アセットマネジメント業界の魅力(2)

この記事では、アセットマネジメント業界の魅力を何回かに分けてお伝えします。
1.アセットマネジメント業界とは?
2.アセットマネジメント業界におけるキャリア形成(本記事)
3.アセットマネジメント会社の待遇や労働環境
4.アセットマネジメント会社のコンプライアンスというキャリア
5.新規参入が相次ぐ資産運用業

前記事ではアセットマネジメント(資産運用)業界の概要について説明しましたが、この記事ではアセットマネジメント業界におけるキャリア形成について、個人的に考えていることをお伝えしようと思います。

 

アセットマネジメント業界の業務について

なお、資産運用業のうち、投資信託に関係する業務については下記の記事で説明していますので、ご参考になれば(投資運用業には投資信託委託のほか投資一任もありますが、基本的な性格はほぼ同じです)。
投資信託委託会社について③委託会社の業務

また、運用会社の業務については下記の記事(書評)も参考になるかと思います。
投資信託 基礎と実務
運用会社はどんな仕事をしているのか

 

アセットマネジメント業界でキャリアを積む魅力

資産運用会社の職種は細分化されていて、それぞれにやりがいや魅力があると思いますが、自分がそれぞれの職種を経験しているわけではないので、職種ごとの魅力を語ることはできませんが、一般論として個人的に考える資産運用業界でキャリアを積むことの魅力をお伝えしようと思います。

(1)各業務の専門性が高い

上記のリンク記事にも記載しているとおり、資産運用会社の業務は細分化されていて、かつそれぞれの専門性が高くなっています。

そのため、特に外資系や日系でも中途採用の役職員は特定の専門分野に特化したキャリア形成になることが多いです。

例えば、運用部門の方は一貫してファンドマネージャーやアナリスト・エコノミストを続けることが多く、管理部門に行くことはそれほど多くありません(日系の場合は必ずしもそうではありませんが)。
それは運用部門に限ったことではなく、法定開示・任意開示資料を作成する専門性(ディスクロージャー)を持った人はやはりその業務を一貫して担当してその分野の専門性を確立することが多いですし、コンプライアンス(法令遵守)の場合もやはり法務やコンプライアンス、あるいは隣接するリスク管理などの分野を継続して担当することが多いです。

これは、業務ごとに専門性が高いために各分野を細切れに担当するより、一つの業務で専門性を高めた方が競争力が高まるという経営上の判断があると思われます。
実際、私はコンプライアンス業務を10年ほど経験していますが、運用部門や営業、資料作成の分野に行くとほとんど戦力にならないでしょうし、その逆もしかりでしょう。

特に日本の一般の会社や公共部門の場合は幹部候補は総合職という形で採用され、様々な分野を経験させてジェネラリストとしてキャリア形成を行うことが一般的ですが、その場合は視野は広がるかもしれませんが個々の業務の経験を積む期間は限られるため、自分の専門分野というものが築きにくいと思います。
キャリア形成の途中で自分に合う仕事が見つかっても必ずしもそれを続けることができるわけではありません。

その点、資産運用会社の場合、自分に合う分野を見つけたらその分野でキャリア形成を進めていくことが比較的容易です。
会社自体が専門性を重視ししていることに加え、もしその分野を外されそうになったら転職してそのキャリアを継続することも可能です。
また、後述するように資産運用業界は転職市場が成熟しており、専門性に対して高い評価がなされるため、一つの会社でジェネラリストとしてキャリア形成を積むより特定の分野の専門家として経験を積んだ方が好待遇を得られやすい傾向にあります。

(2)各業務の内容・プロセスは基本的に業界共通

多くの業界では同じような業務でも会社によってプロセスや慣習が異なるということは少なくないと思いますが、資産運用業界の場合業務のプロセスやシステムが高度に標準化されており、ある会社で行っている業務は比較的容易に別の会社でも行うことができます。

それゆえに前述のとおり専門性が高ければその知識や経験を他の会社でもすぐに生かすことができます。
専門性が好待遇につながりやすいというのはこのような業界の性格もあると思います。

(3)転職することが一般的で会社に縛られにくい

専門性が高く、業界で業務やシステムが共通化しているという業界の性格や経験者を中心に採用している外資系企業が多いという業界の性格上、転職市場が充実しています。

したがって、ある程度の専門性を持っていれば転職を行うことは比較的容易であるため、例えば「大きい会社で小さい役割を背負うより、小さい会社で大きな責任を担いたい」、「外資系企業で英語を使った仕事をしたい」、「人間関係に疲れたから転職したい」といった希望や不満を持った時に、一般的な業種よりは転職をしやすいと思います。
※これはすべて自分の過去の転職の動機です(笑)

転職すると待遇の向上につながりやすいので、キャリア形成の選択肢を広げやすいというメリットがありますが、それに加えて転職によって希望をかなえたり嫌な環境から逃げることができるということはそれ自体が精神的にも支えになります。

(4)業界自体が成長・変革しているので活躍しやすい

前記事でも言及しましたが、家計の金融資産の半分が現預金であり、また投資の必要性が認識されつつある日本では、資産運用業界の成長余地は大きく、国内外から新規参入が相次いでいます。
また、Fintechの進展もあり、新たな分野からの新規参入者が新しい形の資産運用業を展開する動きも見られます。
※実際にFintechで新規参入を目指している会社のお話を伺いました(「ベンチャー運用会社の立ち上げ」)。

そのような環境では若手も活躍の機会が豊富ですし、むしろ新しいものに対する吸収力の高い若手の方が活躍できるかもしれません。
場合によっては各分野において早い段階で管理職や経営陣として活躍することもできるでしょう。
そういう意味でも、優秀でアグレッシブな人にとって魅力的な業界だと思います。

以上、アセットマネジメント業界ではどのようなキャリア形成が見込めるのか、キャリア形成上どのような魅力があるのかを考えてみました。
アセットマネジメント業界に関心のある方や自分に合う業界を検討されている方の参考になれば幸いです。

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