良心に従って生きる

早いもので4月も終わり、世間様はゴールデンウィークを楽しまれている頃でしょうか。
私も働いていた頃は楽しみで仕方ありませんでしたが、無職の今となっては毎日がゴールデンウィークみたいなものなので特段のありがたみを感じないというなかなか厳しい状況です(汗)
さすがに4月が終わっても進路が決まっていないとは帰国時には想像もしていませんでした。

とはいえ新年度に入っていい流れを感じていますので、その流れに乗って良縁に巡り会いたいものです(外資系企業の場合、3月に新年度の予算が本国に承認されるため4月から募集が始まるポジションも多くなるらしいです)。

浪人生活をしていると時間だけは有り余っているため読書をする時間も増えました。
ジャンルは歴史、ビジネス、NPO、自己啓発など様々です。

本は図書館で借りることが多いのですが、図書館を歩いていると見たことのある名前が目に入ってきましたので、その本を読んでみることにしました。

その名前は根本博。旧陸軍の中将で、太平洋戦争時はモンゴル方面の司令官を務め、戦後は蒋介石を助けるべく台湾に渡り、共産党と戦った人物です。

彼の数奇な人生に関心を持ちつつもその詳細を知らなかったのですが、その人生を追いながら彼が非常に素晴らしい人物であることを知りました。

感銘を受けたポイントはいくつもありますが、特に下記の点は印象に残りました。

1.  自分の判断に対する自信、その判断に対して責任を取る姿勢
終戦時、日本軍は勅命において武装解除を命じられるのですが、彼はソ連軍に相対していたところ、武装解除をしては配下35万の将兵や民間人の命を守ることができないと判断し、責任を一身に負うことを明らかにして武装解除しないことを決定し、ソ連軍と交戦しながらも中国軍(国民党)の協力も得て無事に多くの日本人を帰国させることに成功します。
彼の判断が正しかったことは満州方面の武装解除後の悲劇を見れば明らかですが、実際にそのような判断を下し、また一身に責任を負って行動に移すことができるかと言えば容易ではないでしょう。

もし自分がこのような立場にあったらどのような行動をとるでしょうか。
唯々諾々と上司の命令に従って保身に走るか、敢然と自らの判断と責任のもと行動するのか。彼のようにありたいとは思いますが、決して楽な意思決定ではなさそうです。

2. 我が身を省みない恩返し
太平洋戦争が終結すると中国では国民党と共産党が内戦状態に入り、最終的に共産党が勝利を収め、蒋介石率いる国民党は台湾に追いつめられ絶体絶命の危機に陥ります。
共産党が勢いに乗る中で国民党は壊滅の危機にあったのですが、彼は中国からの撤兵時に国民党の協力があったことを忘れておらず、今こそ恩返しの時と、風前の灯であった国民党とともに戦うことを選びます。当然命を失う可能性は低くはありません。

恩返しが必要なのは誰でも知っていますし、恩人が苦しい時にこそ恩返しをしたいとは多くの人が感じることでしょう。
しかし、その時に自分にも危険が及ぶ場合、それでも恩返しできるでしょうか。
恩人の連帯保証人になれるか、その人の子を代わりに育てられるか、社会的地位を捨ててもその人のもとに駆けつけられるか。
これもまた自分がその立場になったら、と考えると簡単ではなさそうです。

3. 常識に逆らう
軍隊には鉄拳制裁がつきもの、というのはよくある話ですが、実際には将兵の士気は下がるし、組織内の調和・結束という点でも必ずしも利はないと素人ながら感じたりします。
過去の名将の例を見ても、軍の中の調和を保ち、将兵の扱いに配慮していた人物が多いのは、やはりそういう要素が軍隊の強さに影響するからだと思います(無論そうでない名将も多くいるでしょうが)。

特に旧日本軍の場合鉄拳制裁やいじめというのはよく聞く話ですが、根本中将はそのような制裁をやめさせたそうです。
陸海軍問わず鉄拳制裁はある種の慣習・常識になっていたと思いますが、それを一切排除するというのは言うは易く、行うは難きでしょう。

自分の判断に基づき断固として行動するという素晴らしい事例でした。

これらに共通しているのは、彼が自らの良心に従って行動したということだと思います。
我々は(少なくとも私は)良心を持ちながら、色んな事情でそれを後回しにしてしまうことがあるのですが、彼はそれを最優先したわけで、それこそが彼を彼たらしめたのだと思います。言い換えれば、良心に基づいて生きることこそが彼のリーダーシップだったのではないでしょうか。

私も良心に従って生きる勇気を持つことができれば彼のようなリーダーになれるかもしれない、と勇気づけられる思いです。

彼の事績は台湾の歴史を巡る複雑な経緯もあって必ずしも知られていないのが残念ですが、このような人物がいたことは誇りに思います。

ともあれ、台湾と日本を巡る深い縁やリーダーシップについて考える大変良い機会になりました。
浪人生活というのも悪くないですね(笑)

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