アフガンの英雄

2001年9月11日。

人類にとって忘れられない日ですが、この2日前に、アフガニスタンで一人の英雄がこの世を去っています。

アフマッド・シャー・マスード

旧ソ連にアフガンが侵されたアフガン内戦からタリバンとの戦いまで、一貫してアフガンの独立と平和を求め、戦い続けてきたアフガニスタンの英雄です。

対ソ連では、若干20歳代にして、わずかな人数で作ったグループを率いてゲリラ戦を戦い続け、その本拠地から「パンジシールの獅子」とも呼ばれます。

勇敢に戦う一方で、ソ連の捕虜を自発的に開放するなど、人情にも厚く、これがのちにソ連の好感を引きつけることになります。

一筋縄ではいかない北部同盟のとりまとめに苦心する一方、タリバンとの戦いでも勇敢に戦い続け、首都カブール撤退後、本拠のパンジシールに追い詰められても諦めずに抗戦。

仲間が減り続ける中、タリバンの指導者・オマル師直々の降伏勧告にも「一人になっても戦う」と毅然とした態度で拒否。

最終的にはある程度勢力を回復しますが、2001年9月暗殺。享年48。

彼は敬虔なイスラム信者でありながら、原理主義者にありがちな排他的な考えではなく、平和と相互理解を基調とした世界との交流を目指していました。

また、非常に読書が好きで、タリバンによってカブールから撤退に追い込まれた時には3000冊の蔵書を一緒に避難させているほどです。夢は図書館を作ることだったとか。

いまだ安定しないアフガン情勢を見るにつけ、指導力、人望ともに申し分のないマスードの存在は本当に大きかったし、彼を失ったことはアフガンはもちろん、我々にとっても大変な損失だったと、彼のことを知った今にして思います。

また、国際社会に見放されつつ、周辺国や大国に翻弄されたアフガニスタンやマスード達を見ると、遠くの国のことに関心を持つ難しさと大切さを思い知らされます。アフガンに限らず、国際社会に翻弄されている国はきっと数多いことでしょう。

・・・というマスードの戦いを描いた本を読みました。

どうぞ、安らかに。

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