重版未定2

弱小出版社の苦労と編集者の奮闘をコミカルに描いたコミック「重版未定」について先日ご紹介しましたが、続編が出ていたので読んでみました。

前回は会社の業績のために日々奮闘するという流れの中で日常的な編集者や出版社の業務について描かれていましたが、今回は編集者の主人公が自分の仕事のやりがいについて考えた結果、最高の一冊を創るという流れの中で出版業の日常が描かれています。

前回は弱小出版社の現実が前面に出されていたため、出版業界の慣行や出版社の経営に関する話も多かったのですが、今回は一冊の本を出すプロセスがメインになっています。

書籍の価値は当然その内容によるところが大きいのですが、それだけではありません。
装丁、つまり書籍の見栄えもまた重要です。

今回の主人公は、前回のように書籍を出版するというプロセスをこなすだけでなく、できる限り凝った書籍を創ろうとします。

そしてその過程で、著者とのやり取りや装丁を左右するデザインや紙(表紙、本体、綴り方など)の選択、そして予算との兼ね合いなどがテーマとして重要なポイントになっています。

編集者の仕事といえば、内容のチェックやスケジュール管理がメインだと思っていましたが、装丁にまで絡んでいるということが意外でした。
もちろん、装丁も書籍と一体のものなので編集者が管理するというのは考えてみれば当然なのですが、改めて書籍を創るということの大変さと深みを感じました。

装丁も管理するということは、レイアウトや紙の質なども決めるということですが、そのためにデザイナーや印刷会社とも折衝を行います。
それぞれ一家言ありますし、相手にも相手の都合がありますから、編集者の希望を通すのも大変です(デザインも使用する紙もコストに大きな影響を及ぼします)。
ストーリーの中ではデザイナーが職人らしく編集者の希望やドラフトを一切無視して自分のベストの案を出してきますが、それに対する編集者たちの反応がやはり職人らしくて見どころです。
デザイナーは自分の案を提示しただけで何も語らないのですが、言外にある想いをきちんと理解する編集者たち。
職人と職人のやり取りはかくあるべし、なんて思ってしまいました。
お互い渋いです。

編集者の常なのか(?)、書籍づくりの最後に最大のピンチが訪れます。
もうダメなのか…と思ったときに奇跡はおきます。
というか、編集者が奇跡を起こします。

もちろん、このような奇跡もストーリの展開上生じているだけではなく、現実の出版業界においても時々あることのようで、我々が普段読んでいる書籍も実は多くの奇跡の結果かもしれないと思うと、編集者の方々の努力に頭が下がります。
素晴らしい本は当然著者が素晴らしいのだと思いますが、それだけではなく編集者もまた素晴らしいのだと思わせられます。

前回に続き、今回も著者の出版業への愛情がたっぷり詰まっています。
特に今回は書籍を創るプロセスに焦点が当てられているため、より書籍を創るこだわりについて触れることができました。

そして前回もですが、編集長や主人公の編集者、営業に予算管理、さらに作家やデザイナーがそれぞれ自分の仕事に誇りとポリシーを持っているということにも、社会人として感動を覚えました。

自分の所属する資産運用業界も同じくそれぞれの職種がプロフェッショナルとして行動するところも似ていますし、また粗製乱造はしたくないという主人公の想いも、やはりファンドの濫立が問題視されているわが業界の問題意識と重なるところがあって、その点でも考えさせられるところ大でした。

 

実は自分の夢の一つは書籍を出すことなので、このような素晴らしい編集者に導かれて、世の中に少しでも意義のある本を出してみたいと思いました。

とりあえず、世の出版業に貢献するためにも本を買わねば。。。

 

※なお、「重版未定」は見事重版になったようです。おめでとうございます。

 

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