ファビコンを設定してみた

愛着あるブログにするために

私がこのブログを始めたのは涙をたびたび飲んだ就職活動を終えた2005年の秋頃で、もう15年も経つことになります。
懐かしいので、記念すべき最初の投稿を引っ張ってみました(最初は「就職活動日記」でした)。

 

その間更新が途絶えたり、逆に頻繁に更新したりする時期があったりとムラが目立つ運営ですが、飽きっぽい人間としてはよく続いているものだと我ながら感心します。

ブログを運営していると日々の生活でも記事のネタを探す癖がついて、ちょっとアンテナが高くなった気がします。ほとんどの場合は「何もないなー」という感度が低いアンテナではありますが…(汗)

それはさておき、細々とでも情報発信ができる人間でありたいという思いで続けてきたブログなので自分のアイデンティティを支える存在でもありますし、まだ見ぬ人とつながる貴重なツールでもあり、結構愛着があります。
そして愛着がある存在だからこそ、より自分でカスタマイズできるようにしたいということで、アメブロからWordPressに引っ越しして独自ドメインも取得しました。
アメブロも非常に使いやすいサービスですが、独自色を出していくにはWordPressの方が面白いと思っての引っ越しでした。

その割には更新頻度が…という感じですが、これはアンテナを高くするのと勉強や仕事を頑張ってネタを探すしかないですね(仕事のことをブログ化するのは限度がありますが)。

ともあれ、長年続けてきたブログなのでより愛着ある存在にしていきたいものです。

 

ファビコンつけました

ウェブサイト・ブログを運営する上で自分なりの「ブランド化」というのは若干意識していましたが、特にやってみたかったのがファビコンの設定です。
ファビコンとはウェブサイトのURLについているアイコンで、人気のあるウェブサイトやSNSには概ねついていると思います(GoogleのGマークやTwitterの青い鳥マーク)。

以前にも調べたことがあるのですが、その時はあまり理解ができず放置していたのですが、今般たまたま思い出して改めて設定方法を調べてみるとWordPressの機能を使って簡単にできることがわかったので早速設定してみました。

じゃーん!(日本銀行風に)

初めてのファビコン。センスは問わないで…

 

センスはともかく、Simple is bestということで。

愛着ポイントが増えたところで、このブログをこれからも楽しく運営していきたいところです。愛着、大事ですよね。

 

※「じゃーん!(日本銀行風)」というのは話題になったこちらのツイートを指すものです。

 

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平安文学論(1)_学習内容とレポート課題

平安文学論とは

平安文学論の概要

今日も今日とて奈良大学の学習を進め、この度平安文学論のレポートを提出しました。
提出しただけなのでどのような評価になるかわかりませんが、細切れでも記事にした方が役に立つ、ということをこの前の記事で考えたばかりなので、簡単に平安文学論という科目のお話をしたいと思います。

平安文学というと源氏物語や枕草子、竹取物語や蜻蛉日記といった女性による作品が多いことで知られます。古典に関心がない人でも名前を聞いたことはあるでしょうし、漫画家されているものが多いのも特徴だと思います。源氏物語を描いた「あさきゆめみし」は学校の図書館にも置いてあった気がします。

では平安文学論という科目がそれらの作品を読み込む科目かというとそうではなく、平安文学の背景を学ぶのが平安文学論の内容です。
平安文学論は女性の恋愛を描いたものが多いこともあり、特に平安時代の婚姻・男女関係のあり方について学びます。

テキストは工藤重矩著『平安朝の結婚制度と文学』。平安文学の背景となる婚姻制度について学べそうなタイトルです。

 

本書では、一般に理解されている「平安時代は一夫多妻制であった」という考え方について検討した上で、平安時代の婚姻制度から平安文学の中の登場人物の置かれた境遇について検討しています。
特に源氏物語、蜻蛉日記(藤原道綱母)、うつほ物語、狭衣物語について検討がなされていて、これらの作品が好きな方は楽しく読めると思います。

平安文学論の狙い

本書の内容について詳細は省きますが、平安時代の婚姻のあり方について、法令(養老律令)の規定や各文学作品の記述から検討がなされています。改めて考えるに、文学を論じるにあたってその背景を知ることはとても重要だと思います。
例えば大人気ドラマ「半沢直樹」では銀行員である主人公の半沢と金融庁のせめぎ合いが見どころの一つですが、銀行が金融庁の監督下にあり、金融庁の意向は大きな影響力を持つとともに行政処分が致命的で絶対に避けなければいけないということが前提になっています。この背景を知らなければ、なぜ半沢が金融庁に対して神経をとがらせているかピンとこないのではないでしょうか。
同じように、源氏物語のヒロイン・紫上や蜻蛉日記の著者・道綱母が当時の婚姻制度において置かれた状況を把握できれば、より彼女たちの心情を理解することができるのだと思います。

そして文学そのものを読むのではなくその背景を理解して文学を考えるというのは、なるほど平安文学「論」だなと思いました。

 

レポートの内容

単位習得試験に先立ち提出するレポートのお題は、平安時代の婚姻制度における各種の男女関係について説明を法制資料や文学作品を用いて行うというものです。

テキストでも律令や文学作品を引用して検討がなされているので基本的にはそれに沿って論述を行うのですが、テキストの説明はピンポイントでもう少し読みたかったのと、もともと日本の法制史に関心があったこともあり、養老律令(平安期の日本の法令集)を図書館で借りてきて読んでみました。
ちなみに律は刑罰を定めた刑法、令はそれ以外の分野(行政法、民法など)で、併せて法令体系として律令と呼ばれます。律と令はそれぞれが分野ごとの律・令によって構成され、例えば窃盗・反逆に関する刑罰を定めた賊盗律や大学・国学の運営に関して定めた学令などがあります。

平安文学論テキストと養老律令(「日本思想体系3 律令」)

律令は各分野の法令をカバーしているだけあり、非常に分厚いです。
読んでみると結構細かいことにも規定があり、古代においてすでに精緻な法令体系が確立していたことに驚きました。
例えば公文書の作成について定めた公式令66では公文書は楷書で作成すること、帳簿や刑罰に関しては数字は大字(漢数字ではなく、壱・弐・参など)を使用することが決められています。
法律に関係する仕事をしている人にとっては読み物としても面白いかもしれません。

養老律令。分厚い…(ただし半分は解説)

平安時代の婚姻制度は法令上「戸令」の定めに従います。
そして戸令には妻との正式な婚姻手続きや嫡妻と妾妻の区別などが定められており、また戸婚律(逸文)には重婚の禁止の定めもあることから、法令の定めからは一夫多妻ではなく、一夫一妻制が導かれるようです。

平安時代の恋愛を考える上で、一夫多妻か一夫一妻かは大きな違いです。例えば源氏物語のヒロインである紫上の立場が妻であるか(妻に劣後する)妾であるかは、彼女の心情を想像するうえで重要な要素になるはずです。

ひとまずレポートを書く中で平安時代の男女関係のあり方についてざっくりと理解をすることができました。
学習としてはここで一区切りですが、せっかくなのでこの理解を用いて平安文学を少し読んでみるのもいいかなと思いました。

漫画で(笑)

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ブログ記事の書き方と付加価値の着眼点

些細な情報でもブログ記事は役に立つ

ブログ記事は痒い所に手が届く

奈良大学の学業に集中している今日この頃ですが、科目ごとに得意・不得意があり、またレポート・試験の合格が難しいと噂される科目もあるので、レポートの作成に悩んでしまうことがあります。

「考古学」なり「源氏物語」なり、一般に共有されている内容であれば書籍を読めば内容の理解につながりますが(そのためにテキストも提供されていますし)、大学の科目の話になると内輪ネタなので書籍を読むだけでは悩みは解決しません。
奈良大学には学生同士で情報交換ができる掲示板サービスがあって科目に関する情報交換ができるので科目の難易度や先生の評価基準についてある程度わかるのですが、科目ごとに情報量が異なるうえ、自分から「この科目って難しいんですかねー?」みたいなことを聞くのは気が引けるので情報量に限界があります。

しかし、奈良大学通信教育部の強みの一つは在校生・卒業生にブログを書いている方が多いことだということに最近気が付きました。
歴史が大好きで勉強したいという人ばかりだという性格もあってか、情報発信にも積極的な人が多いのかもしれません。私もその一人ですが。
そういえば一緒にMBA受験を乗り越えた皆さんも結構ブログを書かれていましたし、自分もブログの情報に助けられたこともありました。改めて考えると、MBAもブログによる情報量が多い分野かもしれません。

奈良大学の在校生・卒業生の方のブログを読むと、科目ごとにどのようなことを考えてレポートを書いたのか、先生は何をどのように評価したのか。あるいは試験はどんな感じだったのか、などこちらが欲しかった情報がピンポイントで書かれていたりします。
仕事でも上司や取引先が何を考えているかを把握して情報提供することは重要ですが、レポートでもそれは同じでそのような情報を収集することは有意義なことだと思います。

もちろん奈良大学でどのような学びがあるのかということは奈良大学への入学を検討している人にとっては役に立つ情報なのでそういう記事も大切だと思います。自分はどちらかというとそちら重視で書いていますし。まだ単位を一つも取っていないという理由もありますが。

ともあれ、痒い所に手が届く記事はありがたいですし、そういうのはブログならではかもしれません。それも私が意識していることでもあります。王道の記事なら他にも情報媒体はたくさんありますが、メインストリームのメディアは些細な情報の提供には向かないので、ブログの強みを生かせると思います。

ブログ記事は細切れでもいい?

プライベートで書くブログ記事のいいところは情報量が自分で決められるという点にもあると思います。
レポートや業務報告書は一定程度記載すべき情報の内容や量が決まっているためそれなりに考えることが多いですが、ブログ記事にはそのような制約はありません。

もちろんネットに公開している以上人に読んでもらいたいというのはあるので、情報の量や見せ方を多少考慮すべきかもしれませんが、それを考えすぎると記事が書けなくて提供する情報量が結果として少なくなってしまう気がします。

私もブログを書き始めた頃は深く考えずに書きたいことを徒然に書いていたので頻繁に記事を掲載していましたが、最近は記事ごとにそれなりの量を書こうと思ってしまい、結局何も掲載できずに時間があいてしまいがちです。

ただ、ブログ記事は小回りが利くことがよさであり、特に痒い所に手が届く情報を発信したいと思うならなおさら一つ一つの記事の質にこだわりすぎるのはよくないとも思います。
情報が正確であることは当然ですが、それを除けば些細なことをちょこちょこっと書くだけでもある人には響く情報になるようにも思います。

ということで、このブログでも細切れでも記事掲載の頻度を増やしていった方がいいのかな、と思っています。いつまで続くかわかりませんけど。

 

王道でないことの強み

王道でない=傍流、ではない

社会人になってもう10年以上、いろんな経験をしてきましたが基本的に自分のキャリアは王道というか花形ではなかったと思います。
資産運用会社での勤務経験が長いですが、一貫してコンプライアンスという管理部門であり、運用会社の花形でもあるファンドマネージャーやアナリストなどの運用業務に関わったことはありませんし、MBAも知名度が高い英米の名門校ではなくオランダの学校でした。
勤務してきた会社も大手はあまりなく、少なくともグローバルで巨人といえるような会社での勤務経験はありません(ブラックロックやフィデリティといった名門も世間的な知名度がどの程度あるか知りませんが)。

したがって自分のキャリア・経験にキラキラ要素はあまりなく、多くの人から話を聞きたいと思わせるような感じではないと思います。
SNSなどではキラキラ要素満載のエリートが結構いてすごいなー、と思うことは多々ありますし、ネット記事でそういう人が情報発信をしているのを見るとこの路線には行けないと思ったりもします。

しかし、世の中はキラキラ要素ばかりで成り立っているわけではなく、そういうものから若干距離を置く生き方を選ぶ人も少なからずいるのではないかと思います。
競争から距離を置くためであったり、ユニークさを求めて、など理由は様々でしょうが、そういう生き方にもまた独自の価値があり、それはキラキラ路線に必ずしも劣るとか道を外れているとか、そういうものでもないはずです。

まあ、自分が当初から花形の仕事に就けたり名門MBAに行けていたらこういう考え方をしなかったのかもしれませんが、結果的に華々しい道を行っていなかったから得られた視点だとしたら、巡りあわせに感謝しないといけませんね。

といった考えから、私は発信されやすい王道路線とは違う路線とは違う観点での情報発信を行っていきたいし、それこそが自分の出せる付加価値だと信じています。
正面から東大→名門企業・外資金融・コンサル→ハーバードMBAみたいな人と戦ったらそれこそ単なる劣化版にしかなりません。
王道ではないけど傍流・劣化版にはならないようにしたいものです。

ユニーク路線の情報発信

前述のとおり、何事も情報発信というのは王道を前提としたものが多いと思います。
大学受験であれば高い偏差値に入るための情報が多いですし、MBAにしても高ランク校に行くための情報が多いです。
運用会社の業務に関する情報でも運用業務に関する情報が多く、管理部門の業務に関する情報はそれに比べると少ないです。採用情報にある社員のインタビューを見ても運用業務や営業といった花形部門の人の記事が多いのに対し、コンプライアンスの人の記事なんてほとんど見かけません(涙)。
もちろん垂直的なヒエラルキーがある中でできるだけ上の方に行きたいというのは当然のことでそのような情報に大きな需要があるのは当然のことです。

一方で、そういうヒエラルキーから外れた観点からの情報というのは相対的に少ないですが、それにも一定の需要があると思います。
そういった点に注目した、かつ小回りの利いた情報発信をすることはメインストリームとは違うところで頑張りたいという同志の支えになると思いますし、そういう人が増えること自体が世の中のためになると信じています。

負け犬の遠吠え、と言われるかもしれませんしそれが間違っているとも思いませんが、王道・エリート街道ではなくてもユニーク路線を堂々と進み、独自の価値を築いていけるような人間になりたいと思いますし、情報発信を通じて同じような考えを持っている人の役に立てたら幸いです。

最初の話とずれてきましたが、レポート・試験の評価における先生の視点はともかく、奈良大学での学業についても積極的に記事にしていきたいと思います。
運用会社のコンプライアンスの話は…ニーズありますかねー(汗)

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博士論文審査の結果

口頭試問来たる

退学から論文提出まで

2度目の博士学位申請論文(博士論文)審査に不合格だったため、大学院博士課程を昨年の9月に単位取得退学し、その後論文を修正を続けること半年、4月にようやく3度目の博士学位申請論文を大学に提出できました。ここまでは以前の記事に書いた通りです。

大学院を退学してから論文を提出すると論文博士の扱いになるようで(大学によって扱いが異なるかもしれません)、論文の受理の決定自体に検討のプロセスが入るため、まず受理されるかが心配でした。
もちろん指導教官の了承を得て提出しているので大丈夫だとは思っていましたが、やはり受理の連絡が来るまでは安心できません。

そしてそわそわすること2週間くらいで論文の受理と審査担当者決定の連絡がありました。第一関門というほどのことでもないですが、やはりほっとしました。
そして論文審査の本丸ともいえる口頭試問があるのですが、審査を担当される先生方はご多忙ですし、コロナ禍という状況もありますのでなかなか口頭試問の日程が決まらず、その期間も落ち着きませんでした。
いつでも対応できるように落ち着いて準備をすればいいのでしょうが、仕事や日常生活もあるので決まった期日に向けて準備をする方が気が楽でした。

そして待つこと1か月強、ついに口頭試問のスケジュールの連絡がありました。
あとは気合を入れてイメトレするだけです。
ちなみに口頭試問は博士論文に関するものですので、質問の内容も基本的には博士論文の中から出てきます。そのため、準備は博士論文を読み直し、第三者の視点で疑問点を洗い出す、ということの繰り返しです。
しかし、自分の書いたものとはいえ論文の量は結構多いので、何度読んでも途中で流し読みになってしまい、想定される質問の洗い出しがうまくいかなかった気がします。自分の書いたものとはいえ、どこに何を書いたか意外に覚えていないので油断でしたね。

三度目の口頭試問

口頭試問はその名のとおり、博士論文の内容について審査担当者が質問やツッコミを入れ、申請者が質問に回答し、また自分の考え方の妥当性を説明し、博士論文の価値を証明するものです。
海外ではディフェンスと言われることもありますが、論文の不備や不明確な点を突いてくる審査官から我が子のような博士論文を守る戦いです。

審査担当者が誰なのかは本番になるまでわかりません。
自分の場合もう三度目でテーマも教員の先生の状況も変わっていないため、多分過去二回と同じだろうと思ってはいましたが、審査官の方の専門やキャラクターで雰囲気や説明の内容、ツッコミどころが変わる可能性がありますので、できるだけいろんな視点からのツッコミを考えるようにしていました。

当日は平日で仕事もあったのですが、やはり口頭試問のことがちらついて集中するのが難しかったです。トラブルでもあったら最悪でしたが、幸い何事もなく業務が終わったので落ち着いて口頭試問を迎えることができました。

リモートで自宅での面接なので服装は悩みましたが、少しでも不安要素をなくすためにスーツにネクタイにしました。そして、縁起を担いで地元小田原が誇る無敗の名将・北条氏康をイメージしたスーツで必勝を期します。

そしていざ口頭試問ですが、開始早々にリモートなのでスーツ着なくてもいいし上着脱いだら、と(笑)。
出鼻をくじかれた感もありますが、上着を脱ぐと肩の力が少し抜けてよかったかもしれません。

最初は論文の概要について説明します。大体10分くらいで論文のポイントをまとめます。こちらについては事前に準備ができるのでそこまで苦労はしませんでした。緊張で早口になっていましたが…

そして概要の説明が終わってからが本番。審査官からの質問タイムです。
審査官は学者の先生と実務的専門家からなるのですが、私はどちらの点でも若輩者で自分の実務経験と論文を書く過程で学んだことを拠り所に必死に守ります。
攻め手の圧倒的火力に対して自らの陣地をいかに守るかがカギになりますが、大事なことは自分の陣地を狭く・固くすることだと思います。
学位をとることを目標とした場合、博士論文のテーマは「自分が世界で一番詳しい」という状況にもっていくことができることが大事です。つまり自分が勝てる土俵で戦うということですね。

しかし、複数名の審査官を相手に一人で対峙するというのは精神的に辛いです。
論文の内容に自信があり、準備もしっかりできていれば堂々としていられるかもしれませんが、自分はそこまでの自信はなく、いつ厳しい質問がくるかとドキドキしていました。
そしてその懸念は的中し、論文のコアとなる素朴な質問にもうまく回答できずそこから空回りしてしまいました。

それでも立て直せばなんとか合格はもぎ取れると信じ、その後の質問には丁寧に回答していきました。やはり実務的な部分は経験もありますし、守りやすい分野なので持ち直しやすかったと思います。
必死になって回答していると時間が過ぎるのも早く、気が付いたら所定の時間になっていました。最後の方は致命的な質問がきませんように…と祈ってましたが、何とか致命傷は受けずに回答できたかと思います。実際にどういう評価だったかはわかりませんが。

最後に言いたいことはあるか(処刑か…)、と聞かれたので最初にうまく答えられなかった質問再度回答。それも上出来な回答ではないのですが最善を尽くそうと思って言えることは言っておきました。

これにて口頭試問は終了。とても完璧とは言えないできでしたが、致命傷は負わなかったので何とかなるかな、という希望込みの感触でした。

 

口頭試問の結果

口頭試問が終わると結果を待つだけなので、祈ることしかできません。
ただ待つのみです。

審査の結果は審査官がまとめた後でしかるべきプロセスを経て決定されます。
そのため、それなりに時間がかかりますが、結果を待つ身としては良くてもダメでも早く結果を教えてくれないかな、というのが本音です。

前回は一定期間待ってから不合格の連絡があったので、しばらく連絡がなければ合格、というわけでもないのが辛いところです。

そして待つこと約1か月、ついに大学から連絡がありました。
無事に合格、博士号授与が決定したとのこと。

・・・

・・・

キタ――♪ o(゚∀゚o) (o゚∀゚o) (o゚∀゚)o キタ――♪

 

後日学位記も送られてきて、博士号を取得できたことの実感がわいてきました。

学位記

 

博士論文の取組みは4年以上続けてきたので感慨深いものがありますが、日常や仕事の内容が変わるわけでもないのでインパクトはあまりないですね。
実際、博士号は「足の裏の米粒」=取れないと気になるけど取っても食べられない、と言われたりもするので、特にアカデミアでなければ当然かもしれません。

それでも一定の成果を得られたことは大きな収穫ですし、アカデミアと実務の懸け橋となるという目標に近づくこともできました。
正直なところ、私は法学者でも法曹でもないので、法律論・法学に詳しいわけではありません。それでもそのような実務経験と法学の一定の素養を組み合わせて法律の専門家にはない価値を生み出せるのではないかという考えもあります。
博士号をどのように活かすのかはまさにこれからにかかっているのですが、せっかくなのでユニークな立ち位置で面白い人だといわれるようなことができたらいいと思っています。

博士論文の作成にあたっては指導教官、大学事務室、同業の方々に大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。

これからも頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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文化財学演習Ⅰ(スクーリング講義)

奈良大学通信課程とスクーリング

奈良大学の通信課程で歴史に関する学びを始めて早5か月。
いくつかの科目のレポートを書いたり単位認定試験を受けたりと、今まで触れてこなかった分野にも触れることができ、大変有意義でした。
こちらについては記事が書けていないのでそのうち投稿したいと思っています(汗)

しかし、大学生の醍醐味(?)といえばやはり対面での授業と学友との交流ではないかと思います。この点では通信課程はどうしても限界があるのですが、コロナ禍では一般の大学生も学友との交流は制限されているようですので大変だと思います。

それはさておき、奈良大学通信教育部ではテキストでの学習に偏重しないよう、また学友との交流の機会を設けるためにスクーリングの講義を設けています。
スクーリングとは実際に大学のキャンパスを訪れて、一般の大学生と同様に授業を受ける講義で、科目によってはキャンパスの外の史跡や神社仏閣を訪れたり、実際に文化財を手に取ってその扱いを学んだりすることもあります。
もちろん実際に奈良に行って宿泊もするわけですから交通費や宿泊費は必要ですし、またスクーリング講義用の追加費用(学費)もかかるので経済的な負担はそれなりに大きいのですが、現地に行って歴史遺産に直に触れ、学友と一緒に学ぶことは負担を上回る収穫があると思います(あまりに回数が多いと辛いですが)。

しかし、コロナ禍の状況では実際にキャンパスに集まって授業を行うのが難しく、現在はスクーリング科目についても一般の科目と同様に与えられた課題を提出する形態、あるいはオンラインで授業を受けるという形態になっています。
通信課程の学生の多くがスクーリングを楽しみにしているようで、経験者の方も有意義だったとおっしゃっていることもあり、実際にキャンパスに行くことができないのを残念がる声が多く、自分も同感です。
できれば卒業するまでに一度はキャンパスで授業を受けたり学友と直に話してみたいものです。

ただ、ポジティブに考えれば交通費と宿泊費の節約になっているわけでもあり、プラスの面がないわけでもありません。とりあえず一度か二度ほどキャンパスで授業を受けることができればかなり満足できると思いますので、一つ二つスクーリング科目を残して在宅で単位を取ってしまうのも悪くないかもしれません。

ともあれ、8月20日(金)から3日間、スクーリング科目「文化財学演習Ⅰ」を受講しましたのでその内容をご紹介しようと思います。

 

文化財学演習Ⅰ

文化財学演習Ⅰの内容

文化財学演習という講義はⅠとⅡがあるのですが(Ⅲもありますが卒業論文指導っぽいです)、両方とも複数の教員が担当する講義で(合同ではなく、教員を選択する)、学生はシラバスを見て希望する教員のクラスで受講します。
文化財学演習Ⅱではお城の研究で有名な千田嘉博先生が担当されるので千田先生のクラスを受講しようと思っていますが、Ⅰの方は千田先生のご担当ではないので歴史地理学の先生が開講されているクラスを選択しました。
他には考古学や美術工芸品に関する内容のクラスがあり、これも奈良大学らしい授業ですのでこちらを選んだ方も多いかもしれません。

私のクラスでは歴史地理学を中心とした内容で、歴史と地理学の掛け合わせということで歴史的景観の保全について、具体的には重要伝統的建造物群保存地区や重要文化的景観制度や登録の意義などについて学ぶとともに、地理院地図の使い方や卒業論文作成を見据えた論文作成の作法などについても説明を聞きました。
論文作成自体はそれなりに経験がありますが、自分の学位論文と学術論文では構成の違いがあったり、分野によって参考文献の書き方の違いがあるなど、結構勉強になりました。

3日間という短い期間でしたが学ぶことは多く楽しかったです。以下では簡単に授業の内容をご紹介したいと思います。

授業の前に(1日目)

初日はまず自己紹介から入ります。受講している方は10名で居住地も性別も極端な偏りはありませんでした。年齢としてはシニアな方が多く、退職後に学びなおしをされている方もいらっしゃいました。歴史学という分野の性格でしょうか。
自己紹介の中で検討中の卒業論文のテーマについても触れられていましたが、現段階では検討度合いも人それぞれで、あまり考えられていないという方もいらっしゃいました。
今年度入学ならまだ5か月でレポートや試験に追われていて卒業論文のことまで考えるのは結構大変な気がします。

自分自身具体的にこれ!というものは決まっていないのですが、その時点では「文化財から見た小田原北条氏の民政」といったテーマで何かできないかと考えていました。
北条氏は民政が優れていたことに加え記録の保存状態が良好なため研究が非常に進んでいますが(特に黒田基樹先生がたくさん書籍を出されていてとても勉強になります)、その研究は比較的文献史学からのものが多く、民政についてあまり文化財的な観点からの研究は見かけません(築城術については非常に多いです)。もちろん私が知らないだけで豊富に研究実績はあるのかもしれませんが、その可能性は今は見てみないふりをします(笑)

しかし、文化財から研究をするためには文化財が遺っていることが前提であり、その観点から研究が少ないということは文化財自体が文献史料と比較して保全されていないことを意味しています。そのようなハードルを一学生が超えるのは非常に難しく、先生にもその点を指摘されました。
確かに改めて考えると文化財というモノがない以上研究できないし、自分で資料を発見することは難しいので、このテーマは厳しそうです。

となると改めてテーマを選ばなければいけませんが、小田原という点は死守したいので、他の小田原の史跡(研究成果が膨大にある小田原城は除く)か、小田原の誇る偉人である二宮尊徳の業績に絡んだテーマなどがいけるかと考えています。

1日目

授業はまず景観を維持する法的な枠組み、具体的には文化財保護法の中で景観の保存がどのように定められているかの説明を受けました。
文化財保護法では有形・無形の文化財について文化財保護の枠組みが定められていて、重要文化財や国宝の指定も文化財保護法に定められています。
景観については重要文化的景観重要伝統的建造物群保存地区について定めがあります。自分でもはっきりとその違いは分かっていませんが、前者は指定のテーマに沿った景観に重きが置かれ、後者は建造物という文化財に焦点があるように思います。実際、景観を対象とした重要文化的景観が広範囲に及ぶのに対し、重要伝統的建造物群保存地区はかなりピンポイントの指定になっています。
それぞれの概要や指定されているエリアの説明は文化庁のウェブサイトに詳しく載っています。

 

町並みが保全されている具体例として奈良県の某地域の町並みの変遷の調べ方や保存状況についてお話を聞きました。史料が残っていて読み込むことができれば江戸時代の地割(区画割り)や持ち主、土地利用の変遷までわかるのか、と大変興味深く聞きました。

また論文作成の基礎として論文の体裁と文献の集め方について説明を受けました。
やはり資料の収集方法としては大学・自治体の図書館のほか、国立国会図書館やCiNiiがメインのようです。コロナ禍で資料へのアクセスが難しいのは専門家の知恵・経験があっても変わらず、直に図書館に行く以外には複写郵送サービスに頼らざるを得ないようです。無念。

2日目

2日目は主に地理院地図の使い方を学びました。
地理院地図は国土地理院が管理している地図データですが、普通の地図だけでなく年代ごとの航空写真が取れたり、傾斜を示す陰影起伏図を作成できたりして大変便利なツールです。いじっているだけで時間が過ぎていきます(笑)
これは論文作成だけでなく、旅行の記録・記事などで使ってみたいですね。

 

 

1974~1978年の小田原城付近の航空写真(地理院地図より筆者作成)

小田原城付近の陰影起伏図(地理院地図より筆者作成)

 

この授業では3日目に各人が重要文化的景観または重要伝統的建造物群保存地区から一つ以上を取り上げて所定のフォーマットを用いて報告することになっていて、地理院地図の使い方の説明の後はフォーマットの説明を受けました。

そしてお昼休みを挟んで午後は各自報告書の作成です。
提出期限が15:50とお昼休みを入れても4時間しかなく、限られた時間で参考文献を確認し、地図の作成や地区・地域の概要、保全や観光上の取組みなどをまとめなければいけなかったのでかなりドタバタしてました。
実は時間がかなりタイトだと気付いたのは午後に作成を始めてからで、昼食をのんびり食べていたのを後悔しました(汗)

それでも質の低い報告書は作るまい、とできるだけ参考資料を読みつつ文化庁のウェブサイトなどにも目を通し、地域の特徴と課題をまとめていきました。
提出したのは提出期限ちょうどの15:50、ヒヤヒヤものでした。
限られた時間で情報を正確かつコンパクトにまとめることを求められる新聞記者のハードさとはこういうものかと、むしろ新聞記者の職場体験をしたような気がします。

3日目

3日目は各人が作成した報告書に基づき発表します。
時間は参加者の人数にもよりますが、今回は一人20分程度でした。

私が取り上げたのは福島県にある下郷町大内宿という宿場町(重要伝統的建造物群保存地区)でした。
小田原市を取り上げたかったところですが、残念ながら小田原市は重要文化的景観・重要伝統的建造物群保存地区としての登録がなされていないので、何となく大内宿を選びました。

筆者作成報告資料の一部

 

大内宿という場所については初めて知ったのですが、上記の資料にも書いている通り東日本大震災前には年間100万人以上の人が訪れる福島県有数の観光地です。近くに大内ダムがあるためセットで訪れる人が多いようです。

大内宿は江戸時代初期に会津と日光・今市を結ぶ南山街道の宿場町として栄えたのですが、17世紀後半には南山街道が使われなくなっていき、その後はあまり発展がみられませんでした。しかし、昭和時代に相澤韶男氏(民俗学者)が保存活動を行っていたところ全国紙が紹介したことによって世間の注目を浴びます。

その後大内ダムの建設もあったため住民としてもすぐに重要伝統的建造物群保存地区に登録しようという機運にはならなかったようですが、関係者の粘り強い努力や観光業に力を入れる下郷町の方針もあって1986年に登録されることになりました。

大内宿の観光業への取組みや保全に対する住民の意識についても論文や資料がよくまとまっていて、報告書の作成に役立ちましたし、いい勉強になりました。
報告書のテーマに観光への取り組みが含まれていたこともありますが、景観の保全と観光業・住民意識は不可分であることが自らの報告書だけでなく他の方の発表からも窺えました。
一定の負担をして景観の保全をするのは観光業の発展という経済的利益も動機としてありますし、負担がある以上住民の協力は必要になります。うまく観光客が増えればいいのですが、そうでなければ負担だけが生じて景観の維持が難しくなる、という難しさに直面しているところもあるようです。

 

以上が文化財学演習Ⅰの3日間の講義の内容です。
短い期間ではありましたが、景観保全の枠組みや地理院地図の使い方、そして景観保全の取組みと観光業との関連、保全のための課題などに触れることができて面白かったです。
論文作成にも活かしたいですが、それ以上にプライベートでの旅行でチェックするポイントが増えそうで、今から旅行するのが楽しみです。特に今回取り上げた大内宿には是非行ってみたいですね。

この夏にはあと二つスクーリング科目があるのですが、他の二つは教材を読んでレポートを出すという形態のようですが、これらも含めこれからも学業に励んでいきたいと思います。あとブログ記事も…

 

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文化財学講読Ⅰ(1)

歴史を実感するにはまずモノから?

世の中には自分も含め歴史が好きなが人が多いですが、一言で「歴史が好き」といっても好きな対象は様々です。
好きな時代、地域はもちろん、人物が好き、文化が好き、遺物が好き、など様々です。

そして当然そのタイプによって歴史へのアプローチも異なってきます。
歴史上の人物が好きな人は歴史学者や作家が書いた書籍や文献資料などを積極的に読むでしょうし、文化が好きな人は美術館や博物館で遺物や芸術作品などを楽しむことが多いと思います。
自分自身歴史の好きなポイントを一つ挙げるとしたら歴史上の人物やその行動を知ることが好きなので、書籍で歴史に触れることがほとんどです。

しかし、歴史上の人物、あるいは過去に生きた人々の存在や事績を最もよく感じるのは、彼らが残したモノだと思います。
城郭や神社仏閣、遺跡などの建造物やもちろん、日用品、武具、農具、衣類など過去の人が実際に使っていたものを見ると、確かに過去に人がいて生きていたんだということを感じます。刀剣や甲冑などの武具を見るとこれで戦っていたんだと少々怖くもなります。歴史としての中世は好きですが、生々しい創造をすると複雑な気持ちですね。
中世どころか太平洋戦争などの爪痕を見ることも少なくありませんが、それくらい近い時代になるともはや完全に他人事として見ることはできなくなります。語り部の方と同様、モノで戦争の跡を残していくのはどのような立場であれ戦争を少しでも自分事として感じるために大事なことだと思います。

このように、考古学的観点ではもちろんですが、さらに歴史の専門家でもない私たち一般の人間が自分とつながった存在として歴史を感じるには遺構や遺物といった時間を経てきたモノが不可欠です。
そしてそのモノを私たちが目にするには、当然それを発見・発掘しなければなりませんし、その上で適切に状態を維持し、保管することが必要です。せっかく発掘できても適切に保管できなければすぐに状態が悪化して観察に耐えなくなるかもしれません。
その意味で、遺構や遺物、すなわち文化財を保護する学問(文化財学)は歴史学、そして私たちの歴史観を育むために大きな貢献をしていることは間違いないでしょう。

私も博物館などで遺物を見るのは好きですし、ちょっとした遺跡・史跡を歩くのも楽しいので、そのようなものをどのように保存するのか関心がありました。
そしてそのテーマを扱っている科目が「文化財学講読」です(最初に受講するのはⅠ)。
歴史学系の学部ならでは授業と言えそうです。

指定テキストは「文化財保存科学ノート」という書籍でした。
その名のとおり、文化財の保存科学がどのようなものかという概説から始まり、後半では文化財のカテゴリーごとに具体的な保存方法が解説されています。

独学で勉強すると概説を飛ばして具体論から入りがちですが、大学のカリキュラムだけあって基礎から学ぶようになっているのはよかったです。
やはり全体像をつかんでから各論に入る方が整理しやすいと思います。

 

 

モノを扱うには人文科学だけでは足りない

文化財学は歴史学だけど「文系」ではない

私は今まで学生として経済学・経営学・法学という社会科学畑で、今回初めて人文科学を学ぶことになりましたが、先に勉強した民俗学も含め今まではいわゆる文系分野でしたので自然科学について学ぶことはほとんどありませんでした(経済学部では数学・統計学を学びましたが)。

しかし、歴史学の一分野とはいえ文化財学は実際にモノを扱う分野であり、そこではいろいろな科学技術や化学物質が使用されます。
そのため、文化財学を学ぶ上で自然科学分野の学習は避けて通ることはできません。

では、具体的にどのような内容の学習が必要なのでしょうか。

 

文化財学はどのように自然科学と関わるのか

遺物が発掘されたときにその材質を確認することになりますが、発掘された状態では脆いですし環境の変化の影響も受けやすいのでまず保全を図ります。
材質によって行う処置は異なりますが、木材の場合は水分を含んでいるのでその水分を取り除く必要があります。
しかし、木材遺物はその水分によって形質を保持しているので、ただ乾燥させて水分を除くだけだとひび割れたり収縮して変形してしまいます。そうなると遺物としての役割を果たすことができません。
そのため、発掘現場では散水するなど乾燥を防ぐ一方で保全処理としてはポリエチレングリコール等を使用して水分を置換するなどの対応が行われます。
その置換も遺物の状態によって最適なポリエチレングリコールの濃度が変わったり使用する薬剤が異なることもあるので、木材・薬剤両方の知識が必要になります。

また、保全の過程で材質の確認を行いますが、脆い遺物を分析するにはあまり触れたり破壊したりすることは望ましくなく、非破壊検査が重要になります。
非破壊検査の手法としてX線(放射線)や赤外線・紫外線が用いられますが、これらは遺物の状態や分析の内容に応じて使い分けられるため、このような物理・光学の分野からも目を背けることはできません。

文化財保存は動産である遺物だけでなく住宅等の不動産である遺構も対象となります。
遺構は主に土と石で構成されるという点では同じ材質の遺物と同様の処置がとられるべきですが、遺物と比べサイズが格段に大きいですし動かすこともできないので、遺物とは異なる対応が必要になることもあります。
例えば土でできている遺構は水に弱いですが近くに地下水が流れていることもあるのでその場合は地下水と遮断する処置がとられることがあります。
また移動させて展示をすることができる遺物と異なり遺構は基本的には動かすことができずその場での展示になりますので、自然環境と展示を両立させる工夫が求められます。
また古墳も遺構・遺跡に含まれますが、その石室を調査する際には外気に極力触れさせないなどの配慮も必要です。
この他にも遺物と同様に薬剤や樹脂を使用して遺構を補強するといった対応が行われ、やはり自然科学の知見が必要になります。

このように、材質の分析においては光学的・物理的な内容が、遺物・遺構の保全については化学的な内容が知識として求められるというように感じました。
この科目では基礎的な内容がメインでしたので、個々の薬剤や処理方法の名前を覚えることまでは必要ではなく、材質の分析・遺物の保護のために行う作業やその目的を概括的に把握できれば学習の目標に到達したと考えていいのかなと思っています。
ただ、実際に文化財保護に携わる際には薬剤についてより深く正確な知識を身に着ける必要がありますし、材質分析などに使う機械の使用方法や文化財の扱い方も学ぶことになりそうです。

ちなみに奈良大学には実際に学校に行って学ぶスクーリング科目として「文化財修復学」があり、その中で実際の文化財保護の作業を経験することができるようです。
もっとも今年は新型コロナ感染防止のためスクーリングも在宅になってしまったのですが、来年も受講できるのでその頃にはスクーリングが再開されているよう祈っています。

 

小田原市郷土文化館(と五代ちゃんTシャツ)

文化財学講読Ⅰもテキストを読んでレポートを書き、合格の場合は単位認定試験を受けて単位取得という流れです。
レポートの内容は文化財学の概要と任意のカテゴリーの文化財の保護方法について論ずるというものでしたが、文化財の保護については概ね上記のような内容を記載したところ、無事に合格していました。

レポートにも記載しましたが、文化財学は人文科学である歴史学と自然科学の融合であり、また決して自然科学頼りというわけではなく歴史学や考古学、美術史学など多様な分野の知見が求められるユニークな学問だと思います。
それ故に敷居は高く感じますが、学ぶ分には気づきも多く文化財保護のイメージもわいて面白かったです。

ついでに、文化財学を学んだあとに感じたことを書いてみたいと思います。

知識が増えると興味が広がり、アンテナの感度が増す

どのような分野でもそうですが、新しいことを知ると今まで意識しなかったものに気づいたり、自分のアンテナの感度が増す感覚が生じます。

奈良大学のカリキュラムで民俗学・文化財学と勉強してきましたが、民俗とか文化財の保護のことを知ると、今まで何度も通りかかりながら(トイレ以外に)入ることのなかった小田原城内にある小田原市郷土文化館に興味がわいてきました。

 

 


小田原城内にある小田原市郷土文化館

郷土文化館内では奈良時代から現代に至る小田原ゆかりの文化財・民俗資料が展示されていました。
大きな博物館ほどではないですが、各時代の文化財が展示されていて、これはこのように保存されているのか、などと学んだことを思い出しながら見学することができました。
学んだ内容をすぐに活かせるのは楽しいです。

また、館内には石造物調査ボランティア募集の案内のチラシがあり、これもまた興味を惹かれました。
学んだことを活かすだけでなく、歴史が好きな地元の知り合いを作るという意味でもこのような活動に参加するのは有意義な気がします。

ただ人見知りな性格に加え、今はまだ仕事と学習の両立を優先したいので考え中ですが、いつかは挑戦してみたいと思っています。

 

五代ちゃん!!

文化財学とは関係ないのですが、小田原城といえば私が好きなキャラクターに後北条氏の当主たちをモチーフにした「五代ちゃん」というのがあります(作者の方は主にTwitterで活動されているようです)。

 

 

私もTwitterでいつも和ませてもらっているのですが、今般五代ちゃんのTシャツが販売されるということですぐに購入しました。


ちなみに背後の「ねこぺん日和」も大好きです。

後北条氏好きが高じて小田原城近くに居住している身としては、五代ちゃんグッズを身に着けて小田原城を歩くのが夢でした。
ということで、これから小田原城を散歩する際には積極的に五代ちゃんTシャツを着ていこうと思います。
もし小田原城で五代ちゃんTシャツを着ている人がいたら高い確率で私だと思いますので、お声がけいただけると嬉しいです(笑)

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