ただめしを食べさせる食堂が今日も黒字の理由

日本随一の古書店街でオフィス街でもある、東京・神保町には1軒のユニークな定食屋さんがあるそうです。

その名は、「未来食堂」。

 

そのユニークなポイントの一つが、「ただでご飯を食べさせてくれる」こと。

そんな「ただめし」を食べさせる食堂が、ボランティアではなくしっかり黒字を出している。

そんな話を耳にして、その店主の方が書かれた書籍を読んでみました。

 

未来食堂の大きなユニークポイントは、「まかない」「ただめし」「あつらえ」「さしいれ」。

 

まかないとは、その名の通り、お店を手伝ってくれた方に対して、食事を提供すること。

50分で1食と標準化されていて、1度お客さんとして来た方は誰でもまかないを申し出ることができるそうです。

興味深いのは、必ずしも食事が目的でまかないを申し出るわけではないということ。

飲食業界では自分でお店を出したいと思っても、修業期間が長く、すぐには技術を身につけさせてもらうことが難しいことから、そのような方が修行目的でまかないを行ったりすることもあるのだとか。

つい「食事が無料」「労働力の補てん」という点に目が行きがちですが、こういう価値もあるのかと、目から鱗でした。

 

ただめしもその名の通り、無料で食事を提供すること。

ただ、食事(食費)を提供するのがお店ではなく、「まかない」で無料券を取得した人、のがユニークです(もっとも、まかないをした人が自分で食べるだけだと「ただめし」=「まかない」になりそうですが)。

前述のとおり、「まかない」をする人の中には無料で食事をすること自体が目的ではない人もいて、そういう人は無料でご飯を食べる権利を持て余してしまいます。

そういう場合には、その無料券を他のお客さんに譲ることができ、結果として他のお客さんは「ただめし」を食べることができるということです。

まかないさんとお客さんがちょっとした縁でつながるのが面白いです。

 

あつらえ、とはお客さんの好みや要望に合わせた食べ物を提供すること。

ベースとなるのは定食ですが、お客さんのその時の気分や食べたいものに合わせて、小鉢をつけたり、定食の一部を変更したりしてそのお願いに応えます。

もともと店主の方は偏食だったこともあり、「おいしい」を押し付けられるのに違和感があり、だからこそ、いろんな人に「おいしい」を押し付けず、人それぞれに好みに合ったものを提供したいと考えたそうです。

こういうこともお店の個性を生み出すのですから、人の特徴を安易に評価してはいけないと思わされます。

 

そして、4つ目のさしいれ

一般的に居酒屋などでお酒を持ち込むと持込料がかかりますが、未来食堂では持込料はとらず、持ち込んだ量の半分をお店に提供することになります。

お酒の行方はケースバイケースのようですが、基本的にはお店においてあって、他のお客さんが自由に飲んでよいようです。

つまり、お酒を持ってきたお客さんが他のお客さんに差し入れするのをお店が媒介しているということです。

 

 

普通のお店だと、お客さんは自分たちでご飯を食べるので、あまりお店の人や他のお客さんとの関係を意識することはありませんが、未来食堂では、顔は見えないながらも、無料券を提供してくれたまかないさんや差し入れをくれた他のお客さんとの関係を感じることになりますので、その程よい距離感は素敵だと思います。

 

また、行き場のない人のセーフティネットとなることや、経営の透明性(ウェブで業績が公開されています)、飲食業界で頑張りたい人の経験を積む場の提供といったことを意識されているということも興味深く感じました。

 

そのほかにも、起業するには具体的なイメージ・情景を描くことの大切さも記されていて、自分でサービスを作ることについての大きなヒントをもらった気がします。

何かを考えるとき、つい抽象的な言葉で進めてしまうことがありますが、それではうまくいかないことがよくわかります。

 

 

自分は今資産運用業界にいますが、未来食堂と同じように、投資家の方とのもっと近い関係を築き、また資産運用業自体にもっと社会的な意義を持たせ、それを投資家の方と共有したいと思っていましたので、全く業種は違いますが、考えさせられることが多かったです。

 

まずは未来食堂さんにお邪魔して、ご飯や雰囲気を味わってみたいところです。

 

 

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