重商主義vs重農主義

日本史上唯一とも言えるかもしれない、天下分け目の戦い・関ヶ原。

言うまでもなく、この戦いは豊臣秀吉死後の政権を決定づける戦いで、豊臣政権の維持を狙う石田三成と新政権を目論む徳川家康の戦いです。

後世から見ると、秀吉死後は家康があっさり天下をとったように思いがちですが、関ヶ原の戦いまでには壮大で熾烈な駆け引きがありました。

関ヶ原の戦いそのものではなく、それまでのプロジェクト進行に焦点を当てたのが、堺屋太一の「大いなる企て」です。

秀吉死後は家康が自らの天下を狙うことを早くから見抜き、三成は前田利家ほか家康以外の五大老、浅野長政を除く五奉行の結束を強め、家康の天下を阻もうとしました。

一方、家康は圧倒的な実力を背景に着々と諸大名の切り崩しを図ります。

加藤清正・福島正則ら武功派など一部のグループからは憎まれながらも情熱と勇気を以て結束を維持しようとする三成と、虎視眈々と旧政権の切り崩しを図っていく家康の静かな戦いは非常に見ごたえがあります。

また、三成と家康の対立の背景には、三成の重商主義志向(成長志向)と家康の重農主義志向(安定志向)があると指摘していますが、面白い見方だと思いました。

堺屋氏は、石田三成に中堅サラリーマンの大プロジェクト実行の原型を見ていますが、弱冠20万石の三成が250万石の家康に噛みつくために様々な策を企図し、五大老・五奉行を巻き込んでいく様子はまさに我々がプロジェクトを企画・遂行していく流れと重なります。

三成好きだけでなく、これから大きなプロジェクトに向かって行く人にオススメの一冊です。

巨いなる企て/堺屋 太一
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カテゴリー: 歴史人物(日本史), 読書 パーマリンク

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