試験結果(2)

試験ラッシュを乗り越えて

先日の記事でも書いた通り、10月末に東洋史概論・美術史概論・平安文学論の3科目の単位修得試験を受けました。

複数科目を受けると土日がほぼ潰れてしまうのが残念ですが、アウトプット自体も勉強になるし、回答用紙を郵送し終えたあとの解放感も好きなのでよしとします。
業務上受験が必要でない資格試験とかも勉強したり受験したりしているときにどうしてわざわざこんなことをしているのだろうと思うこともありますが、試験が終わった後の解放感も理由の一つかもしれません。

まだいくつか履修科目が残っていますが、その数だけ解放感があると思うと楽しみです。

 

試験結果

さて、試験結果ですが次のようになりました。

とびぬけた点数はありませんが、それなりの成績で単位を修得することができました。
特に美術史概論は苦手な分野だったのできちんと点数が出てよかったです。まじめにテキストを読んでいると身につく、というのは今後の学習でも大事にしたい教訓です(それだけにテキスト選びが重要になりますが)。

 

現状と今後の学習

今回の試験結果を受けて、現在の単位修得状況は次のようになっています。

概論系科目(4単位):考古学概論・東洋史概論・美術史概論
各論系科目(2単位):言語伝承論・平安文学論・民俗学・観光論・文化財学講読Ⅰ
スクーリング科目(2単位):歴史地理学・文化財学演習Ⅰ・文化財学講読Ⅱ

4年時に卒業論文に取り掛かる資格が概論系科目2科目の単位修得なので、これで来年卒業論文を作成することができます。
ちなみに卒論とは言いつつ、卒論を先に仕上げその翌年以降(5年次以降)に卒業に必要な単位をそろえて卒業することもできるようです。

ただ、最近は卒論のテーマを何にしようか迷っています。
当初は後北条氏関係のテーマにしようと思っていたのですが、本業の資産運用業界でESG(環境・社会・ガバナンス)投資がメインストリームとなりつつあることや学生時代からCSR(企業の社会的責任)に関心があったこと、自分の学ぶ歴史学も社会の役に立てたいという考えから公害や災害、エコ関係も考えられないかと思っています。
特に最近磯田道史先生の「天災から日本史を読みなおす」という本を読んで歴史上の事例を学ぶことで現在においてもリスクの軽減や仕組みの改善につなげられるかもしれないと感じています。

 

 

これらのテーマを文化財という枠の中でどのように取り扱うかも考えなければならないのですが、それもまた楽しいものだと思います。
奈良大学通信は卒業論文が書きたくて入ったという人もいるみたいですが、その気持ちはよくわかりますね。

卒業論文とは別に履修科目の単位修得も忘れてはいけませんが、今は西洋史概論の学習をしています。
科目で扱う内容は古代ギリシア・ローマで、レポートはその中で好きな時期を選んで論ずることになります。
私は後期ローマ帝国について論じようとしていますが、名前や政治の展開がうまく覚えられず、まとめるのに四苦八苦しています。
美術史概論よりはやりやすいと思ったら、美術史概論の方がまだやりやすかったというオチ。。。

でも美術史概論も同様ですが、苦手な分野ほど頑張って勉強するので終わった時には以外に頭に入っているような気がします。
一応外資系企業にいるので西洋史にはなじんでおきたいし、これもプロフェッショナルへの道だと思って頑張ります(笑)

 

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美術史概論(2)_自習

知識が増えると生活の彩りも増える

先日所用で三重に行ったのですが、せっかく関西に行くのなら奈良大学でいろいろ学んでいることだし関連する場所にも行ってみようと思い、京都に足を延ばすことにしました

外国人観光客にも人気の京都を楽しむなら今のうちに行っておいた方がいいというのもありますが、それ以上に美術史概論のテキストで触れた仏像を実際に見てみようと思ったことが大きいです。

神社仏閣は好きでよく訪れるので仏像も目にはしますが、仏像自体を積極的に観察しようと思ったのは初めてのことです。
最初は単位のためとか、一応知識としては頭に入れておこうと考えて履修した美術史概論ですが、関心が薄くても能動的に学ぶとそれはそれで関心が出るもので、知識が増えると関心や好奇心を感じるポイントもその分増えて、見える景色も変わってくるものだと思いました。生活に彩りが出る、ということもできるでしょうか。

ということで、半日という短い時間でしたが奈良大学の科目の延長の個人学習(?)をご紹介したいと思います。

 

美術史概論・自習編

東寺(教王護国寺)

京都には何度か訪れたことがありますが、京都駅の北側ばかり行っていて南の方には行ったことがないので、今回は南側を動こうと考えていました。

その中で是非とも行きたかった場所の一つが東寺(教王護国寺)でした。
というのも、美術史概論のテキスト『日本仏像史』では平安時代の仏像として東寺のものが多く取り上げられていて、せっかくなのでテキストと実物を見比べてみたかったのです。あと、テキストの説明を見ながら実物を見てみたかったのもありますね。

京都には観光日前日の夜に到着する予定だったので、東寺の近くのホテルに泊まったのですが、たまたまライトアップのイベントが開催されていたので、ホテルに荷物を置いてすぐに行ってきました。

ライトアップされた東寺の五重塔

調べてみると京都だけでも複数のお寺でライトアップのイベントが開かれているようでした。紅葉の季節ですから、どのお寺・神社でも幻想的な景色が広がっていそうです。
私が見た景色も写真よりもっときれいだったので、もう少しうまく撮影したかったです(汗)

それはさておき、翌朝改めて仏像を拝見しに東寺へ。

五重塔や御影堂もよかったですが、お目当ては講堂の仏像群です。

東寺の行動と美術史概論のテキスト。テキストのおかげで有意義な学びに。

講堂の仏像はいくつかテキストの中で説明があったので、テキストの写真や説明と見比べながら実物を観察しました。
テキストの写真と実物では印象が異なりますし、テキストの説明も実物を見るとそうかなあ?と必ずしも腹落ちしなかったのですが、これも実物を見たことによる学び・収穫だと思います。
もちろんテキストの説明を否定するつもりはないのですが、美術という分野では自分で何かしら感じることも大事でしょうし。

萬福寺

今回の京都観光で行きたかった場所は東寺と宇治の平等院鳳凰堂でした。
そのため、東寺から京都駅に戻り、JR奈良線で宇治に向かったのですが、途中で黄檗駅という駅があることに気づきました。
黄檗駅というと、江戸時代に広まったとされる禅宗の黄檗宗と関係があるのかと思い調べてみると、黄檗宗の総本山の萬福寺があるということなので途中下車して伺うことにしました。

萬福寺総門

萬福寺の魚梆

萬福寺にもテキストで紹介されている仏像がありました。十八羅漢の蘇頻陀尊者という仏像で、テキストでは生々しい容貌・ねちっこい衣文表現という説明がされていましたが、確かに濃い表情で衣服もひだが多い印象を受けました。そしてそれは中国由来の黄檗宗独特の表現で一般的にはならなかったそうですが、確かに他の仏像とは全然違う感じでした。
もっとも、日本の仏像も昔から中国の影響を受けているので、黄檗宗のものが当然に異質な存在になったわけではなく、長い時間を経て日本でも日本独自の仏像のあり方が確立していたというだけなのでしょう(テキストでも奈良時代においてすでに唐風は盲目的な追従の対象にはならなかったことが指摘されています)。

また、萬福寺の魚梆(ぎょほう)も名物のようで御朱印にもなっていました。
たたいて時間を知らせるものらしく、ちょうど僧侶の方が叩いているのを見かけました。

平等院鳳凰堂

萬福寺の後は本命の平等院鳳凰堂へ。
宇治駅を降りて少し歩くのですが、その途中にはお茶のお店がズラリ。さすが宇治。

そしてお目当ての平等院鳳凰堂。思ったよりは大きくありませんでしたが、池の前に悠然と佇む様はまさに世界遺産。ただでさえ美しいのに紅葉に彩られているので、ずっと見ていても飽きません。

平等院鳳凰堂。正面から見たら10円玉の景色に。

鳳凰堂の中に入るのは待ち時間が長かったのでパスしましたが、鳳凰堂に保管されている品々は見学可能でした。テキストでは雲中供養菩薩という仏像群(たくさんあります)のいくつかが紹介されていて、それと見比べながら見ていました。雲中供養菩薩はその名のとおり雲に乗っている菩薩が色んな楽器を弾いたりしている仏像なのですが、ユニークなので興味深かったです。記念にポストカードを買ってしまいました(笑)

伏見稲荷大社

仏像見学という意味ではこれで終わりなのですが、京都の南側というと千本鳥居で有名な伏見稲荷大社も外せません。

こちらも奈良線が最寄り駅なので、宇治から京都駅に帰る途中に寄りました。

千本鳥居。迫力がすごい…

千本鳥居はその名のとおり鳥居がひたすら続く鳥居のトンネルですが、之だけ鳥居が並んでいると圧がすごいです。

 

言語伝承論・自習編

JR奈良線で宇治に向かっていると、木幡駅という駅があるのに気づきました。
その駅を見て思い出したのが言語伝承論のテキスト。というのも、取り上げられている歌に木幡を詠んでいるものがあり、著者が木幡駅の駅名標の写真を載せているのが印象に残っていました。
ちなみに駅名標という言葉を今調べて初めて知りました(笑)。

せっかくなので、自分でも一枚撮影。

言語伝承論のテキストにも載っていたJR奈良線の木幡駅の駅名標。

ちなみに取り上げられていた歌は下記のものです。

青旗の 木幡の上を 通ふとは 目には見えども 直に逢はぬかも 
(万葉集 巻二の一四八)

この歌は天智天皇の皇后・倭太后が天皇の危篤にあたって詠んだ歌で、天皇の魂が木幡を通っているのは見えるのに物理的には会えないという辛い感情が表されているとされています。

ここでなぜ木幡という地名が出たのかというと、木幡は交通の要衝で太后の下に通う天智天皇の魂を表現するに相応しいからという理由があるそうです。冒頭の青旗は語呂として木幡と合うということで用いられています。

言語伝承論も勉強する前はそれほど関心を持っていませんでしたが、勉強しておいてよかったと思いました。どこで何がつながるかわからないものですね。

 

平安文学論・自習編

宇治といえば宇治茶のほかに源氏物語の舞台となったことでも知られています。
源氏物語の終盤の「宇治十帖」が宇治を舞台にしていて、宇治川付近では源氏物語のモニュメントがたくさんありますし、近くには源氏物語ミュージアムもありました。

源氏物語ミュージアムは時間の関係で行けなかったのですが、源氏物語のモニュメントを見ながら平安文学論で源氏物語の婚姻関係も勉強したことを思い出しました。
ちなみに試験も源氏物語のヒロイン・紫上の法的なステータスについて述べるというもので、なぜ紫上は妻ではなく妾であるのかを論じました(試験は無事合格しました)。

宇治十帖をモチーフにしたモニュメント。

平安文学論では古典そのものを読み込んだわけではなく、源氏物語もしっかり読んだことがないのでこれを平安文学論の自習といっていいのかわかりませんが、まあ少しでも関心を持てたということでヨシ!

 

学びは旅行を楽しくする

ということで、駆け足で京都の南側を巡ってきました。

奈良大学で学んでまだ半年程度ですが、それでも京都の旅行を有意義にした学びが多かったことを実感しています。
特に美術史概論・言語伝承論・平安文学論と履修前は関心が薄かった科目の学びが貢献していて、そのような分野を学ぶことができたということが特に収穫のようにも思えます。

そして、学んで知識をつけると旅行が楽しくなるということも改めて感じました。
これは歴史や芸術に限らずどの分野にも言えることだと思いますので、これからもアンテナを高く張って旅行のスパイスにできるように意識していこうと思います。

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試験ラッシュ

試験漬けの週末

試験ラッシュ前史(?)

コツコツと続けている奈良大学の勉強ですが、今週末は東洋史概論、平安文学論、美術史概論と3科目の試験を詰め込みました。
美術史概論はもう少し先の予定でしたが、レポートが予想外に早く帰ってきてギリギリこのタイミングの受験を申し込むことができるタイミングだったので速達で・・・受験を申請しました。

というのも奈良大学通信教育部の試験はレポートが返却され合格した後に、郵送で単位習得試験の受験を申し込む必要があります。レポートはメールで提出できるのに受験申請は郵送というのは違和感がありますが、何か事情があるのでしょうか。
可能であればこちらもメールで申請できたらありがたいのですが。

ともあれ、無事に3科目受験と相成り、土曜日に東洋史概論・平安文学論、日曜日に美術史概論を受験しました。
今回も在宅試験のため、各試験時間に発表される設題番号に対応する設題について解答用紙に回答してその日のうちにポストに投函するという形でした。
恐らく消印の日付で当日の投函か否かを判断していると思いますが、私は小心者なので最寄りの郵便局の窓口(ゆうゆう窓口)で郵送しています。

 

怒涛の試験ラッシュ

試験に回答するためには、当然ですが試験問題に対して回答を考えた上で回答用紙に書き写す必要があります。
1科目あたりの文字数が決まっているわけではないですが、A3の回答用紙2/3以上と考えると少なくとも1,000字は欲しいですし、1,200~1400字程度が妥当な量だと感じています。多すぎても採点が大変でしょうし。

したがって最初の壁は回答を考えること。幸い在宅試験なので設題州の問題すべての回答を事前に考えて覚えておく必要はなく、試験開始後に回答を考えることができます。
10問分回答を考えるのもそれを覚えるのも想像を絶する苦労ですが、それがないのは助かります。ただ、本当に学んだ内容を身に着けるならすべての問題の回答を考える方がいいと思います。アウトプットは知識の定着にとても役立ちますので。

ただ、テキストをきちんと読み込んでレポートを提出していれば回答を考えること自体はそれほど難しくないとも思います。どの問題であってもだいたいこんな感じの回答をすればよく、そのためにはテキストのどこを確認すればいいのかが容易につかめるようにになっています。

しかし、その回答を回答用紙に写すのは頭を使わない代わりに結構な重労働です。最近は手で文字を書くことがほとんどなく、短時間で1,200文字、複数科目だと2,000-3,000字といった量を書くのは結構疲れます。
特に難しい字が出てきた場合はどんな字か確認しながら丁寧に書かないといけないので気を使います。廬舎那仏るしゃなぶつ坐像(東大寺の大仏など)の「廬」とか、Wordの字をかなり拡大して確認しました(笑)
そして手書きで書くのは思ったより時間がかかります。字がうまく書けないと何度も消しては書き、なんてこともあります。

土曜日はゆうゆう窓口が18時まで開いているのでまだ余裕がありますが、日曜日は15時までなので窓口で出そうと思うと結構急ぐ必要があります。2科目だと十分に回答を考えるのは難しいかもしれません。

そのようなことも考え土曜日に2科目、日曜日に1科目としたのですが、おかげでそれぞれ無事に窓口で差し出すことができました。
ついでに本日はそのまま投票もできてよかったです。

 

解放感がたまらない

週末の日中のほとんどを使いましたが、そのおかげで無事に3科目の試験を終えることができました。結果はともかく、試験終了後の解放感はいいものです。

一仕事終わったら、やっぱりお酒です。投票もしたので二仕事?

ということで、レポートで苦労した美術史概論のテキストを肴に酒盛りです。

ビールの魔力にはかなわない

美術史概論にはてこずりましたが、おかげで得たものもありました。
正直、仏像大好き(はーと)みたいな感じになったわけではないですが、各時代の仏像がどのような背景で生まれたのか、仏像のどの点が見どころなのかということが少しわかったような気がします。
美術なので「考えるな、感じろ」の方が楽しめるかもしれませんが、私のような歓声の鈍い人間には「感じるな、考えろ(理解しろ)」というアプローチも美術に触れるために有効な気がしました。
今ではこのテキストを読んだのもいい思い出です。
この辺りについてもいずれ記事にしたいです。

ちなみにビールを飲もうと思ったのは、先日プレイしていたゲームで「仕事終わりには生ビール」的な展開があったからでした。
どんな世界でも「まずはビール」なんでしょうか。

 

酒好きの社会人には共感しかない解放感(笑)(『閃の軌跡Ⅲ』©Nihon Falcom Corporation)

この直前が「ぷっはあああー!」なの、わかりみしかありません。
学生の時はあまりビールの良さがわかりませんでしたが社会人になるとたまらなくなるの、何なんでしょうね?
仕事にせよ試験にせよ、この一杯、この解放感のために頑張っているという感がなくもなく、やはり人生ある程度の負荷は必要なんだなと思ったりもします。

とりあえず試験が終わりブログも書いたので、これから週末最後の時間でがっつり解放感に浸ろうと思います。

 

ぷっはあああー!

 

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公認会計士試験科目免除通知

博士号の使い道

学位だけで変わることは少ない

先日、長年の勉強の成果として博士号(経営法)を取得することができましたが、あまり有効活用できているとは言い難いのが現状です(一応ご縁で面白い機会をいただいたので少しは活用できています)。
もちろん、研究者と異なりすぐに博士号がキャリアや仕事を劇的に変えてくれることは想定していませんが、せっかく取得したので何かしら活かしていきたいと思います。

ちなみに博士号を取ったら学会に入ってたまには論文を書いてみたりして、なんて妄想はしていましたが、どの学会に入るべきか、入会するための条件(会員の推薦など)をどのようにクリアするかなどを考えているうちに時間だけが過ぎています。。。

ともあれ、学会に入るにせよ研究会などに参加するにせよ、自分からアクションを起こさないと何も変わらないというのは事実だと思います。逆にうまく足掛かりを得られれば自分のキャリアにもいい影響を与えそうなので今後も検討していきます。

 

学位で得られる資格試験のアドバンテージ

大卒の就職活動などイベントとしての学位取得を除くと学位自体が自動的にもたらす変化は多くないと思いますが、資格試験については学位の取得自体が有利に働くことがあります。

学位取得(大学の卒業など)が受験資格になっている資格はもちろんですが、一定の学位の取得によって資格試験の一部が免除されるケースもあります。

例えば博士号取得者は国会議員政策担当秘書資格試験を経ずして採用審査認定が受けられますし(口述の審査はあるようですが)、税理士試験でも一定の学位を取得している場合は科目免除があります。

学位と国家資格試験の関係については文部科学省がまとめてくれていますので参考になります。

特にこれらの国家資格はキャリア形成上大きな影響を及ぼしうるもので、可能であればせっかく取得した学位のアドバンテージを活かすのもありだと思います。

 

公認会計士試験を考えてみた

公認会計士試験と博士号

では、博士(経営法)は国家資格取得の上でどのようなアドバンテージがあるかと考えてみると、前述の国会議員政策担当秘書の採用のほか、最難関国家資格の一つとして知られる公認会計士試験でも有利になりそうです。

公認会計士試験は短答式と論文式という二段階の試験で構成されていますが、商学または法律学に属する科目による研究で博士号を取得している場合、短答式試験全てと論文式試験の一部科目が免除になります(公認会計士法第9条第1項第3号)。
法律学の場合、論文式試験の必須科目である企業法と選択科目である民法が免除されます。したがって受験科目は会計学(財務会計論・管理会計論)、監査論、租税法のみということになります。
ちなみに商学系の博士の場合、短答式試験に加え、一番ボリュームのある会計学と選択科目の経営学が免除されることになり、非常に有利になります。

なお、博士号を持っているから自動的に免除されるわけではなく、事前に公認会計士・監査審査会に博士論文等を提出して科目免除の審査を受ける必要があります。

 

免除申請の結果

前述のとおり、科目免除を受けるためには事前に科目免除の申請をしておく必要があるので、試しに免除申請をしてみました。
公認会計士試験において科目免除が設けられている趣旨は、必要な学識を確実に持っている者に対して試験でその能力を図る必要がないというものであり(公認会計士・監査審査会ウェブサイトより)、免除の可否もその趣旨に沿って決定されます。
そのため、一応法律系の博士号とはいえ免除されるかどうかは実際に試してみないとわからないということになります。

結果的には担当者の方から追加で簡単な質問を受けましたが、大きなトラブルはなく約1か月後に免除通知がありました。

免除される科目は短答式試験の全4科目、論文式試験はの企業法と民法。法律学の博士号取得者としての免除になりました。
ちなみに司法試験合格者も同じ内容の科目免除が受けられます(その場合も事前の免除申請が必要)。
公認会計士試験の予備校では司法試験の科目免除者向けのコースが設定されているところもあり、そのコースでは若干費用が安くなるのでその点もメリットです(未確認ですが博士号取得者でも履修可能だと思います)。

現時点では公認会計士試験を受験するとは決めていないのですが、試験を受けると決めるときの後押しにはなってくれそうです。

 

公認会計士試験とコンプライアンスのキャリア

いくら科目免除があるとはいえ公認会計士試験が最難関試験であることに変わりはなく、受験する場合費用も時間も相当かかることを覚悟しなければなりません。
そのためにも、合格することによる利益について考えておく必要があります。

公認会計士試験に受かる最大のメリットは当然公認会計士になるための道が拓けることですが、公認会計士の最大の特徴は財務書類等の監査を独占業務として行うことができることだといえます(公認会計士法第47条の2)。
それ以外にも公認会計士の知識・経験を活かすことができるキャリアは多いですが、公認会計士を目指す判断基準としては独占業務の経験が自分にプラスになるか否かだと思います。

ではアセットマネジメント業界、特にコンプライアンスの分野でどのように公認会計士の資格が活かせるか、と考えると実はあまり思い浮かばないというのが現実です。
会社や運用財産(公募投資信託の信託財産など)の財務監査を自社で行うわけではないですし、少なくともコンプライアンスの立場では個々の会計に関する判断に関わることもありません(財務経理や投信計理の場合はあるかもしれませんが)。

ただ、監査というキーワードで考えるなら内部監査はコンプライアンス業務と関係が深い分野で、公認会計士という資格が内部監査に踏み込むチャンスになるのなら、キャリア形成上も有意義かもしれません。
ただ、上場していないアセットマネジメント会社で財務報告に関する内部統制がどれほど業務上の重要性があるのかわかりませんし、それ以外の業務監査やIT監査などで公認会計士の資格が有効なのかもわかりません(内部監査だけなら業務独占ではないものの公認内部監査人という資格もあります)。
日系の上場企業に連結しているアセットマネジメント会社はまだしも、海外の会社のグループ会社だとどれだけ意味があるのかも不明です。

そう考えると、科目免除をもらったからといって公認会計士目指すぞ!とは単純には考えられないところです。

 

もう一つの壁

さらなる壁として、公認会計士になるために求められる条件である「実務経験」があります。公認会計士になるためには公認会計士試験に受かるだけではだめで、実務経験(2年以上)と実務補修というのもクリアしなければならないようです。
(実務経験に関する金融庁のQ&Aはこちら

そのうち実務補修についてはおそらく必要な機会が提供されるものと思いますが、実務経験については自分でその機会を得なければなりません。
実務経験は公認会計士・監査法人が行う監査証明の補助や会計に関連する業務を2年間行うというものですが、残念ながらこれまでの業務でそのような経験ほとんどはなく(なくはないけど認められる可能性は低そう)、今後もコンプライアンスの立場では難しそうです。
実務経験が認められる範囲は意外に広く、経理や貸付業務、資産運用業務でも認められることが多いのですが、運用会社にいても運用業務に関与した経験がないので実務経験は頭を抱えるところです。

試験に受かってから言えよ、という悩みではありますが。

副業とかで監査補助とかできればいいのですが、運用会社ということもあり秘密保持とか面倒なことも多そうですし。そもそもそんな面倒な人間の受け入れ先見つかるのか?
会社の経理業務で業務経験を積む方法もありますが、外資系運用会社は資本金が5億円未満であることも多く、コンプライアンスという立場でどこまで兼務が許されるものか、やはり悩みどころです。

 

とりあえず熟考

科目免除は認められたとはいえ公認会計士試験の難易度が高いことは変わらず、しかも自分自身簿記が苦手で経済学部時代には簿記3級どころか会計の授業の単位さえ一つも取得できないという筋金入りの会計オンチという自覚があります。

しかも公認会計士試験に合格したとしてもその後の実務経験のハードル、さらには公認会計士というステータスの活用という課題があり、頑張って試験を受けることのメリットもよくわからない(モチベーションも保ちにくい)という現実もあります。

いずれにせよ今回は公認会計士受験についての可能性を検討できたということで収穫がありました。
来年は奈良大学通信課程の卒業論文があるので公認会計士試験の勉強と並行は難しいですが、卒業論文の目途が立った時には公認会計士試験に挑戦するか否かの結論を出せているといいと思います。

そのため、今は奈良大学の歴史系の勉強と目の前の仕事にきちんと取り組んでいこうと思います。西洋史辛い。。。

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文化財学演習Ⅰ_課外活動?

ゴルフの街、白河

先日、奈良大学のスクーリング科目「文化財学演習Ⅰ」で重要文化的景観や重要伝統的建造物群保存地区について学び、その中の一つを取り上げ受講生全員が発表しました。

授業中に全員が発表したのでその内容は知っているのですが、後日全員の発表資料が成績と一緒に郵送されてきて、それを眺めながら改めて各地の重要文化的景観や重要伝統的建造物群保存地区について勉強させていただきました。

私が取り上げたのは福島県の大内宿でした。

 

文化財学演習Ⅰで報告した大内宿の資料

大内宿についてはそれまで知らなかった場所なのですが、それを選んだ理由の一つは近々福島県の白河に行く予定があり、運が良ければ実際に行ってみることができるかもしれない、という背景がありました。

単にゴルフをしに行くというだけですが、せっかく行くなら史跡も回りたいというのが歴史好きの性。
白河と言えば白河の関や白河城(小峰城)が有名ですし、足を延ばせばいわきや会津も行けそうです。

白河には新幹線で行くルートと福島空港まで空路で行くルートがありますが、今回は新幹線で新白河駅へ。
すると早速ゴルフウェア姿のキャラクターがお出迎え!
白河がゴルフ推しというのは知りませんでしたが、確かにゴルファーにとってはいい場所かも?個人的にはより首都圏に近い古河あたりの方がゴルフのイメージがありましたが。

白河市キャラクターの小峰シロさんがお出迎え

今回プレーしたのはプロの試合も行われるグランディ那須白河ゴルフクラブ。
プロがプレーするだけあって?結構難しいように感じました。自分のレベルでプレーするのは恐れ多いかもです(笑)

グランディ那須白河ゴルフクラブにて。天気には恵まれました。

かなり前から予約していたところ、直前に台風が接近して気を揉みましたが、プレー日の直前に通過してくれたので、台風一過の好天でした。
スコアも好天(好転)とはなりませんでしたが、楽しかったのでヨシ!

 

文化財学演習Ⅰ・課外活動編

いざ、大内宿へ

好天に恵まれたので、ゴルフ後には事前の計画通りレンタカーを借りて史跡巡りをすることに。
白河から太平洋側のいわき市、さらに郡山市西方の磐梯熱海に宿泊し、会津若松を通過して大内宿を訪れ、そのまま白河に戻るという福島の南東部を一周するような旅でした。

いわきや会津若松でも歴史の息吹を感じましたが、今回のお目当ては大内宿。
大内宿では自分が作った資料を見ながら回っていたので、イメージと実物の違いを考えることができました。授業では制約がありましたが、やはり資料を作るなら実物を見ないといいものはできないということを感じました。
それは卒業論文にもいえるでしょうし、本業(?)であるアセットマネジメントに関する法学の研究も同様だと思います。経験のある実務から離れた論考を行うと酷い研究になりそうです。

話がそれましたが、いざ大内宿へ。
大内宿は江戸時代初期に栄えた宿場町で、茅葺の寄棟造りの家屋が妻側を道に向けて並んでいるというのが特徴です。
寄木造りとは屋根の頂点が点ではなく線になっている(屋根が六面になっている)造りのことで、妻側は屋根の辺と垂直に交わる側(面積が狭い側)を指します。

そんなことを考えながらその風景を見てみると、確かに茅葺の建物が妻側を道路に向けて同じ向きで並んでいます。

大内宿の特徴である、妻側を道路に向けて並ぶ茅葺・寄木造りの家屋群

ちなみに大内宿は東日本大震災前には年間百万人以上が訪れていたという、福島県を代表する観光名所で、当日も多くの観光客が訪れていました。
震災後は往時の観光客を迎えるには至っていませんが、それでも2019年には87万人の観光客を受け入れるなど、注目度は今も健在です。

大内宿はその名のとおり宿場町として発展した場所で、会津藩主も参勤交代などで訪れることがありました。
大内宿町並み展示館には往時の旅籠の様子も再現されていました。

大内宿町並み展示館に再現された偉い人用の部屋

こちらは展示館内に再現された謁見の間。参勤交代などで休憩した藩主が使用していたのでしょう。

 

大内宿を訪れたら是非食べたいのが「ねぎそば」。
その名のとおり、一本のねぎを箸のように使って食べます。
・・・って、「ねぎそば」という名前を聞いてねぎを使ってそばを食べると想像する人はあまりいないかもしれません(笑)

ねぎは生なのでかじるととても辛いし、匂いが口に残ります。
ねぎをどの程度食べるのが作法なのかはわからずじまいでしたが、一応全部食べておきました。辛い。

大内宿名物のねぎそば。その名のとおり(?)ねぎを使って食べます。

 

茅葺・木造の家屋が建造物群の中心になるため、その景観を維持するためには防火体制が欠かせません。

そのため、大内宿ではところどころに防火設備が設置され、万が一の場合にも被害を最小限に抑えることができるようになっています。
防火体制の一環として各戸に屋内消火栓が設置されているそうですが、この設備がそれかもしれません。
このような防火体制を実際に目にして景観の維持について考えることができるのも現地で見学する意義だと思います。観光用のコンテンツではあまり出てこないので。

家屋の屋外に設置されている消火設備。防火対策としてかなりの数が設置されている。

 

町のはずれには高台があり、そこから大内宿を一望することができました。
改めてほとんどの家屋が同じ方向を向いて並んでいるのがわかります。

大内宿全景。こうして見ると古き宿場町の雰囲気を感じるかも。

 

大内宿から少し離れたところには大内ダムというダムがあります。
大内ダム建設に伴う経済的活況のためトタン屋根の家屋が増えるなど景観への影響も大きく、大内宿の歴史、特に景観との関連の中で大内ダムが与えた影響は大きく、開発と景観維持の関係の重要性や難しさについて考えさせられました。

南方より大内ダムを望む。開発と景観維持の関係の難しさを考えさせられるひと時。

 

百聞は一見に如かず

こうして実地を訪れた上で自分の作った資料を見てみると、何となくのイメージで書いた内容が実感をもって頭に入ってきました。

例えば大内宿が使用されなくなった背景として白河方面の街路が整備されたことがありますが、大内宿の方面は山道が多く車でも移動するのが大変でした。徒歩で移動する時代ならなおさらでしょう。
地図でも想像は出来ますが、実際に行ってみると実感をもって理解できます。

大内ダムとの関係や防火体制の整備についてもしかり。
町並みの実際の感じやそこで働く方を含めた雰囲気も行ってみないとわかりません。

観光客についても、白河や会津若松からも距離がある山の中の宿場町に本当に多数の観光客が来ているのが半信半疑でした。
しかし実際に行ってみると平日にもかかわらず多くの観光客が来ていて、本当に人気があるんだと驚きました。
バスでの訪問客も多く、授業で先生が大内宿の観光地としての発展の背景にはバス用を含めた駐車場の整備が大きいと指摘されていましたが、よくわかりました。

今まで旅行や史跡巡りをするときに景観保護や観光地としての戦略について考えることは少なかったですが、このような予習をしておくとより楽しめることが分かったので、旅行の計画を立てるときには意識しようと思います。

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平安文学論(2)_レポート結果

平安文学論のレポート返却

8月末に平安文学論のレポートを提出していましたが、ちょうど1か月経ってレポートの採点結果が返送されました。
提出したものが採点されて帰ってくるのを待っている時間はドキドキしながらも楽しいものです。
この感覚は資格試験の受験結果を待っているのに似ているかもしれません。

前置きに何か書こうと思ったけど思い浮かばないのでこの辺で。

ちなみに平安文学論のレポートに関する記事はこちらです。

 

平安文学論のレポートの評価

前回の記事に書いた通り、レポートのお題は平安時代の婚姻制度について文学作品や法制資料を用いて論じるというものでした。

文学作品についてはテキストに論じられているので自ら文学作品に直接あたることはしませんでしたが、法制資料については興味があったのでテキストの記述を頼りに、平安時代の成文法である養老律令を実際に確認しながら論じました。
特に律令の規定についてはテキストに記述がないものについても若干論じたので、独自性が少し出せた気がします。

平安「文学」論とはいえテーマが法制度ということもあり取り組みやすかったので、そこそこ手ごたえを感じていましたが、果たして評価は…

各科目のレポートは上記の8項目で評価されますが、ほとんどの項目でAという上々の評価でした。
独創性が足りないというのはやはりテキストの内容に依拠する部分が多く、特に文学作品に直接当たっていないことが理由かもしれません。レポートを効率的にこなすという観点ではそれもありなのですが(基本的にはその方針でレポートを書いていますし)、せっかくなので文学作品についても少しは原典にあたってもよかったかもしれません。

評価に先生からのコメントも添えられており、内容が的確・明解に整理・検討されていて大変よくできている、と非常に高い評価をいただきました。
一方で、言及した資料の本文をしっかり引用すればより説得力が増したとの改善点も指摘されました。確かに「『戸令〇〇』で定められているように、」と書くより、「『戸令〇〇』で・・・と定められているように、」と引用して書いた方がわかりやすいし説得力もありますね。この点については今後留意したいと思います。

ともあれ、あまり土地勘もセンスもない文化・芸術系の科目も言語伝承論に引き続き何とか前進することができました。
まだ美術史概論をはじめ文化・芸術系の科目はいくつかありますが、当初は関心がなくともやればそれなりに楽しめるし乗り越えられるという自信をもって学んでいきたいと思います。

 

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