百万ドルをとり返せ!

先日、ジェフリー・アーチャーの「ケインとアベル」を読んだら引き込まれたので、彼の処女作である「百万ドルをとり返せ!(原題:NOT A PENNY MORE, NOT A PENNY LESS)」を読んでみました。

著者は投資詐欺にあって無一文になり、政治家としての地位も失ってしまいましたが、本書はその経験を基に書かれた作品です。
自分の失敗をそのまま小説にするとは、やはり只者ではありません。

ということで、本作品は投資詐欺がテーマです。

とある株式を騙されて買ってしまった4人の人物。
数学者、スティーブン・ブラッドリー。
医者、ロビン・オークリー。
画商、ジャン=ピエール・ラマン。
貴族、ジェイムズ・ブリグズリー。
彼らはインサイダー情報を信じて大枚をはたいて株を買ってしまったものの、もともと詐欺のための銘柄なので、紙くず同然。4人で合計百万ドルの大損失です。

ほとんどの人間は諦めて泣き寝入りするところですが、彼らはそうではありませんでした。
この詐欺的行為に憤り、損した分をそっくりそのままとり返すために立ち上がります。
百万ドルきっちり、1ペンスも多くもなく、1ペンスも少なくもなく。
原題のNOT A PENNY MORE, NOT A PENNY LESS、はここからきています。

とはいえ、相手は稀代の詐欺師、ハーヴェイ・メトカーフ。ただ立ち上がるだけでは勝ち目はありません。
しかし、幸いなことに、彼らはそれぞれ専門分野がありました。
学術、芸術、医学、そして演劇。
彼らは、それぞれの強みを生かしてハーヴェイから損失分を巻き上げようと画策します。

彼らはどのような策略を仕掛けるのか。
ハーヴェイはそれを見破るのか、はたまた彼らの策にかかってしまうのか。
手に汗握る知能戦にドキドキハラハラしつつ、たくらみの中で醸成される彼らの友情にホロリとすること請け合いです。

ちなみに、この話では株式が詐欺の対象になっていますが、最近はファンドという箱(株式もファンドも、投資家のお金を一つの箱に集めているという意味では同様の仕組みです)で同様の詐欺的行為が行われており、不公正ファイナンスとして問題視されています。

特に証券取引等監視委員会では不公正ファイナンス防止に力を入れており、「悪質なファンド販売業者に関する注意」として注意を呼び掛けています。
ハーヴェイの手口を読みながらこのことを思い出して、人のすることはいつの時代も似ているものだと思わされました。

皆さんも、不公正ファイナンスにはお気を付けください!
(ちょっとコンプライアンス担当者らしいオチにしてみました(笑))

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