東洋史特殊講義(1)_レポート提出

日本と中国だけでない東洋史

奈良大学通信教育部の東洋史関係の科目には東洋史概論のほかに東洋史特殊講義という科目があります。
東洋史概論はすでに単位取得していますが、東洋史特殊講義は他の科目が終わった後にとっておいたので2021年度最終版に取り組むことになりました。ちなみに東洋史特殊講義は東アジアの歴史の基本的な流れを知っておくことが円滑な学習につながることから東洋史概論と同時かその後に学習することが推奨されています。

東洋史特殊講義のテキストは放送大学の吉田光男編『東アジア近世近代史研究』。放送大学のテキストというとベージュのカバーのイメージがありますが、こちらは大学院の教材のようです。

 

本書は東アジアのうち中国史と朝鮮史における近世・近代をカバーしています。
東洋史と聞くと中国史好きな私はまず中国史が思い浮かんで、後はせいぜい(広義の?)東洋史ということで日本史をイメージするくらいで、他の地域の歴史についてはあまり意識することがないのが実際のところです。地理的にも文化的にも日本にとって大きな存在である隣国の朝鮮の歴史についてすら何となく王朝名がわかるくらいで、その他の東洋・東アジアの国々の歴史については恥ずかしながらほとんど知らないというありさま。

東アジア各国(あるいはAPAC)の歴史を網羅的に学習するのはかなり厳しいと思いますが、日本の隣国であり、中国とともに共通の文化圏に属する朝鮮半島の歴史は少しは知っておいた方がよいと思っていましたので、この科目が朝鮮史をカバーしていることはありがたいです。

ちなみに東洋史の中に日本史が含まれるという認識を書きましたが、奈良大学通信教育の過程の中で日本史そのものの授業というのは少なかったりします。日本史の中の文化を扱った科目は多いですが、歴史の流れを追う科目としては日本史特殊講義という科目くらいでしょうか。概論科目にも日本史はありません。
歴史好きの人が入学する大学なので日本史そのものはある程度分かっているでしょ?ということなのでしょうか。でも研究も日進月歩ですし、独学とは違う深い知見を得られると思いますので、日本史自体も大学で学びたい気はしますね。

テキストのタイトルのとおり、この科目では中国と朝鮮における近世・近代史について学びます。中国史では宋王朝以降(唐代末期を含むともいわれる)、朝鮮史では李氏朝鮮王朝以降が近世となります。これらは単に王朝の変化というだけでなく、国家・社会のシステム自体がこの時期に大きく変化したことを意味しています。
例えば中国の場合、唐王朝の頃までは貴族が大きな力を持っていたのに対し、唐王朝末期を含め、特に宋王朝以降は科挙によって登用された官僚が大きな力を持つ、ある種の平等な社会に移行したことが指摘されます。それ以外にも一般庶民に経済的自由が広範に認められるようになったのも唐代中期の両税法や宋代の財産私有の許可が契機となったようで、この点でもそれまでとの社会の違いが伺えます。
一方朝鮮史においては高麗を排して建国された李氏朝鮮では仏教から儒教への移行や科挙による官僚の登用、私兵の禁止による国家による軍事の一元化など中央集権的な社会に移行しており、このような変化が近世への転換を表すものと言われています。

そしてこのテキストではこれらの時代を通史的に見ていくのではなく、社会の特徴ごとに論じるという構成になっています。

 

レポートの内容

レポートのテーマは3つのうちから一つを選んで論述するもので、私は明王朝の建国期から滅亡に至る時期までに東アジアの国際環境について、モンゴル・朝鮮・日本・琉球を念頭に論ずるというお題を選びました。

明王朝はその設立の経緯や外交政策の特異性のため国際関係という観点から論ずるべき点は多いですが、特にポイントとなるのは北虜南倭海禁政策冊封体制ではないかと思います。

明王朝はモンゴル民族の元王朝を中原から駆逐して建国された王朝ですがモンゴル民族が滅亡したわけではなく北方で依然として勢力を保っており、北方民族との摩擦は明王朝通しての外交課題となっています。一方南方では倭寇(当初は日本の武士団が主であったが後期には中国の密貿易業者が多くなった)が跋扈しやはり明王朝の重い問題となっています。

海禁政策と冊封体制はリンクする面があり、明王朝は外国との外交関係と貿易関係を一致させた点が外交における大きな特徴とされています。外交関係、具体的には明王朝と朝貢・冊封関係を通じて従属する国に対してのみ貿易を認め、それ以外の国との貿易は認めていませんでした(総称して冊封体制と呼ぶ)。また民間人の外国との貿易も認めず、民間人は外国に出ることを禁じられ、また朝貢国以外の国が中国の港に入港することもできませんでした。この政策は海禁政策と呼ばれますが、貿易が莫大な利益を生むため密貿易も横行しました。そして彼らは当局の取り締まりに対抗するため武装することになり、これが倭寇に転じたとされています。

これらのポイントと上記の国々をリンクさせるのは比較的容易だと思います。
大雑把にいえば、モンゴルは北虜として、朝鮮や琉球は冊封体制下の国として、日本は倭寇・冊封国家(足利義満の「日本国王」冊封)・文禄・慶長の役での交戦国などとして論ずることになると思います。
この他にも冊封体制の基盤となった洪武帝の中華思想やティムール朝・清朝の台頭、冊封関係の錯綜(薩摩藩における琉球支配や清王朝に対する朝鮮の従属など)など触れるべき点はいくつかありますが、大筋としては前述のポイントが特に重要な気がします。

明王朝の外交政策については東洋史概論で概要は学習しましたが、詳しく掘り下げるとその特徴が鮮明になり、大変興味深かったです。特に明王朝の外交は日本とも強いつながりがあり、日本史の学習という意味でも学ぶところが大きかったです。
レポートを作成するにあたってはテキスト以外に参考文献を読む必要があり、そのうちの一つに日本の戦国大名の外交に関するものを取り上げたのですが、よく知られる細川氏や大内氏だけでなく大友氏や相良氏といった戦国大名も明との貿易を行っている形跡があり、彼らのしたたかさと明朝の外交政策の実態が垣間見えた気がします。

とりあえず奈良大学通信教育部課程で単位を取る必要があるテキスト科目のレポートはこれで最後となります。あとは来年度のスクーリング科目と卒業論文で卒業に必要な単位は取得できる見込みです。
ただ、せっかくなら古文書学も勉強したいし、4年次に初めて履修できる科目もありますので、来年度も卒業論文に注力しつつものんびりテキスト科目も取り組んでいこうと思います。

カテゴリー: 奈良大学通信教育部 タグ: パーマリンク

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