年が明け、そろそろ就職活動を開始される学生の方も多いのではないでしょうか。
自分もそうでしたが、学生の頃は世の中にどのような仕事や業界があるのかほとんどわからず、暗中模索という感じでした。
今ならTwitterやブログなどをいろいろ見てみるということをしたと思いますが、学生の頃はどうしても自分の知っている業界や名前を知っている会社に意識を集中させてしまいがちです。
しかしながら、世の中には自分の知らない世界や会社が多くあり、今にして思えばもったいなかったと思います。
自分が所属しているアセットマネジメント(資産運用)業界もその一つ。
もちろん熱心に情報収集をしている方はご存知の業界ですが、普通に学生生活を送っていると資産運用をする機会は多くないですし、CMもほとんど出していないので知名度はそれほど高くないと思います。
しかしながら、資産運用の重要性やFintechに注目が集まる中、存在感が高まりつつありますし、優秀な人材の活躍の場が豊富な業界でもあります。
そこで、場末のブログながら、アセットマネジメント業界の魅力をシリーズで紹介し、少しでも就職活動をされている方のお役に立てたらと思いますので、関心のある方には是非ご覧いただければと思います。
読者の方から質問があれば適宜回答・紹介させていただきますので、お気軽にどうぞ!
下記の通りシリーズでお伝えしようと思いますので、乞うご期待(?)。
1.アセットマネジメント業界とは?(本記事)
2.アセットマネジメント業界におけるキャリア形成
3.アセットマネジメント会社の待遇や労働環境
4.アセットマネジメント会社のコンプライアンスというキャリア
5.新規参入が相次ぐ資産運用業
※投資信託会社の業務については下記記事も参考にしていただけるかと思います。
投資信託委託会社について①投資信託とは
投資信託委託会社について②投資信託委託会社の役割
投資信託委託会社について③投資信託委託会社の業務
アセットマネジメント業界とは?
アセットマネジメントとは、文字通り、アセット(資産)をマネジメント(管理・運用)することで、それゆえに資産運用と呼ばれます。
資産とは広義には財産一般を指しますので、お金はもちろん、土地等の不動産や貴金属なども資産といえます。
実際、信託銀行などは土地を運用するサービスを提供しています。
しかし、一般に資産運用会社とは、投資家からお金を預かって、それを株や債券などの有価証券で運用する会社のことを指します。
信託銀行も資産運用機能がありそのような業務を行っていますが、一般的には「〇〇アセットマネジメント」「〇〇投資信託」「〇〇投資顧問」といった名称の会社が資産運用会社と言われます。
もっとも、アセットマネジメントという名の会社は多種多様で、必ずしも投資家からお金を預かって運用するという業務を行っているわけではありませんので注意が必要です。
アセットマネジメント業界のサービス
資産運用会社が投資家に提供するサービスは大きく分けて「投資信託」「投資一任」「投資助言」の3つがあります。
投資信託とは、主に銀行や証券会社で販売されている「XYZファンド」と呼ばれる金融商品のことで、多くの投資家のお金を集めて、株式や債券、不動産などに投資します。
投資信託は個人投資家向けのものと機関投資家向けのものがありますが、基本的には個人投資家向けの金融商品という性格が強いです。
投資信託は運用サービスを投資家に提供する箱ともいえ、運用業務だけでなく、日々の投資信託の取引価格の計算や投資信託の販売用資料の作成といったサービスもセットで提供することになります。
投資信託には契約型投資信託と会社型投資信託があり、前者は証券会社や銀行などで購入することができる投資信託、後者は主に証券会社を通じて証券市場で取引する投資信託で、不動産に投資するREIT(不動産投資信託)が中心になります。
投資一任は、その名の通り投資をお任せで行うというサービスです。
こちらも個人投資家向けと機関投資家向けのサービスがありますが、資産運用会社では原則として機関投資家向けにサービスを提供しています。
またお客様は年金基金であったり、他の運用会社や保険会社などの機関投資家であることが多いです。
特に日系の運用会社は海外資産の運用ノウハウが弱いことが多く、外資系の運用会社に投資一任という形で運用を委託していることがあります。
例えば日系運用会社の海外資産に運用する投資信託の目論見書を読んでみると、多くの場合、外資系運用会社の名前が載っています。
その場合、その日系の運用会社は実質的には運用を行っていないことになります。
言い換えると、投資一任サービスの直接のお客様は運用会社であっても、実質的には個人投資家に対して運用サービスを提供することができるということです。
投資助言についても多様なサービス形態があるのですが、具体的な投資判断を行う(実質的な投資一任)こともあれば、単なる情報提供ということもあります。
アセットマネジメント会社のカテゴリー
資産運用業務は誰でも行うことができるわけではなく、金融商品取引法に定められたライセンスが必要になります。
具体的には「投資運用業者」というライセンスが必要で、特に投資信託・投資一任の業務を行うためにはそれなりのハードルが課せられます。
ちなみにアセットマネジメント会社は投資信託協会や日本投資顧問業協会に加入していますので、どのような会社があるかはそれらのホームページでも確認できます。
アセットマネジメント会社にはいくつかのカテゴリーがあります。
上記の通り、業務で分けると「投資信託」・「投資一任」・「投資助言」の会社。
それぞれ単独ではなく、兼業している会社も多いです(大手はほとんどが兼業)。
資本系列では「独立系」・「銀行系」・「証券系」・「保険系」などの種類がありあす。
独立系とは特定の金融グループに属さない会社です。日本の大手運用会社は基本的に銀行や証券会社の子会社ですので独立系というとベンチャー系の運用会社が多くなりますが、海外の大手運用会社は多くが独立系です。
日系の運用会社ですと鎌倉投信やレオス・キャピタルワークス、さわかみ投信、海外ですと世界有数の運用会社であるブラックロックやフィデリティ、バンガードなどが挙げられます。
特に海外の独立系運用会社には上場している会社も少なくありません。
銀行系は銀行あるいはそのグループの子会社です。
有名どころですとアセットマネジメントOne(みずほ系)、三菱UFJ国際投信、三井住友アセットマネジメント、三井住友トラストアセットマネジメントなどがあります。
ちなみに日興アセットマネジメントも三井住友信託銀行の系列ですので銀行系になります。
証券系は証券会社グループの運用会社。
野村アセットマネジメント、大和投信投資顧問、岡三アセットマネジメントなどがあります。
保険系は保険会社系の運用会社。
保険会社の主要業務として資産運用業務があるため、ほとんどの保険会社がグループ内に運用子会社を持っています。
ニッセイアセットマネジメントや東京海上アセットマネジメントなどが大手として知られています。
なお、第一生命はみずほFGと共同でアセットマネジメントOneを、住友生命や三井住友海上はSMFGと共に三井住友アセットマネジメントを擁しています。
特に日系の場合は取引上も人的な面でも親会社・グループ会社の影響を強く受けますので、社風もよく似ているような印象を受けます。
また、資本の性格としては日系と外資系に分類することもできます。
日系はその名の通り、日本の企業がバックとなって設立した会社、あるいは日本人が(外資系企業に頼らず)設立した会社です。
外資系は外国の資産運用会社の日本法人または日本支店という位置づけの会社です。
本国の運用サービスを日本で展開するのが使命であるため、営業部隊という性格が比較的強いと言えます(日本に運用機能がある外資系運用会社も多いです)。
また、本国ないし世界中の拠点との連携が必要であることから、英語の使用頻度が高いのも特徴と言えます。
アセットマネジメント業界の将来性
アセットマネジメント業界のお客様は前述のとおり、個人投資家や年金基金、機関投資家など様々です。
年金基金については今後の少子高齢化などでマーケットが縮小する可能性もありますが、個人の金融資産に目を向けると、依然として現預金が大半を占め、投資に回されている割合はまだ小さいと考えられています。
それゆえに、特に個人の金融資産は開拓のある余地が大きいマーケットであり、海外からも多くのアセットマネジメント会社が参入を続けています。
昨今では投資の必要性の認知度も高まりつつあり、税制面でもNISAやiDeCoなど投資促進策が打ち出されており、アセットマネジメント業界の重要性や規模はますます大きくなると考えられますし、業務の専門性も高いことから、就職活動を行っている学生さんや業界外にいらっしゃってアセットマネジメント業界に関心のある方には是非資産運用会社の門をたたいていただきたいと思います。
本記事では資産運用業界の概要をお伝えしましたが、運用会社で働くこととはどういうことなのか、ということはシリーズ形式で別の記事でお伝えしたいと思います。
※本記事の内容はすべて私見ですのでご留意ください。