われ生きたり

いきさつは忘れましたが、どこかで「金嬉老事件」というものを知りました。

在日朝鮮人が人質を取って籠城した事件、ということを知りましたが、なぜかその当事者・金嬉老氏に関心がわき、その著書「われ生きたり」を読んでみました。

本書によると、彼は在日朝鮮人ということで、戦前から差別を受け続け、本来公平であるべき警察からも朝鮮人であるがゆえに不当に拘束されたりしていたそうです。

また、その警察は賄賂などの不公正な行為が横行していたそうで、それが後に糾弾されることにもなります。

家庭でもうまくいかず、再起のチャンスも朝鮮人であるが故の差別に阻まれ、次第に泥沼に陥っていきます。

そんな中、暴力団との借金のもつれもあり、また度重なる朝鮮人への差別への不当さを世間に訴えるために、暴力団員に対する殺人事件を起こしたうえで、ある旅館に立てこもります。これが金嬉老事件です。

彼は籠城中にマスコミを通じて、朝鮮人に対する不当さを世間に訴えたうえで、警察に対し謝罪を求め、結局警察は公に謝罪することになります。

ただ、本書によると、マスコミは彼の訴えを歪めて伝え、彼の情報が世間に正しく伝わることはなかったようです。

最終的には報道陣に紛れた警察によって彼は取り押さえられます。

その後の取り調べでも彼は人種差別こそが事件の最大の背景であると主張しましたが、検察や裁判所はそれを必死に隠そうとしていたそうです。

最終的に彼は出所し、韓国で人生を終えたそうです。

韓国でも逮捕されたことがあるようで、本当に波乱万丈な人生であったようです。

本書はあくまで彼の視点から描かれたものであり、彼の人生や行為については様々な見方があるでしょう。

また、どのような理由があったとしても殺人行為は認められるものではなく、その点は本人も認めているとおりであり、人生をやり直せるならあのような方法で世間に訴えたりはしないと書いています。

しかしながら、どのようなきれいごとを言ったとしても、在日朝鮮人に対する差別があったことはおそらく事実でしょうし、また近年でも在日朝鮮人に対する差別や犯罪があることも報道されています。

差別感情といった負のものに正面から目を向けるということは心理的負担も大きく、それゆえに目をそらしてしまいがちです。

韓国に対する報道のうちには厄介な事件も多いし、また韓国が日本施政の負の面ばかり強調し、韓国に対するプラスの影響を無視しているということを思ったりもします。

その一方で、朝鮮人との摩擦や差別が存在し、それがこのような悲劇を生んでしまったことについても事実として受け入れなければ、韓国に対し日本施政の好影響を主張し、過去を乗り越えた良好な関係を築くことはできないと思います。

なんだかんだ言っても中国・韓国は日本に近い国で国際政治・経済にも一定の影響力がある国であり、今後お互いの利益のために共存していくことが望ましいと思います。

そのようなことに思いを致すうえで日韓の過去・現在・未来を考えるいい機会になりました。

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