アセットマネジメント業界の魅力(3)

この記事では、アセットマネジメント業界の魅力を何回かに分けてお伝えします。
1.アセットマネジメント業界とは?
2.アセットマネジメント業界におけるキャリア形成
3.アセットマネジメント会社の待遇や労働環境(本記事)
4.アセットマネジメント会社のコンプライアンスというキャリア
5.新規参入が相次ぐ資産運用業

就職・転職活動を行っている人の大きな関心事として、待遇や労働環境があると思います。
自分の人生の長い時間を預けるわけですし、生活の基盤ともなりますから、その要素は職業を選択するに当たって重要な要素です。

では、アセマネ会社の待遇や労働環境はどのような感じでしょうか。
あくまで個人的な見方で、会社によっても違うと思いますが、自分の経験を踏まえて紹介してみたいと思います。

 

給与水準

アセマネ業界の特徴の一つに労働市場が流動的ということがあります。
つまり中途採用で入ってきている人が多いということですが、中途採用の場合、経験や前職の給与によって個別に給与が決められます。
また、アセマネ業界には様々な業界から人が入ってきますし、入ってくるときのステータス(正社員、派遣社員)や年齢も異なるので、本当に人によって給与水準は異なります。
そのため、終身雇用を前提とした年齢・職階ごとの給与テーブルが機能しにくくなっています。

それを前提として、給与水準の傾向を考えてみたいと思います。

アセマネ会社の給与水準を考える際には、日系か外資か、で大きく異なります。
<日系>
日系の場合、大手金融機関の傘下にあることが多いです。
グループ会社の一員ですので、親会社にあたる金融機関の給与水準を参考にしているように思われます。
したがって、給与水準を推定するなら、その親会社(銀行や証券、保険会社)の給与水準を想定するとよいと思います。
もちろん親会社とは別会社なので、業績に影響される賞与や昇進速度によって給与水準に差は生じますが、大きく異なることはないのではないでしょうか。

<外資系>
外資系の場合、中途採用が一般的で、ほぼ経験年数と前職の給与、およびそれを基にした交渉で給与が決まりますので、人によって給与水準はまちまちです。
大手だからといって給与が高いとも限りませんし、小所帯だからといって給与が低いとも限りません。
ただ、個人的な印象では、独立系・証券系の会社は銀行・保険系より、米系の会社は欧州系の会社よりも給与水準が高い傾向にあるように思われます。
ただし、会社は千差万別ですし、個人によって給与の前提条件が異なるので、あくまで傾向として捉えてもらえればと思います。

日系と外資系を比べると、基本的には外資系の方が高水準です。
自分のケースだと20-30%程度は外資系の方が多かったですし、多くの場合、日系から外資系に移ると10-20%は上がるようです。
ただし、日系が終身雇用を保証する一方、外資系では日本からの撤退や業績不振に伴う解雇のリスクがあることは要注意です。
※日系と外資系の比較についてはこちらの記事も参考になるかと思います。

また、フロント部門とミドル・バック部門でも給与水準に差があります。
<フロント>
運用部門・営業部門といったフロント部門は稼ぎ頭でもあるため、ミドル・バック部門より高い給与水準であることが多いです。
一方、企業の業績に責任を負っているという性格もあるため、特に賞与が業績の影響を受けやすく、年収の振れ幅が大きくなっています。
これは日系でも外資系でも共通しているように見受けられます。

フロントの場合、場合によっては年収が青天井になることもあり、「年収を100億円稼いだファンドマネージャー」が話題になったこともあります。
その点は魅力だと思いますが、下がるときは大きく下がりますし、日々のプレッシャーも強いので、このような働き方が望ましいかどうかは人によると思います。

<ミドル・バック>
一方のミドル・バック部門はフロントに比べると給与水準は低めです。
といっても、金融業界水準の給与ですし、それほど低いわけでもありません。
また、フロント部門と異なり定量的な業績目標がなく、淡々と業務をこなすことが基本的な役割になるため、フロントに比べるとプレッシャーやストレスは小さいと思います。

前述のとおり、中途採用が多いアセマネ業界の給与水準は一概には言えないものですが、あえて業界のイメージを示すとすれば年収はこんな感じでしょうか。
30歳(全職種):700 – 1200万円くらい
40歳(フロント):1200 – ∞
40歳(ミドル・バック):1000 – 2000 くらい

この水準も日系・外資、経験年数、職位などで大きく異なりますので、あくまでイメージとしてみていただければと思います。

 

解雇のリスク

金融業界といえば気になるのは解雇のリスク。
特に外資系ともなればクビと隣り合わせというイメージも世間的にはあるようです。

解雇のリスクも日系と外資系で異なります。
<日系>
日系の場合、リストラによる解雇はあまりないと言っていいと思います。
リーマンショックの時には日系運用会社にいましたが、会社の方針として解雇は絶対にしないという強い意志が見えました。
もちろん人事異動などによる解雇回避もありますので、キャリアに影響がないとは言いませんが、大手金融機関グループに属していることもあり、雇用の安定性は魅力だと思います。

<外資系>
外資系の場合、業績不振になるとリストラの嵐が吹くことは珍しくありません
人件費削減で業績不振を乗り切り、落ち着いたらまた人を雇うという感じです。
その際に対象になりやすいのが、業績の責任を負い、また給与の高いフロント部門です。
特に給与の高いシニア層がターゲットになりやすいです。

逆にフロント・ミドル部門はフロント部門に比べると給与水準が低いことや、一定人数がいなければ会社の業務自体が回らないこともあり、リストラの際にも比較的解雇の対象になることは少ないようです。

また、外資系の場合、合併や社長交代の際に従業員の削減や入れ替えが行われることが多いので、この場合はフロントやミドル・バック関係なくリスクがありますので注意が必要です。
ちなみに、外資の場合はそもそも日本から撤退する可能性もあり、その場合は全員解雇となる可能性があります(その場合は十分な経済的補償があると思いますが)。

なお、業界全体の傾向としてアウトソースを活用する方向に動いており、例えば投信計理、レポーティングなどは削減される可能性がありますので、この点も注意が必要だと思います。

 

福利厚生

福利厚生は日系も外資系も一通り揃っていると思います。
有給休暇は比較的取りやすい業界だと思いますが、これも会社や部署の雰囲気によります(自分の場合は日系でも外資系でも結構消化できました)。

 

労働時間

労働時間は会社の雰囲気や慣行、ビジネスモデル及び職種によりますが、アセマネ業界は金融業界の中では緩い方だと思います。

フロントの場合は朝早くから出社して情報収集をしたり一日の行動を考えたり、ということも多いようですが、夜はそこまで遅くはならないようです。
(決算集中日など一部の時期は本当に多忙のようですが)

ミドル・バックは一日のうちにこなすべき業務がある程度固定されていますし、処理すべき時間帯も決まっているので、あまり業務時間が長くなることはないと思います。
もちろんこちらも、例えば四半期ごとの顧客報告や投資信託の決算時期など特定の時期には忙しくなることがありますが、基本的にはそこまで忙しくないようです。

ただし、忙しい会社は職種問わず忙しいこともありますので、その点は注意が必要です。
もっとも、忙しい会社というのは業界でも評判になっていることが多いので、転職口コミサイトやエージェントなどに確認してみるとよいと思います。

 

転勤

日系の大手アセマネ会社は国内外に拠点を持っていて、そちらに転勤になることがありますが、ほとんどの場合は本社(東京)にずっと勤務することになります。
転職してもほとんどのアセマネ会社は東京にオフィスがあるため転居の必要はあまりありません。

したがって、この点では人生設計を行いやすい業界といえそうです。

なお、外資系の場合、希望すれば海外のオフィスで勤務する機会をもらえることもあるようです。

 

企業文化・雰囲気

企業文化や雰囲気も会社によって異なります。

特に日系運用会社の場合、経営者や管理職、従業員が親会社から出向・転籍で来ることが多いので、親会社の文化や雰囲気に似てくるようです。
したがって、銀行系は厳格な管理をするし、保険会社は穏やかな社風である傾向にあるようです。
もっとも、銀行や証券系にいたときはそれほどギスギスした雰囲気でもなかったので、アセマネ業界になると多少穏やかになるようです。

外資系の運用会社も社風は様々でハードで知られる会社もあれば、のんびりした会社もあります。
米系の方がハード、欧州系はのんびりと言われることも多いですが、米系でものんびりした会社は多いですし、逆に欧州系でもハードで知られる会社もありますので、ひとくくりにはできないようです。
(特に少人数の)外資系運用会社は経営者の性格や考え方で社風が変わることもありますので、経営者の職歴が社風を読み取るヒントになるかもしれません。

以上、運用会社の労働環境や待遇についてご紹介しました。
キャリア形成の場としてもさることながら、労働環境や待遇についても長期的に働きやすくなっており、非常に魅力的な業界だと思います。
より多くの方にアセマネ業界の魅力を感じていただき、業界を盛り上げていっていただければ幸いです。

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