霞ヶ関から眺める証券市場の風景 -再び、金融システムを考える-

ゴールデンウィークが終わり意気消沈したのもつかの間、幸いにも2日で週末になったので、心も穏やかです。
もっとも、明日からまた仕事ですが・・・orz

ともあれ、この週末は精神的に余裕があったので、本を読むことにしました。
最近は仕事に関する書籍を読んでいないので、久々に仕事に関連しそうな本を読むことに。

私が担当しているのはコンプライアンスという業務で、ざっくり言うと、法令をはじめとする各種のルールを会社の各業務において遵守するように対応する仕事です。
遵守すべきルールは業界によって異なりますが、私は運用会社に所属していますので、主に金融商品取引法(金商法)や投信法、及び業界団体・自主規制団体の規則がその対象になります。

運用会社を含めた金融機関は規制業界で、ライセンス(運用会社は登録になりますが)がなければビジネスを行うことができず、そのライセンスを管轄する金融庁や、ビジネスが適切に行われているかをチェックする証券取引等監視委員会の動向を常に注視しています。
ちなみに証券取引等監視委員会とは、インサイダー取引など証券市場における不正取引をチェックしたり、証券会社や資産運用会社のビジネスが適切に行われているか検査を行う行政組織です(法的には金融庁に設置された国家行政組織法上の八条委員会ということになると思います)。

運用会社のコンプライアンスといっても単に法令の条文を知るだけでなく、金融商品や運用会社の実際の業務を知らなければ適切な対応ができないので、仕事のためにと言っても何を読んでもいいのですが、まずは法令についてもっと理解をしなければと思い、金融そのものというよりは規制方面の書籍を選ぶことにしました。

ルールを理解するためには、法令の条文そのものだけでなく、そのルールが作られた背景を理解することも大事です。
そうすることでそのルールの本質を理解し、形式的ではなく本質的な対応をすることが可能になります。逆に法令の条文ばかり見ていては、形式的には法令を遵守できるかもしれませんが、法令の趣旨に沿っているかどうかは別の話です(・・・ということを上司にもよく言われますので、自戒を込めて)。

そして、法令を理解する近道は、法令立案担当者の論文や著書を読むことです。
ここ数年金商法や会社法の大きな改正がありましたが、その背景や改正趣旨を把握するため、金融審議会の議事録だけでなく、法令立案担当者の論文を図書館で探してきて読んだこともありました。

最近はそういうことをしていないのですが、日常業務のベースとなっている法令の趣旨やその制定背景を知ることは大事なので勉強したいなと思っていたところ、我々の検査を担当している証券取引等監視委員会の実務トップである大森泰人事務局長がその実務経験を振り返りつつ各種規制の背景や認識を語る書籍があったので、それを読むことに。

ちなみに大森氏は以前から積極的に情報発信をすることで知られる方で、著書でもその特異性に言及されています。
しかし、上述の通り規制を利用する(服する)側としてもその背景や行政官の認識については関心があるところですので、そのような姿勢は大変貴重だと思います。

また、大森氏の文章は単なる無味乾燥な法令の解説ではなく、ご本人の趣味や毒舌(?)も交えた独特のテイストで、読んでいる方もついつい読み進めてしまう魅力があります。

そういうわけで、積ん読状態であった大森氏の著書を読み進めてみました。
タッチは軽いものの、決して内容が薄い訳ではなく、むしろ考察が深いだけに理解しながら読み進めるのは意外に容易ではありませんでしたが、それでも学ぶところは多かったです。

一番最初のお題は「インサイダー取引」。
今でこそ広く知られた(かつ、正しくは知られていない)インサイダー取引規制ですが、実はその歴史は意外に浅いのだとか。
最初に証券取引等監視委員会がインサイダー取引を摘発したのも1994年と、わずか20年ほど前になるそうです。
今では投資家間の公平性、ひいては証券市場の信頼の確保のための規制と理解されていますが、その制定の際には賛否両論あったようで、「常識」というものの難しさについても考えさせられました。

あと印象に残ったのが、大森氏の幅の広さ。
インサイダー取引の制定背景を語るのに映画が出てきたり、卑近な例が出てきたり。
自分はあまり映画を見たりせず、引き出しが多い方でもないので、もっと色んなことを知らないといけないと思いました。

ちなみにインサイダー取引の後は長銀・日債銀の破綻及びそれに伴う長銀・日債銀事件から規制のあり方やそれを取り巻く人間模様が描かれるのですが、肝心の長銀・日債銀事件についてあまり知らず、またその事件そのものの解説があるわけではなかったので(つまり、読者はそれを知っているのが前提)、改めて業界の歴史を知ることの大切さを感じました。

行政官という制約の中独自のテイストで情報発信を続けられている大森氏ですが、今後もその情報発信に期待すると共に、私もいつかは制約を超えて情報発信ができるようになりたいものです(=そのようなニーズがあるような人間になりたい)。

しかし、大森氏もまさかこんな若造が自分の著書を読んでいるとは思っていないだろうなあ・・・(笑)

※ちなみに、大森氏はこちらの書籍の書評もされていました。本当にインプットの量が凄いと頭が下がります。

大森 泰人
きんざい
売り上げランキング: 94,366
カテゴリー: 読書 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。