平安文学論とは
平安文学論の概要
今日も今日とて奈良大学の学習を進め、この度平安文学論のレポートを提出しました。
提出しただけなのでどのような評価になるかわかりませんが、細切れでも記事にした方が役に立つ、ということをこの前の記事で考えたばかりなので、簡単に平安文学論という科目のお話をしたいと思います。
平安文学というと源氏物語や枕草子、竹取物語や蜻蛉日記といった女性による作品が多いことで知られます。古典に関心がない人でも名前を聞いたことはあるでしょうし、漫画家されているものが多いのも特徴だと思います。源氏物語を描いた「あさきゆめみし」は学校の図書館にも置いてあった気がします。
では平安文学論という科目がそれらの作品を読み込む科目かというとそうではなく、平安文学の背景を学ぶのが平安文学論の内容です。
平安文学論は女性の恋愛を描いたものが多いこともあり、特に平安時代の婚姻・男女関係のあり方について学びます。
テキストは工藤重矩著『平安朝の結婚制度と文学』。平安文学の背景となる婚姻制度について学べそうなタイトルです。
本書では、一般に理解されている「平安時代は一夫多妻制であった」という考え方について検討した上で、平安時代の婚姻制度から平安文学の中の登場人物の置かれた境遇について検討しています。
特に源氏物語、蜻蛉日記(藤原道綱母)、うつほ物語、狭衣物語について検討がなされていて、これらの作品が好きな方は楽しく読めると思います。
平安文学論の狙い
本書の内容について詳細は省きますが、平安時代の婚姻のあり方について、法令(養老律令)の規定や各文学作品の記述から検討がなされています。改めて考えるに、文学を論じるにあたってその背景を知ることはとても重要だと思います。
例えば大人気ドラマ「半沢直樹」では銀行員である主人公の半沢と金融庁のせめぎ合いが見どころの一つですが、銀行が金融庁の監督下にあり、金融庁の意向は大きな影響力を持つとともに行政処分が致命的で絶対に避けなければいけないということが前提になっています。この背景を知らなければ、なぜ半沢が金融庁に対して神経をとがらせているかピンとこないのではないでしょうか。
同じように、源氏物語のヒロイン・紫上や蜻蛉日記の著者・道綱母が当時の婚姻制度において置かれた状況を把握できれば、より彼女たちの心情を理解することができるのだと思います。
そして文学そのものを読むのではなくその背景を理解して文学を考えるというのは、なるほど平安文学「論」だなと思いました。
レポートの内容
単位習得試験に先立ち提出するレポートのお題は、平安時代の婚姻制度における各種の男女関係について説明を法制資料や文学作品を用いて行うというものです。
テキストでも律令や文学作品を引用して検討がなされているので基本的にはそれに沿って論述を行うのですが、テキストの説明はピンポイントでもう少し読みたかったのと、もともと日本の法制史に関心があったこともあり、養老律令(平安期の日本の法令集)を図書館で借りてきて読んでみました。
ちなみに律は刑罰を定めた刑法、令はそれ以外の分野(行政法、民法など)で、併せて法令体系として律令と呼ばれます。律と令はそれぞれが分野ごとの律・令によって構成され、例えば窃盗・反逆に関する刑罰を定めた賊盗律や大学・国学の運営に関して定めた学令などがあります。
律令は各分野の法令をカバーしているだけあり、非常に分厚いです。
読んでみると結構細かいことにも規定があり、古代においてすでに精緻な法令体系が確立していたことに驚きました。
例えば公文書の作成について定めた公式令66では公文書は楷書で作成すること、帳簿や刑罰に関しては数字は大字(漢数字ではなく、壱・弐・参など)を使用することが決められています。
法律に関係する仕事をしている人にとっては読み物としても面白いかもしれません。
平安時代の婚姻制度は法令上「戸令」の定めに従います。
そして戸令には妻との正式な婚姻手続きや嫡妻と妾妻の区別などが定められており、また戸婚律(逸文)には重婚の禁止の定めもあることから、法令の定めからは一夫多妻ではなく、一夫一妻制が導かれるようです。
平安時代の恋愛を考える上で、一夫多妻か一夫一妻かは大きな違いです。例えば源氏物語のヒロインである紫上の立場が妻であるか(妻に劣後する)妾であるかは、彼女の心情を想像するうえで重要な要素になるはずです。
ひとまずレポートを書く中で平安時代の男女関係のあり方についてざっくりと理解をすることができました。
学習としてはここで一区切りですが、せっかくなのでこの理解を用いて平安文学を少し読んでみるのもいいかなと思いました。
漫画で(笑)