比べると、基本的には外資系の方が高水準です。
自分のケースだと20-30%程度は外資系の方が多かったですし、多くの場合、日系から外資系に移ると10-20%は上がるようです。
ただし、日系が終身雇用を保証する一方、外資系では日本からの撤退や業績不振に伴う解雇のリスクがあることは要注意です。
※日系と外資系の比較についてはこちらの記事も参考になるかと思います。

また、フロント部門とミドル・バック部門でも給与水準に差があります。
<フロント>
運用部門・営業部門といったフロント部門は稼ぎ頭でもあるため、ミドル・バック部門より高い給与水準であることが多いです。
一方、企業の業績に責任を負っているという性格もあるため、特に賞与が業績の影響を受けやすく、年収の振れ幅が大きくなっています。
これは日系でも外資系でも共通しているように見受けられます。

フロントの場合、場合によっては年収が青天井になることもあり、「年収を100億円稼いだファンドマネージャー」が話題になったこともあります。
その点は魅力だと思いますが、下がるときは大きく下がりますし、日々のプレッシャーも強いので、このような働き方が望ましいかどうかは人によると思います。

<ミドル・バック>
一方のミドル・バック部門はフロントに比べると給与水準は低めです。
といっても、金融業界水準の給与ですし、それほど低いわけでもありません。
また、フロント部門と異なり定量的な業績目標がなく、淡々と業務をこなすことが基本的な役割になるため、フロントに比べるとプレッシャーやストレスは小さいと思います。

前述のとおり、中途採用が多いアセマネ業界の給与水準は一概には言えないものですが、あえて業界のイメージを示すとすれば年収はこんな感じでしょうか。
30歳(全職種):700 – 1200万円くらい
40歳(フロント):1200 – ∞
40歳(ミドル・バック):1000 – 2000 くらい

この水準も日系・外資、経験年数、職位などで大きく異なりますので、あくまでイメージとしてみていただければと思います。

 

解雇のリスク

金融業界といえば気になるのは解雇のリスク。
特に外資系ともなればクビと隣り合わせというイメージも世間的にはあるようです。

解雇のリスクも日系と外資系で異なります。
<日系>
日系の場合、リストラによる解雇はあまりないと言っていいと思います。
リーマンショックの時には日系運用会社にいましたが、会社の方針として解雇は絶対にしないという強い意志が見えました。
もちろん人事異動などによる解雇回避もありますので、キャリアに影響がないとは言いませんが、大手金融機関グループに属していることもあり、雇用の安定性は魅力だと思います。

<外資系>
外資系の場合、業績不振になるとリストラの嵐が吹くことは珍しくありません
人件費削減で業績不振を乗り切り、落ち着いたらまた人を雇うという感じです。
その際に対象になりやすいのが、業績の責任を負い、また給与の高いフロント部門です。
特に給与の高いシニア層がターゲットになりやすいです。

逆にフロント・ミドル部門はフロント部門に比べると給与水準が低いことや、一定人数がいなければ会社の業務自体が回らないこともあり、リストラの際にも比較的解雇の対象になることは少ないようです。

また、外資系の場合、合併や社長交代の際に従業員の削減や入れ替えが行われることが多いので、この場合はフロントやミドル・バック関係なくリスクがありますので注意が必要です。
ちなみに、外資の場合はそもそも日本から撤退する可能性もあり、その場合は全員解雇となる可能性があります(その場合は十分な経済的補償があると思いますが)。

なお、業界全体の傾向としてアウトソースを活用する方向に動いており、例えば投信計理、レポーティングなどは削減される可能性がありますので、この点も注意が必要だと思います。

 

福利厚生

福利厚生は日系も外資系も一通り揃っていると思います。
有給休暇は比較的取りやすい業界だと思いますが、これも会社や部署の雰囲気によります(自分の場合は日系でも外資系でも結構消化できました)。

 

労働時間

労働時間は会社の雰囲気や慣行、ビジネスモデル及び職種によりますが、アセマネ業界は金融業界の中では緩い方だと思います。

フロントの場合は朝早くから出社して情報収集をしたり一日の行動を考えたり、ということも多いようですが、夜はそこまで遅くはならないようです。
(決算集中日など一部の時期は本当に多忙のようですが)

ミドル・バックは一日のうちにこなすべき業務がある程度固定されていますし、処理すべき時間帯も決まっているので、あまり業務時間が長くなることはないと思います。
もちろんこちらも、例えば四半期ごとの顧客報告や投資信託の決算時期など特定の時期には忙しくなることがありますが、基本的にはそこまで忙しくないようです。

ただし、忙しい会社は職種問わず忙しいこともありますので、その点は注意が必要です。
もっとも、忙しい会社というのは業界でも評判になっていることが多いので、転職口コミサイトやエージェントなどに確認してみるとよいと思います。

 

転勤

日系の大手アセマネ会社は国内外に拠点を持っていて、そちらに転勤になることがありますが、ほとんどの場合は本社(東京)にずっと勤務することになります。
転職してもほとんどのアセマネ会社は東京にオフィスがあるため転居の必要はあまりありません。

したがって、この点では人生設計を行いやすい業界といえそうです。

なお、外資系の場合、希望すれば海外のオフィスで勤務する機会をもらえることもあるようです。

 

企業文化・雰囲気

企業文化や雰囲気も会社によって異なります。

特に日系運用会社の場合、経営者や管理職、従業員が親会社から出向・転籍で来ることが多いので、親会社の文化や雰囲気に似てくるようです。
したがって、銀行系は厳格な管理をするし、保険会社は穏やかな社風である傾向にあるようです。
もっとも、銀行や証券系にいたときはそれほどギスギスした雰囲気でもなかったので、アセマネ業界になると多少穏やかになるようです。

外資系の運用会社も社風は様々でハードで知られる会社もあれば、のんびりした会社もあります。
米系の方がハード、欧州系はのんびりと言われることも多いですが、米系でものんびりした会社は多いですし、逆に欧州系でもハードで知られる会社もありますので、ひとくくりにはできないようです。
(特に少人数の)外資系運用会社は経営者の性格や考え方で社風が変わることもありますので、経営者の職歴が社風を読み取るヒントになるかもしれません。

以上、運用会社の労働環境や待遇についてご紹介しました。
キャリア形成の場としてもさることながら、労働環境や待遇についても長期的に働きやすくなっており、非常に魅力的な業界だと思います。
より多くの方にアセマネ業界の魅力を感じていただき、業界を盛り上げていっていただければ幸いです。

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