オランダから学ぶこと

オランダから帰ってきて色んな人とお話しすると、「オランダは日本とどう違う?」ということをよく聞かれます。

これまでそういうことを整理していなかったので、つい思いつくままに話していましたが、ここで一度自分の気づいたことを整理して、その中で改めて日本がオランダから学ぶべきことを考えてみたいと思います。

・オランダの銀行ATMは24時間無料で使える
オランダの銀行のATMは24時間無料で使えます。
そのため、夜遅くに現金が必要になっても安心です。常に手数料がかからないので、引き出す時間帯などを気にする必要がないのもありがたいですね。

ただし、銀行口座維持費が若干かかります。それでも気になる額ではないので日本の銀行に比べるとお得感があります。
もっとも、コンビニにおいてある日本の銀行ATMも24時間無料の場合がありますので、そういう銀行の場合はオランダと遜色ない、あるいは口座維持費がかからないだけそれ以上のサービスと言えるかもしれません。

・オランダからの海外送金は便利で無料!
日本の銀行口座から海外の銀行口座に送金する際は送金手数料がかかるほか、送金先の講座を登録するために2週間ほど時間がかかります。
そして実際に送金する際は電話を通じて都度送金依頼をしていました。

一方オランダの銀行口座から日本の銀行口座に送金する際は、送金手数料が無料である上(送金先口座側の手数料は取られますが)、送金先口座の登録は不要でした。
しかもその手続きは全てオンラインで実行できます

これほど簡単にできるとマネーロンダリング対策は大丈夫なのだろうかと逆に心配になりますが、日本に比べるとコスト面でも時間の面でも大変便利ですね。

・支払いは基本的にデビットカード
オランダでお金を払う時は、デビットカードで払うことが多いです。
デビットカードといっても普通の銀行のカードで、それを機械に入れて暗証番号を入れたらそれでおしまい。自動的に支払いが行われます。

そのため現金を使う機会は意外に少なく、財布を持ち歩く必要もあまりありませんでした。
日本でも電子マネーが普及しつつありますが、そもそもデビットカードが普及すればより便利ではないかと思います。

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オランダの銀行カード

・グローバル企業の本社が地方にある
オランダを代表する企業は多くありますが、不思議なことに多くの企業が本社を首都・アムステルダムではないところに置いています。

Philipsはアイントホーフェン、Unileverはロッテルダム、Shell・KPNはデン・ハーグ、Rabobankはユトレヒト、とそれぞれ首都ではないところにあります。

デン・ハーグは政治の中心ということもあるかと思いますが、個人的にはこの背景には、オランダの市場が大きくないということがあるのではないかと思います。

オランダの人口は1,700万人弱で市場としては必ずしも大きくありません。
つまりオランダ市場で強くなっても規模の拡大には限界があります。
そうした背景のもと、オランダのグローバル企業はオランダの首都に本社を置いてオランダ市場を狙うより、より大きな欧州、あるいはグローバルな市場を見据えているのではないでしょうか。
そのためには必ずしもアムステルダムに本社を置く必要はなく、場合によってはそれ以外の場所に本社を置いた方が良い場合もあるのだと思います。

例えばロッテルダムは世界的な港がありますし、アイントホーフェンはベルギーなどにも近く、また規模が大きくないことからPhilipsの企業城下町と化して効率的にインフラ等を活用することもできるでしょう。
ユトレヒトもオランダの交通の要所であり、ドイツに比較的近いという強みがあります。

このようにグローバル企業が各地域の強みを活かして本社機能を置くというのも、本社機能が東京に一極集中している日本から見ると面白いものです。

これらの内容は私の推測に過ぎませんが、例えばアジアの成長を見据えて今後福岡や沖縄に本社を構えるような企業が増えてきても良いのではないかと思ったりします。

・Social Activityが身近
あるオランダ人のクラスメイトと話していると、「これからSocial Activityに行ってくるからまたねー」と言われたことがあります。

彼は特段チャリティやサステナビリティに関心があるという素振りを見せているわけでもないのですが、非常に自然な流れでそう言うことを口にして颯爽と去っていきました。

彼の言うSocial Activityがどのような活動なのかは聞いていないのですが、オランダではNPO活動が非常に盛んで一大セクターを形成しています。
そう言うことを考え合わせると、彼の発言もさもありなんということで、非常にオランダらしいと思います。

・アカデミックな学位の価値が高い
文系の分野に顕著ですが、日本では大学院を出た人及びその学問に対する社会の評価が必ずしも高くなく、就職に苦労するという状況です。
一方、その背景が違うとはいえ、MBAを含めた専門職大学院については多少はその価値が認められ、就職状況もアカデミックな学位を取った人よりは恵まれているのではないかと思います。

一方、オランダではアカデミックな学位の方が専門職の学位よりも評価が高いそうです。
その背景には、伝統的な大学・大学院のカリキュラムが大変で、単位認定も非常に厳格であるということがあるそうです。
実際交換留学できている学部生の話を聞いていると我々よりも大変そうで、社会からの高い評価に値すると感じました。

もちろんそれだけが理由ではないでしょうが、オランダ人の知人の経歴を見ているとアカデミックなバックグラウンドを持っていることが多く、社会にうまく学問がとけ込んでいるような印象を受けます。

・お年寄りが電動車いすに乗ってお出かけしている
オランダで生活しているとよく見かけるのが、お年寄りが外出している姿。
もちろんしっかりした足取りで歩いている方も多いのですが、足腰が弱くなっても外出しないということはありません。
スーパーやマーケットで電動車いすに乗って買い物をしているお年寄りの姿をよく見かけます。マーケットは混雑していて電動車いすで動くのは大変だと思いますが、それでもひょいひょい動いていますし、それを邪魔そうにする人もいません。スーパーも同様です。

バリアフリーも進んでいるので、電動車いすで動くことができる範囲も非常に広いです。
トラム(路面電車)にも電動車いす・ベビーカー用のスペースがあり、便利そうでした。

お年寄りが自立して動き、社会がインフラ等でそれを促す。
高齢化社会の一つの理想像であるように感じます。

・お年寄り夫婦が手をつないで歩く
電動車いすと同じく目立つのが、お年寄り夫婦が手をつないで歩く姿。
日本だと元々夫婦が手をつないで歩くということが多くないので、当然お年寄り夫婦が手をつないで公衆の面前を歩くということもほとんどないのですが、オランダではむしろお年寄りの方が手をつないで歩くことが多い印象を受けました。

少し前には熟年離婚という言葉がはやった日本ですが、こういうところもオランダに倣ってもいいのかもしれません。
手をつなぐ、つながないに関わらず、夫婦は末永く仲良くいきたいものです。

・おつりは端数切り捨て
現金でお金を支払う時には端数がつきもの。
日本では当然のように1円単位でおつりが渡されますが、オランダでは端数は切り捨てられます。
例えば27セントのおつりがあったときには25セントになります。

そもそもオランダでは他ユーロ圏で使われている1セント硬貨が使われていないという事情があるのだと思いますが、とてもユニークだと思いました。

このような大雑把さを見習うべきとは言いませんが、ある程度の大雑把さは時として必要かもしれません。

・Free-WiFiが豊富
オランダのカフェに入るとWiFiを自由につなぐことができることが多いです。
日本みたいに特定のキャリアの場合というのではなく、本当に自由。これは大変便利です。

カフェに限らず、空港や電車、スーパーなど色んな場所でFree-WiFiが提供されています。
そのため、ちょっと調べものをしたいときにはフラッとカフェに寄ったりスーパーでインターネットにつないだり、ということが可能です。

またオランダでは海外送金だけでなく、転出届の提出もインターネットで終了しますし、インターネットの活用が進んでいる感があります(限られた事例で恐縮ですが)。

日本でももっとFree-WiFiが普及し、インターネットの活用がもっと進めばもっと便利になりそうです。

・仕事をする時の服装が自由
オランダでは平日の日中に街中を歩いていてもスーツの集団に出くわすことはありません。ほとんどスーツの人はいないと言っても過言ではありませんでした。

もちろんオランダの人も日中は仕事をしています。しかしその服装は自由で、ビジネスカジュアル、あるいはさらに私服に近い服装で仕事をしている人が非常に多いです。

私自身はスーツは好きなのですが、そもそも仕事をするのにスーツが必要かと聞かれるとそうでもなく、人によっては窮屈にも感じるスーツを全員が着用するする必要はないようにも思います。もし他のリラックスできる服装の方が快適に仕事ができるなら、みんなそうした方が効率が良いかもしれません。

押さえるべきところは押さえ、その他の部分では柔軟性を認めるというのはオランダ流の良い考え方だと思います。

・スーパーのレジでは着座・私語自由
押さえるべきところは押さえ、その他の部分は自由、というのはスーパーでも見られる光景です。
オランダのスーパーのレジの係の人は日本と違いみんな椅子に座っています。そして日本に比べると私語が多いです。

しかし、これは店員さんにとっては楽な一方、お客さんにとってデメリットはありません。我々が求めるのは(迅速な)レジ打ちだけで、日本のように店員さんが立っていることでもなければ、必要以上に静かにいることでもないからです。

日本ではそういう態度は許されない、という向きもあるでしょうし、それを否定する気もありませんが、オランダでは必要なところは押さえて、他は極力リラックスして仕事をしている感じがするので、同じことをするのでも使うエネルギーが違う気がします。

時々レベルの低いサービスに出くわしてげんなりすることもありますが、基本的にオランダもサービスのレベルは低くはないので、労働環境の改善という点でも日本が学ぶべき点はあるのではないかと思います。

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レジの人はみんな座っています。

・帰宅時間は結構早い
オランダは仕事を早く終えることでも知られていますが、その通り、オフィス街を歩いていても、19時くらいになるとオフィスの電気が消えていることが多いです。

ちなみにRSMのオフィスも17時を回るとほとんど閉まっています(建物自体は夜まで開いていますが)。

オランダではフルタイムの人もパートタイムの人もそれぞれ仕事の量に応じた待遇を受けていると共にワークシェアリングが進んでいるので比較的雇用が安定しているのだろうと思いますが、それについて直接話を聞くことはできませんでした。

しかし、オフィスの外から見る限りではみなさんのんびり働いて、あまり長時間働くこともなく帰宅しているようでした。

ただ、自宅の窓から見える某グローバル企業本社オフィスは夜遅くまで明かりが煌煌と点いていたので職場によるのかもしれません。

いずれにせよ、日本でも長時間労働が緩和されてみんなが家族と過ごせる時間が長くなればと願いたいところです。

・芸術への関心を喚起
オランダは芸術やデザインの国として知られていますが、美術館に人を呼び込むための工夫もしています。

その一つがMuseum Card
オランダには約400の美術館があるそうですが、50ユーロほどのMuseum Cardを購入すると、1年間オランダのほぼ全ての美術館に無料で入ることができます。
有名なマウリッツハイス美術館も、ゴッホ美術館も無料です。
どの程度の人がこのカードを使っているのかは知りませんが、オランダは国自体が狭いこともあり、多くの美術館に簡単にアクセスできることを考えると、このカードは非常に有効なものだと思います。

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Museum Card

もう一つがMuseum Night。一晩に限って全ての美術館を夜遅くまで開放し、一定金額で多くの美術館を見学することができるというイベントです。
このイベントは大人気で、ロッテルダムでもRotterdam Museum Nightということで多くの人が夜遅くまで美術館を回っていて盛況でした。

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芸術への関心を喚起するということは日本でも求められることであり、できれば日本もこういう取り組みを通じて多くの人が美術館に足を運ぶようになればいいと思います。

以上、オランダで生活していて気づいたオランダの良さを書き出してみました。
色々書いてみましたが、オランダの一番素晴らしいのは、人に優しい社会だということです。言い換えれば、人の本質に即した、無理をしない社会と言えるかもしれません。
あまり無理に窮屈なことをせず、一方で老若男女・多様な人種の人が動きやすいように設計されています。
もちろんオランダにも改善すべき点は多いですが、このようなオランダの特徴は幸せに生きるためにとても重要だと思います。

そして、今後日本において経済の成長があまり見込むことができない中でより幸せになろうと思うのであれば、このような社会の質の改善が必要不可欠ではないでしょうか。

なお、これらの内容は私の生活している範囲での気付きですのでもしかしたら誤解もあるかもしれませんがその点はご容赦いただければと思います。

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