MBA学生からの人気の高い戦略コンサルティング会社・マッキンゼーでコンサルタント、採用マネージャーとして活躍された伊賀泰代氏の「採用基準」を今更ながら読みました。
2012年発行の書籍で、当時は非常に評判だったように記憶していますが、その時は読む機会がなかったのですが、今般たまたま図書館で見かけて読んでみることにしました。
本書のタイトルから採用ないし就職活動に焦点を当てているように思えますが、その内容の大半は「リーダーシップ」についてです。
それは、マッキンゼーという会社が、その採用の可否の判断、あるいは採用後の育成においてリーダーシップを重視していることによります。
最初の方はマッキンゼーの採用基準とよくある誤解について書かれていたので、「コンサル会社ではこういう人材を求めているのか」「●●というよく聞く話は実は違うんだ」と、コンサル業界の話として読んでいましたが、「マッキンゼーはリーダーシップを重視している」という点から、リーダーシップはなぜ重要なのか、なぜ日本では重視されてこなかったのか、などのリーダーシップ論に入ります。
本書の大半がリーダーシップの話になっていることからも、タイトルとは異なり、本書のポイントがリーダーシップであることは明らかです。
では、なぜリーダーシップが重要なのか。
著者は、リーダー一人だけがリーダーシップを持っている(とっている)組織と、全員がリーダーシップを持っている(とっている)組織を比較しています。
そのうえで、前者においてはリーダー以外のメンバーが「指示待ち」人間になったり、全体のことを考えず自分の職務に専念してしまう一方、後者においては一人一人が全体のことを考え、自分なりに解決策を持ち、自律的に動くため、生産性が高いと指摘しています。
また、日本においてはリーダーシップが「管理者」や「調整役」といった役割と混同されがちであることが、また組織内において、「和」が重視される傾向にあることがリーダーシップを求められにくい背景にあるとしています。
さらに(あるいはそのような背景があるため)、職責上もリーダーシップが求められる管理職の登用の基準が年功序列であったり、プレイヤーとしての評価となっています。
つまり、リーダーシップが評価されないままにリーダーシップが求められるポジションに登用されていることになります。
逆にマッキンゼーではリーダーシップを評価したうえで、リーダーシップが求められるポジションに登用されるとのことです。
このほか、分権・共助の動きが進む中で、「リーダーシップの総量」の増加が求められていること、リーダーシップ自体はカリスマのような先天的なものではなく、学ぶこともできるし、実際にマッキンゼーに入社した方はリーダーシップを高めていき、リーダーシップを「会社から求められるもの」から「自分のためのもの」に昇華させていくそうです。
本書では、リーダーとして必要なこととして、
1.目標を掲げる
2.先頭を走る
3.決める
4.伝える
ということを掲げています。
どれも組織をまとめ、前に進んでいくために必要なことであるのを改めて考えさせられます。
著者も指摘する通り、リーダーシップとは管理職やチームのまとめ役だけに求められるものではなく、すべての人に求められるスキルで、リーダーシップを持つことで自分の視点や世界も違ったものになってくると思います。
自分自身、まだ管理職というポジションではありませんが、組織の一員としてパフォーマンスを高めるべく、また自分が将来リーダーのポジションに就いたときにきちんとリーダーシップを発揮していくためにも、リーダーシップ(特に上記の4つのポイント)について意識して仕事をしていかなくてはと感じさせられました。