転職・退職は常に考えておくべき選択肢
ハラスメントが注目される今日この頃ですが、働いていると理不尽なこと、辛いことに遭遇するのは程度の差こそあれ、職業人の宿命かと思えてきます。
実際自分も辛い目にあったことは何度もありますし、仕事がうまくいかなくて半分逃げ出すように転職したこともありました。
個人的には、ハラスメントやそれ以外の要因で辛いことがあったら、我慢の限度が来る前に逃げ出すのも一つの解決策であると思っています。
我慢しすぎて心身を壊しても、誰も責任をとらない可能性が高いので。
冒頭にも書いた通り、ハラスメントや辛い境遇というのは誰しも経験する可能性があります。
また、外資系企業で働いて、比較的クビが身近な環境にいた経験もあり、色んな事情で会社を辞めざるを得ないケースもよく聞きます。
もちろん不慮の事故や病気、あるいは家族の事情のために退職せざるを得ないこともあるでしょう。
したがって、全ての人が退職・転職という選択肢を常に頭の片隅に置いておく必要があると思います。
転職・退職のためにはリスク管理が必要
とはいえ、仕事をやめたり職場を移ったり、という行動はそれなりにリスクがあります。
特に無職になってしまうと経済的な不安は大きいうえに、社会から隔離されてしまうというデメリットもあります。
もちろん、転職先がすぐに見つからない可能性もあり、そのときはお先真っ暗感も辛いです。
自分も経験したことがあるので、本当によくわかります(こちらの記事に当時の気持ちを書きました)。
そのため、退職・転職という選択肢を活用するためにはできるだけリスクを抑えたいところです。
孟嘗君に学ぶリスク管理
では、どのようにしてリスクを抑えたらいいのか。
自分なりにその答えを考えてきましたが、参考になると思ったのが古代中国の政治家・孟嘗君の「狡兎三窟」の故事です。
孟嘗君は中国戦国時代の大国・斉の宰相で、多くの食客を抱え名声を欲しいままにしていました。
しかし、ある時失脚することになり、領地に逼塞せざるを得なくなりました。
この時、ほとんどの食客が彼の下を去っています。
まだ領地が残っているのでなんとか生き延びていますが、それがなくなったら拠って立つものがなくなります。
そんな状況で、彼の下に残っていた馮驩という食客が言うに、「賢いウサギは常に隠れる穴を3つ持っているというけれど、あなたには頼れるものが領地しかありません。私はあなたのためにあと2つ穴を作りましょう」と。
そして彼は策をめぐらせ、孟嘗君を斉の宰相に復職させるとともに、斉王家の祭祀を孟嘗君の領地内で祭らせる(=王も孟嘗君の領地に手出しできない)ことに成功しました。
その結果、孟嘗君はその地位を長く保ち続けることができました。
私がこの故事で参考になると思ったのは、3つリスク回避策を持っていれば大抵のことは乗り切れるということです。
3という数字は安定と相性がいいようで、例えば平らな構造物は3つの点を固定すれば安定しますし、リスク管理やコンプライアンスでも3つの防衛線(現場・コンプライアンス/リスク管理部門・内部監査)といったりします。
三国志の三国鼎立や三つ巴というのも、やはり安定しやすい形に思えます。
自分自身、転職経験が多く、リスク回避の必要性は痛感していますので、自分にとって3つの穴として何を用意すればよいのかというのは重要事項です。
そして、自分なりに考えたのは次の3つです。
1. 汎用スキル
自分の職務経歴は資産運用会社のコンプライアンスという、結構ニッチな分野なので、業務経験だけだと他の業種・職種への転職は難しいのが現実です。
今のところ、運用会社のコンプライアンスのニーズは多いのであまり困りませんが、その状況が変わるといざという時に職にあぶれる可能性があります。
そのため、英語力や資格(証券アナリスト、MBA、博士号など)など他の業界・業種でもなんとか使えそうなスキルを身につけて、厳しい状況でも仕事にありつける可能性をできるだけ高めるように努めています。
自分の英語力はまだまだだし、資格も万能ではありませんが、それでもないよりはあった方がリスク回避の可能性は全然違うと思います。
2. お金
転職したいときにすぐに希望する条件で転職できればいいのですが、転職先が決まらなくても退職せざるを得ないケースもあると思います。
そんな時にまず助けになってくれるのはお金です。
手元に当座のお金があれば苦しい現状から逃げ出すこともできるので、我慢し続けて自分が壊れるという最悪のシナリオは避けられます。
転職活動には最低3か月程度かかる、ということがよく言われます。
自分の経験上も動き始めてからその程度で決まることが多かったです。
したがって、まずは3か月分の生活費を貯金として用意しておけば、「我慢の限界を越えたらいつでも辞められる」という安心感を得られます。
お金は持ち主を裏切りませんし、お金は持ち主を必ず守ってくれます。
お金は大事です。
3. 人間関係
お金は自分を守ってくれますが、状況の打開には直結しません。
そのため、自分から動いていく必要がありますが、自分一人の力には限界があります。
そんな時に頼りになるのが周りの人のサポートです。
辛いときに声をかけてくれたり慰めてくれる友人や家族がいれば、それだけでも精神的な安定につながります。
また、知人の伝手で良い職場が見つかったり、自分の業績につながる話がもたらされる可能性もあります。
もちろん、多様な人間関係は自分の視野を広げてくれるため、それだけでも自分の可能性を広げてくれます。
実際、無職の時期にいろんな人に精神的にも職探しの面でもサポートしていただいて本当にうれしかったのを覚えています。
このように、良質な人間関係はいろんな形で自分を助けてくれるため、日頃から人間関係を充実させておくことも大事です。
実際に孟嘗君も数多く抱えた食客のおかげで危機を脱した経験を持っています(鶏鳴狗盗)。
ただ、人間関係は相互的なものですし、そもそもメリットだけを求めて形成された人間関係は強固なものになりにくいので、あくまで利害関係を求めず、自分も人のためにできることをする、という気持ちでのお付き合いが大事だと思います。
無職の時期に人間関係のありがたみを感じたこともあり、数年前から定期的にいろんな業種の人をつなげる飲み会を企画しています。
普段接点のない人同士をつなげて生まれるシナジーも楽しみですし、自分自身も得られるものが多いです。
リスク管理でしたたかに生きる
以上、自分なりの狡兎三窟をご紹介しました。
働き方改革が叫ばれつつもなかなかハラスメントや理不尽さが根絶されない状況では、自分の身は自分で守るしかありません。
そういうことを考えたとき、ただ不安になるよりは、どうしたらリスクを最小限に抑えられるかを考え、リスク回避策を実行していくことがキャリア形成、人生設計上重要なのではないかと思います。
願わくば、自分も含め一人でも多くの人がしたたかに生き、その結果としてよい労働環境が広がっていってくれればと思います。