研究内容発表(本番)

私が所属する大学院では、修士課程も博士課程も初年度は教授陣及び1年生の前で研究内容のプレゼンをすることになっています。
4月から毎週修士課程の方が研究計画を報告されていたのですが、ついに自分の番が回ってきました。

持ち時間が厳格に決まっているうえ、博士課程である以上、修士課程よりも厳しい質問が来ることが想定されるため、プレゼンの準備は念入りに行いました。
前夜には一人で何度もプレゼンの準備を行い、声がかれてしまいました(笑)
こんなにプレゼンの準備を頑張ったのはMBA時代以来で、懐かしい気持ちになりました。

当日は験を担ぐため、先日仕立てた北条氏康スーツを着用。
気合が入ります。

業務終了後、早めに学校についてからも、何度も資料を確認しながらプレゼンのイメージトレーニングを行っていました。

そして、いよいよ自分の番。
深呼吸して全員の前に立ちます。
この緊張感はやはり慣れません。

とはいえ、話を始めると、練習もイメトレもしていますので、何とか口が動きます。
早口になってしまうこともありましたが、頭が真っ白になることなくプレゼン終了。

とはいえ、正念場はプレゼンそのものではなくその後の質疑応答。
百戦錬磨の教授陣による鋭い質問をどのようにさばくかが課題です。
案の定、教授陣からは説明内容や研究計画に鋭く切り込まれました。

ただ、幸いなことに社会人大学院生として、実務を基に研究計画を立てており、法律論や研究ということについては本職の学者に及ぶところではないものの、実務との関係ではこちらが本職ですので、一方的に攻め込まれるということはあまりありません。
実際、テーマ設定の適切性については突っ込まれましたが、あとは業界慣行や実務に関する質問で致命傷もなく質疑応答をこなせました(多分…)。

テーマ設定の適切性については、実は入学試験の時に面接で指摘されていて、今回はそれにも配慮したプレゼンをしていました。
したがって、テーマ設定の変更についてはある程度想定の範囲内で、こちらは早めに対応することを考えています。

何とか最初の関門を乗り切りましたが、これはまだ第一歩。
法学のバックグラウンドが全くない人間にとって学ぶことは莫大です。

ちなみに私の研究テーマは、投資運用業者(特に投資信託委託会社)の忠実義務
運用会社の忠実義務とは何か、ということを他の契約形態や海外の考え方などと比較して明らかにしていきたいと考えています。
その結果として、運用会社・運用業界がより投資家の信頼を得られるように貢献していけたらと思っています。

これから当分の間、与えられた課題はなく、自主的に勉強を行っていくことになります。
一人で大海原に飛び出した気分ですが、大きな海図を読めるよう、また、書けるように頑張っていきたいと思います。

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北条氏康スーツ

プロ野球選手やアイドル、アニメのキャラクターなど、人気者に関連するグッズはたくさんありますが、やはり好きな人やものに関係するものは身につけたり身近なところに置いておきたいと思うのがファン心理だと思います。

かくいう私も結構好きなものにハマる性格で、好きなアニメやプロ野球選手のグッズを買うこともしばしばありました(オタクというなかれ、ファン心理です)。

さて、私の最も好きな歴史上の人物に北条氏康という人物がいます。
戦国大名北条氏の三代目当主で、武田信玄や上杉謙信のライバルとして知られますが、私が歴史好きになるきっかけとなった人物でもあります。
となれば、彼に関連するものがほしくなるというのがファン心理というものです。

そんな北条氏康好きの前に現れたグッズが、北条氏康スーツ
スーツであれば、仕事中違和感なくずっと身につけていることになるので、ある意味最高のグッズといえるかもしれません。

ということで、北条氏康スーツを作ってみました。

まずは全体。

生地は格子柄のものにしました。
これは、北条家独自の築城技術である障子堀や畝堀をイメージしたものです。

畝堀とは堀を格子状に分割したもので、攻め手の勢いを緩和する仕組みです(下の写真は山中城の畝堀)。

スラックスには、小田原・箱根特産の寄木細工のボタンがついています。
ちなみに小田原は北条氏の本拠地です。

ジャケットの内側にも寄木細工のボタンがついています。

ジャケットにはこのスーツの特徴でもある北条氏の虎朱印「禄寿応穏」の織ネーム。
禄寿応穏とは、民衆の財産と生命が穏やかであるように、という意味で、以下に北条氏が善政を心掛けていたかが伺えます。
ちなみに、虎朱印とは代々の北条氏当主が文書に押印した印鑑で、現在でいうと代表取締役印といったところでしょうか。

ジャケットの中はこんな感じ。
ちなみにポケットのカラフルな部分は、北条氏康を支えた五色備をイメージしています。
黄備を率いた北条綱成は河越の戦いをはじめとして、氏康の覇業を支えた勇将として特に知られています。
また、上下のラインは、よく北条氏のイメージとして使われる黄緑色を使用しました。

袖口にはやはり五色備をイメージした五色のボタン。
袖口のリボンも五色備のイメージです。

大事なプレゼンが迫っていたので、このタイミングでスーツを受け取ることができてよかったです。
プレゼンのときはこのスーツを着て、氏康公のお力添えをいただいて無事に乗り切りたいところです。

今のところ、北条氏康のほかに織田信長、石田三成、真田幸村、島津義弘のものがありますので、ご関心のある方は是非作ってみてはいかがでしょうか。

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大戦国史 最強の武将は誰か?

歴史が好きな人なら誰しも考えるであろう、一つの問い。

最強の武将は誰か?

世界史上最強は?中国史で最強は?三国志で最強は?そして、戦国時代で最強は?

決して答えの出ない問いであることはわかっていても、つい考えてしまいます。
インターネット上でも激論が繰り広げられています。

最近はどちらかというと史実を掘り下げる本を読むことが多く、歴史談議に花を咲かせるような話題を考えることは少ないのですが、たまたま「最強の戦国武将は誰か?」という歴史談議に花を咲かせた書籍(「大戦国史 最強の武将は誰か?」(文藝春秋編))を見かけたので読んでみました。

この書籍の面白いところは、戦国時代の専門家だけではなく、近現代史や世界史に詳しい方も加わって「最強の武将は誰か?」という話を語り合っているところです。
特に昭和史の研究で有名な半藤一利氏や、世界史に造詣の深い出口治明氏(現ライフネット生命会長)が対談に登場されていることに興味をひかれました。

半藤氏は戦国時代の研究で有名な小和田哲男先生と対談されているのですが、目をキラキラさせながら(?)武田信玄と上杉謙信でどちらが強いのか、というのを離されていて面白かったです。ちなみに半藤氏が上杉派、小和田先生が武田派でした。

出口氏は「信長・秀吉・家康の天下観・世界観」というテーマで話されていました。
対談の中では、案外秀吉が「全部信長の物まねでしょ」、といった感じで評価されていなくて、秀吉かわいそう…なんて思っていました(笑)。
出口氏は、世界史の流れの中で日本史・戦国時代を考える重要性を示唆されていて、さすがでした。
また、出口氏の対談の中では土木の専門家の方(竹村幸太郎元国道交通省河川局長)もいらっしゃって、土木の観点から三人の統治政策を解説されていて、目から鱗が落ちる思いでした。
特に、「家康は主要水脈には幕府と御三家で抑えた」、「川や山で諸大名の領地を区切ったことで領域内での開発を促進した」という指摘はなるほど、という思いでした。

対談のほか、有名武将たちの業績などについても専門家の方が寄稿されていて、それぞれの方の見方が興味深かったです。
このうち、北条氏康については黒田基樹先生が執筆されていますが、そのすべてが税制・行政改革及びそれが近世に与えた影響についてで、河越の戦いをはじめとする武将としての活躍については割愛されており、北条氏康、あるいは北条氏の歴史研究における特殊性が見えてきます。
というのも、後北条氏や内政に力を入れていただけでなく、文書による官僚制度が整備されていたうえ、北条氏の領土がそのまま徳川政権に引き継がれていることから史料の保存状況が良好で、学術的な研究という点からは北条氏が最も先行しているそうで、それゆえに北条氏康についても武将としての観点以外にも論じられることが多いように感じます。

本書では氏康に限らず、信玄や謙信、毛利元就といった最強の武将候補についてもその内政面の業績が語られており、いろんな観点から戦国武将・大名を見ることができました。
また、当時の状況として、「知」の集積が寺院や大都市といった「点」に集中しており、それゆえにそこで学ぶことができた今川義元や徳川家康の優位性に言及されていて、興味深い論考でした。

また、本書では随所に「大河ドラマ」という言葉が出てきて、日本人の歴史好き・歴史人物観に大河ドラマが大きな役割を与えていることが改めてわかりました(笑)

専門的な書籍もいいですが、時には純粋な歴史好きとして、このような夢のあるテーマに花を咲かせるのも楽しいものです。

ちなみに私の考える最強の武将は…いや、やっぱり一番は決められませんね。

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採用基準

MBA学生からの人気の高い戦略コンサルティング会社・マッキンゼーでコンサルタント、採用マネージャーとして活躍された伊賀泰代氏の「採用基準」を今更ながら読みました。
2012年発行の書籍で、当時は非常に評判だったように記憶していますが、その時は読む機会がなかったのですが、今般たまたま図書館で見かけて読んでみることにしました。

本書のタイトルから採用ないし就職活動に焦点を当てているように思えますが、その内容の大半は「リーダーシップ」についてです。
それは、マッキンゼーという会社が、その採用の可否の判断、あるいは採用後の育成においてリーダーシップを重視していることによります。

最初の方はマッキンゼーの採用基準とよくある誤解について書かれていたので、「コンサル会社ではこういう人材を求めているのか」「●●というよく聞く話は実は違うんだ」と、コンサル業界の話として読んでいましたが、「マッキンゼーはリーダーシップを重視している」という点から、リーダーシップはなぜ重要なのか、なぜ日本では重視されてこなかったのか、などのリーダーシップ論に入ります。
本書の大半がリーダーシップの話になっていることからも、タイトルとは異なり、本書のポイントがリーダーシップであることは明らかです。

では、なぜリーダーシップが重要なのか。
著者は、リーダー一人だけがリーダーシップを持っている(とっている)組織と、全員がリーダーシップを持っている(とっている)組織を比較しています。
そのうえで、前者においてはリーダー以外のメンバーが「指示待ち」人間になったり、全体のことを考えず自分の職務に専念してしまう一方、後者においては一人一人が全体のことを考え、自分なりに解決策を持ち、自律的に動くため、生産性が高いと指摘しています。

また、日本においてはリーダーシップが「管理者」や「調整役」といった役割と混同されがちであることが、また組織内において、「和」が重視される傾向にあることがリーダーシップを求められにくい背景にあるとしています。
さらに(あるいはそのような背景があるため)、職責上もリーダーシップが求められる管理職の登用の基準が年功序列であったり、プレイヤーとしての評価となっています。
つまり、リーダーシップが評価されないままにリーダーシップが求められるポジションに登用されていることになります。
逆にマッキンゼーではリーダーシップを評価したうえで、リーダーシップが求められるポジションに登用されるとのことです。

このほか、分権・共助の動きが進む中で、「リーダーシップの総量」の増加が求められていること、リーダーシップ自体はカリスマのような先天的なものではなく、学ぶこともできるし、実際にマッキンゼーに入社した方はリーダーシップを高めていき、リーダーシップを「会社から求められるもの」から「自分のためのもの」に昇華させていくそうです。

本書では、リーダーとして必要なこととして、
1.目標を掲げる
2.先頭を走る
3.決める
4.伝える
ということを掲げています。
どれも組織をまとめ、前に進んでいくために必要なことであるのを改めて考えさせられます。

著者も指摘する通り、リーダーシップとは管理職やチームのまとめ役だけに求められるものではなく、すべての人に求められるスキルで、リーダーシップを持つことで自分の視点や世界も違ったものになってくると思います。

自分自身、まだ管理職というポジションではありませんが、組織の一員としてパフォーマンスを高めるべく、また自分が将来リーダーのポジションに就いたときにきちんとリーダーシップを発揮していくためにも、リーダーシップ(特に上記の4つのポイント)について意識して仕事をしていかなくてはと感じさせられました。

 

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非産運用

NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の導入に伴い、資産運用への注目度が高まっており、資産運用の中核となる投資信託を運用する資産運用会社(投資信託委託会社)についても、その社会的な役割がより大きくなっているところです。

社会的な役割が大きくなるということは、その責任も大きくなるということですが、そのような潮流を受けて、現在資産運用業界ではフィデューシャリー・デューティ(Fiduciary Duty:受託者責任)を掲げて、より顧客満足度の高い資産運用サービスの提供を行う動きが広がっています。
個人的には、受託者責任とは信託制度における概念であり、「お客様第一主義」といった概念とは異なるように思うのですが、良くも悪くも言葉の意味は変わるので、業務上は割り切って使っています。

このように、(金融庁の影響を受けながらも)資産運用業界がよりよいサービスの提供を目指す中、森金融庁長官による業界の注目を集める講演が行われました。

講演の中で、森長官は日本の資産運用業界の問題点について舌鋒鋭く指摘されています。
曰く、「積立NISAの基準を満たす(低コストで長期投資に適した)投資信託はわずかしかない」、「日系運用会社は販売会社(銀行・証券会社)の系列会社で、販売会社の都合によって商品を組成している」、「商品組成・運用・販売といった一連の流れにおいて、必ずしも顧客本位となっていない」など。

金融庁長官の指摘を待つまでもなく、これらの批判は多くの識者から受けてきましたし、今後我が国の資産運用業界が発展していくために解決していく必要がある課題だと思います。

では、資産運用会社はこのような課題についてどのように向き合っていく必要があるのでしょうか。
そのヒントを得るべく、森金融庁長官の考えを考察した書籍を読んでみました。

非産運用。字のごとく、資産運用業が実際には顧客に十分なリターンを提供していない、つまり投資家の資産をきちんと増やせていないという問題意識が根底にあります。

本書によると、森長官が資産運用改革に関心を持ち始めたのはニューヨーク勤務から帰国した後のことだそうです。
ニューヨーク駐在の間、多くの要人と積極的に面談を持ち、ネットワークと最新の知見の獲得に努めたそうです。
自分もオランダに留学していた時にそのようなことをしたいと思っていましたが、時間も能力も足りず十分にできなかったので、その熱意と能力は本当にすごいし、素晴らしいと思いました。

森氏が特に関心を持ったのは大手運用会社よりむしろヘッジファンドの運用担当者だったようです。というのも大手運用会社よりもヘッジファンドの方がより運用に命を懸けていると感じたからだそうです。命を懸けているということは、インセンティブもあるでしょうが、それだけ運用責任を果たそうとしているからだと考えると、その関心は今につながっているのかもしれません。

金融庁が資産運用業界の発展の環境整備を進めるにつれ、海外の資産運用会社が日本のマーケットに関心を強めているようです。
業界としてはレベルの高い競合が多いほど発展できますし、個人的にも働く選択肢が増えて、非常に望ましい傾向であると感じています。
実際、日系と外資系の運用会社両方で勤務してきましたが、外資系の方が優れている点も多く、そのような競合他社がシェアを拡大すれば、当然日系運用会社も改善を迫られますから、海外からの参入は業界のレベルの底上げにつながると期待しています。

また、資産運用業のあり方を考えるには、販売会社との関係は避けては通れません。
資産運用の中核となるの金融商品は投資信託と言っていいと思いますが、その投資信託は基本的には販売網と人員を有する銀行や証券会社によって販売されているからです。
投資信託会社の中には自社で運用から販売まで行う会社もありますが、基本的にはインターネットによる販売に限られ、投資家の関心を惹きつけるのが難しく、ファンドの規模が拡大しにくいのが実態です(さわかみファンドのような成功例もありますが)。
また、投資信託を販売するためには規制も厳しく、システム投資も小さくないので、収益性・効率性の観点からも販売会社に依存せざるを得ないということもいえます。

販売会社は自らどういう投資信託をどの程度、誰に売るという販売計画を立てて実行しますので、そこに投信会社が介入する余地はありません。
投信会社が「このような投資家のためにこのような商品を作りました」といっても、販売会社が別の認識でいれば、投信会社の意図とは異なった投資家に販売されるかもしれません。
また、投信会社が「この商品はこういう属性の人にしか売らないでください」というのは越権行為でもありますし、法令上も問題があるかもしれません。

だからこそ、販売会社がどのように投資信託をはじめとする金融商品を投資家に提供するか、ということが我が国における資産運用のキモではないかと思います。

どのようにすれば投資家・販売会社・運用会社が同じ方向を向いてwin-win-winの関係を築くことができるのか、というのは簡単な問いではないと思いますが、この課題を乗り越えなければ、確かに資産運用業界は限られたパイを奪い合うだけになってしまうのかもしれません。
資産運用を行うなら、保険や不動産などの方法もありますし(それぞれ金融庁から問題視されている点もありますが)、昨今ではFintechなどの参入もあり、彼らの動向次第では資産運用の主役の座すら奪われてしまうかもしれません。
彼らが投資家のために優れたサービスを提供し、競争の末に敗れるのならそれはそれで仕方のないことなのかもしれませんが、投資信託の力を信じている自分としては、そのようなことにはなってほしくはありません。

一つの方向性としては、販売インセンティブに収益を依存しないIFA・FPのような存在が身近になって、投資家がより自分の投資目的や財産の状況にあったポートフォリオを組むことができればいいのではないかと思います(本書では楽天証券がIFAと連携したサービスを推進していることが紹介されています)。
そのような中で新規ファンドの設定の頻度が抑えられ、既存ファンドごとの規模が大きくなれば、運用効率も上がるとともにオペレーションコストも低下するため、運用会社としてもより投資家の資産運用に貢献しやすくなると考えています。

ちなみに、本書によると米国では日本に比べ販売手数料も信託報酬も安価な傾向にあるそうで、この点は日本の資産運用業界としても見習う点もあるでしょう。
ただし、信託報酬については、海外の運用会社に運用を委託するために高めになっているという事情もあり、これは日本の運用会社の運用力・運用リソースを相当強化しなければこの差は埋まらないと思います。

また、興味深かったのが、海外の金融グループでは、あえてグループ内から資産運用会社を切り離す動きがあるということです。
資産運用業の受託者責任と金融グループ内の利害関係が相反する可能性があるということもありますが、販売会社としては一流なのに自グループに弱い運用会社を擁して、その商品を販売することは販売会社としての価値を毀損するという考え方があるようで、目から鱗でした。

資産運用業が成長産業であることもあり、日本の金融グループはむしろグループ内に運用会社を抱えようとする動きが強く、それも経営戦略として理解できるのですが、海外の動きとのコントラストが興味深いです。

他に興味深い論点としてパッシブ運用のあり方があります。
パッシブ運用とは、TOPIXや日経225、MSCIなどの指数に連動する投資成果を目指した運用のことで、一般的には運用者に裁量権はほとんどないといわれています。
パッシブ運用は独自の企業調査や投資判断を必要としないためコストが低く、かつ分散投資ができること、さらには平均するとアクティブ運用よりパフォーマンスが高い(この点は異論もあるようですが)ことから中長期の資産形成に適しているとされており、資産運用が重視される中で大きな役割を担うことが期待されています。
しかし、上記のとおり裁量権があまりないため、(トラッキングエラーの改善などの可能性はあるとはいえ)パッシブ運用の改善によって受益者に貢献するということはあまり考えたことがありませんでした。
しかし、使用する指数自体に質の良し悪しがあるとすれば、その指数自体を改善・変更することによってパッシブ運用の質を向上させることは可能です。
実際に東証はTOPIXより高いパフォーマンスが期待できる指数を開発しており、最近注目されている「JPX日経インデックス400」はその最たるものでしょう。
既に存在しているインデックスファンドの連動指数を変更するのは難しいにせよ、より高いパフォーマンスが期待できる指数に連動する商品を提供することで、パッシブ運用でも投資家により高いパフォーマンスを提供できるというのは、考えてみれば当然ですが、盲点でしたので良い気付きになりました。

他にも米国の大手運用会社・バンガードの取り組みなども詳細に紹介されていて、非常に興味深かったです。
バンガードはオペレーションもガバナンスも運用会社としては特殊な特徴を持ち、かねてよりその実態に関心があったので、大変参考になりました。

本書では海外の年金改革について紹介されていますが、年金改革の結果として自分で資産運用を行うようになることにより、投資経験がなかった人が資産運用に関心を持ち、資産運用について積極的に考えるようになることが我が国でも期待される中で、その信頼を勝ち得るために資産運用会社としてどのように振る舞うべきかということをよく考えなければいけないということを改めて感じさせられました。

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行蔵は我に存す

最近、ある少し変わったことをしたいと思って、知人にそんな話をしたら、「非現実的すぎる」と一笑に付されました。

確かに大変なことではありますが、何とか実現できる方法はないかと探してみると、これならいけるかも?、という方法がありました。
それを試したわけではないですが、「窮すれば通ず」とはよく言ったものだと思いました。

そして、同時に思ったのは、「大抵のことは方法を探ればなんとかなるのだから、自分のしたいことは自分で考えてやり抜いた方がよい」ということでした。

幕末の偉人・勝海舟の言葉に「行蔵は我に存す、毀誉は人の主張」というのがあります。
「行動は自分が行うもの、評価は人が行うもの」という趣旨で、幕臣ながら明治政府で活躍していることを福沢諭吉が批判したことに対する反応として知られています。

彼の言う通り、自分の行動に他人は様々な評価を加えますが、その行動の決断を行うのも、その結果を背負うのもすべて自分です。
他人の言葉に影響されても、その他人は自分の行動の結果を背負うことはありません(指示・命令などは除きますが)。

そうであれば、他人の評価に右往左往して自分の行動を制限してしまうのは割に合わないというようにも思えます。
だからこそ、自分のしたいことがあれば、他人の評価やアドバイスにとらわれず、挑戦してみればよいと思います。

冒頭に述べた通り、難しそうに思えても、大抵のことには乗り越えるための方法があります。あるいはその方法を作り出すことができると思います。

例えば、私がオランダに留学した時も、周りはほとんど反対しましたし、資金的にも困難が伴っていました。
実際、留学してからも、帰国してからも散々苦労しましたし、その意味では周囲の反対は間違ってはいなかったかもしれません。

それでも、最終的には自分の意思と努力でそのような困難を乗り切り、今はちゃんと生きています。
大多数の人が反対することでも、案外うまくいくことは多いです。
そもそも人と違うことをしようとする場合、多くの人はその知識や経験がない状態でアドバイスや批評を行います。そのような意見にどの程度の正確さや信頼性があるでしょうか。
もちろん、その知識や経験がある方のアドバイスは傾聴に値すると思いますが、そもそもそのような経験がある方は、「どうやったらできるか」という建設的なアドバイスをくれると思います。

もちろん、何かをするにあたって人にアドバイスを求めることは大事です。
しかし、それは自分の意思決定の精度・確度をより高めるためのものであるべきで、いい意見であってもなくても、それに盲従するのは本末転倒です。
そして、否定的なアドバイスをもらったとしても、それを踏まえてポジティブな方向に動くための参考にすることも可能だと思います。

といって、やりたいことはなんでも・いつでもやるべき、と言いたいわけでもありません。自分なりに勝算を考え、失敗した時のプランBは準備しておくべきです。
それができたなら、(他人に迷惑をかけない限り)外野が何を言おうが関係ありません。
やりたいことはやりましょう。

行蔵は我に存す、毀誉は人の主張、です。
私も自分のやりたいことは、人に迷惑をかけないように気を付けて、リスクをしっかり管理しながら、どんどんやっていきたいと思っています。

※この記事の内容自体も、「他人の意見」にすぎないのでご注意ください(笑)

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