最近注目を集めている財務省の広告「国債を持てる男子は、女性にモテル!!・・・か!?」。
まあ、国債を買うだけの余裕資金と経済観念があれば、女性としては安心、という感じなのでしょうか。
でも、パッと見て、これはビミョーな広告だと思いました。
もちろん、品がないな~、という感じもしますが、そのほかに、金融商品取引法・金融商品販売法上の懸念(?)があります。
まず、金商法。
金商法では、株式や公社債、投資信託などの金融商品の広告については一定のルールがあります。
例えば、金商法第37条。
第三十七条 金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業の内容について
広告その他これに類似するものとして内閣府令で定める行為をするときは、内閣府令で定めるところにより、
次に掲げる事項を表示しなければならない。
二 金融商品取引業者等である旨及び当該金融商品取引業者等の登録番号
三 当該金融商品取引業者等の行う金融商品取引業の内容に関する事項であつて、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして政令で定めるもの
2 金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業に関して広告その他これに類似するものとして内閣府令で定める行為をするときは、
金融商品取引行為を行うことによる利益の見込みその他内閣府令で定める事項について、
著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。
さらに、金融商品取引業等に関する内閣府令。
(誇大広告をしてはならない事項)
第七十八条 法第三十七条第二項に規定する内閣府令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 金融商品取引契約の解除に関する事項(法第三十七条の六第一項から第四項までの規定に関する事項を含む。)
二 金融商品取引契約に係る損失の全部若しくは一部の負担又は利益の保証に関する事項
三 金融商品取引契約に係る損害賠償額の予定(違約金を含む。)に関する事項
四 金融商品取引契約に係る金融商品市場又は金融商品市場に類似する市場で外国に所在するものに関する事項
五 金融商品取引業者等の資力又は信用に関する事項
六 金融商品取引業者等の金融商品取引業(登録金融機関にあっては、登録金融機関業務)の実績に関する事項
七 金融商品取引契約に関して顧客が支払うべき手数料等の額又はその計算方法、支払の方法及び時期並びに支払先に関する事項
八 抵当証券等(法第二条第一項第十六号に掲げる有価証券又は同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十六号に掲げる性質を有するものに限る。)をいう。以下同じ。)の売買その他の取引について広告等をする場合にあっては、次に掲げる事項
イ 抵当証券等に記載された債権の元本及び利息の支払の確実性又は保証に関する事項
ロ 金融商品取引業者等に対する推薦に関する事項
ハ 利息に関する事項
ニ 抵当証券等に記載された抵当権の目的に関する事項
九 投資顧問契約について広告等をする場合にあっては、助言の内容及び方法に関する事項
十 投資一任契約又は法第二条第八項第十五号に掲げる行為を行うことを内容とする契約について広告等をする場合にあっては、投資判断の内容及び方法に関する事項
十一 第七条第四号ニ(1)に掲げる権利に係る募集又は私募について広告等をする場合にあっては、競走用馬の血統及び飼養管理の状況に関する事項
さらに、金融商品販売法。
第四条 金融商品販売業者等は、金融商品の販売等を業として行おうとするときは、当該金融商品の販売等に係る金融商品の販売が行われるまでの間に、
顧客に対し、当該金融商品の販売に係る事項について、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為(以下「断定的判断の提供等」という。)
を行ってはならない。
こんなわけで、コンプライアンス上、投資に利益に関する表示や情報提供については最新の注意を払う必要があります。
特に、断定的な情報提供と思われる表現については要チェックです。
このような観点からこの広告を見ると、国債を持てる(持っている)人がモテるという仮説が統計的に証明されているのかについても検証が必要ですし、仮に統計上証明されたとしても、国債を買うことが直接モテることにつながるとは断定できないので、売り文句としてはちょっと怖いものがあります。
この表現、最後は「・・・か」と逃げていますが。
また、チラシを持ったお客さんが「国債を持ったらモテるらしいから国債を買いたい」とおっしゃったときに、担当者はかくがくしかじかで、絶対にモテるわけではないんですよ・・・などと説明するのでしょうか。
まあ、こんなことに目くじら立てなくても・・・というご意見もあるでしょうが、コンプライアンス担当者はこんな一見瑣末なことでも真剣に考えます。
特に最近は投資家保護の流れにありますし、万が一突っ込まれたときに理論武装できていないとやはり厳しいです。
まあ、「これからの婚活は国債への投資から!!」という財務省のお墨付きということでしょうか。
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一方でどの金融商品の広告を見ても投資経験のない人にとっては何がかいてあるのか分からないのも事実です。
他業界では当たり前のように考えられている広告戦略、イメージ戦略も金融業会では独自の工夫が困難ですが、そもそも金融教育によって基本的な金融知識が行き渡っていない以上、もっと間口としての戦略が大切になってくるのではないかと思います。
素人意見ですみません。
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業界として広告のあり方に制限がある中、いかに投資未経験者に訴えるかというのは難しい問題ですよね。
・・・だ!!と訴えられないわけですから、訴求力が弱くなるのは不可避ですし。
アメリカみたいに国民が投資にもっと関心を持って、ファイナンシャルプランナーのような専門家が身近な存在になればいいのですが。
もちろん、金融教育ももっと必要だと思いますが、今の教育界を見ていると・・・難しそうですね、残念ながら。
もっと世の中を知っている人間が教育界に増えたら、また状況も違ってくるのかもしれませんが。