勝利の哲学

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8月末の衆院選で圧倒的な勝利を収め、政権交代を実現した民主党。
あまりの勝ちっぷりに警鐘を鳴らす声も聴こえます。
あくまで民意なので、民主党がコントロールすべきものでもないのですが、それはともあれ、今回は「勝ち方」について歴史のエピソードをご紹介します。
●百戦百勝は善の善なるものにあらず(孫子)
 孫子曰く、百回戦って百回勝つというのは、戦いにおいて一番の勝ち方とは言えない。
 なぜなら、戦えば自分も傷つき、自分の体力を減らし、結局自分の勢力を減らしてしまうから。
 すなわち、戦わずに相手の心をつかみ、味方につけるなり降伏させるのが最上であると。
 孫子の時代は中国に割拠した群雄がお互いに虎視眈々と侵略の機会を狙っている時代であり、自分の体力を保つことが非常に重要だったため、このような考え方が生まれたのでしょう。
 
  当時もそうですし、日本の戦国時代でも、あるいは現代の経営でも連戦連勝しながら体力をすり減らし、衰退していった例は枚挙に暇がありません。
 孫子にはほかにも「勝ち方」についての記載が多くあります。
 厳しい時代だからこそ、ただ勝つだけでなく、その勝ち方も非常に重要だったといえるかもしれません。
●軍勝五分を以て上となし、七分を以て中となし、十分を以て下となす(武田信玄)
 先日、読売・朝日・日経新聞が共同で開設する「あらたにす」を見ていると、民主党の圧勝に合わせて、歴史家の加来耕三氏が、武田信玄の言葉を紹介されていました。


 信玄が言うに、完勝は驕りを生じさせ、いい線の勝利は怠りを生じさせ、なんとか勝ったというときはまだまだ精進する励みになるということです。
 例えば、中間試験であまりにいい出来だと「もう勉強しなくても大丈夫」となり、そこそこいい点だと「まあ多少手を抜いても大丈夫」となり、何とか目標点に達した場合だと「期末も頑張らなくては」となる感じでしょうか。
 そして、期末試験で悲喜劇を味わう、と。
 前回の衆院選で自民党が圧勝した結果、国民や野党の意見に十分考慮していなかったのだとすれば、まさに驕りが生じていたのかもしれません。
 
 また、信玄のひとつ前の世代の武将である北条氏綱は、子の氏康に「勝って兜の緒を締めよ」という言葉を遺しています。
●最も大きな危険は勝利の瞬間にある(ナポレオン・ボナパルト)
 ナポレオンの語録に収められている名言の一つです。
 勝利が気の緩みや油断、おごりを生じさせ、その後の敗北の要因となってしまう、ということでしょうか。
 かくいうナポレオンも勝者のまま生涯を終えることはできなかったのですが。
 本当に勝利というのはつかむのも難しいですが、維持するのも難しいです。
 「創業と守成はいずれが難き」という話もそのようなことを意味しているのだと思います。

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