3.投資信託委託会社の業務
投資信託において委託の立場を担う投資信託委託会社では、実際にはどのような業務があるのでしょうか。
ここでは代表的なものについて取り上げてみたいと思います。
①ファンドマネージャー
投資信託の華と言われるファンドマネージャー。
担当するファンドの資産運用の責任を一手に担います。
株式や債券の売買をするには、マクロ経済や各企業について深く知ることが求められるとともに、売買そのものにもテクニカルな知識が求められるので、多くの知識が求められます。
ただ、最近は運用を外部の運用会社に委託するケースも増えているので、そういうファンドではその運用機関との調整が主な仕事となり、一般的なファンドマネージャーのイメージとは若干異なることがあります。
②アナリスト
株式や債券を売買するためには、その企業のことや経済全体の動きを知る必要があります。
そのような情報をファンドマネージャーに提供するのがアナリストの仕事です。
アナリストは企業訪問や説明会などで情報を仕入れてきたり、海外の経済情報の収集をすることになります。
アナリストも人気業種の一つです。
ちなみに、ファンドマネージャーもアナリストも、証券アナリスト資格は必須ではありません。
ただ、持っている方が信用を得られたりいろいろと有利だと思います。
③トレーディング
有価証券の売買にはブローカー(証券会社)とのやりとりや様々な取引方法など、専門的な知識が必要です。
特に海外の有価証券の売買が大きな役割を占めている昨今では、トレーディングの専門性は高まってきていると思います。
また、運用とトレーディングの分離も適切な運用上必要なことです。
そのような観点からトレーディング部門は独立していることが多いです。
④商品開発
投資信託はまず商品開発から始まります。
様々な金融技術や投資対象、法的規制の研究や顧客ニーズなどの把握を通じて投資信託という運用の器を作り上げていきます。
金融技術や投資対象、経済のトレンドや税制など、さまざまなことに通じていなければならず、難しそうな分野です。
⑤ディスクロージャー
投資信託は大切なおカネを運用しているため、法定の説明資料が定められています。
商品説明資料として目論見書、運用報告のための運用報告書などです。
また、月次(会社によっては週次)のレポートも作成が求められています。
これらの資料には、記載項目や様式もいろいろ定められており、これまた専門性が求められます。
他の業務に比べ一見地味ですが、やはり商品に対する深い理解が求められ、重要な業務です。
⑥販売会社開拓
委託会社は基本的に投資信託を自ら販売することはありません。
一方、委託会社の収入は投資信託の信託報酬であり、投資信託の純資産(残高)に比例します。
投資信託の残高を増やすのは販売会社の役割。
そのため、証券会社や銀行などに投資信託を売っていただくようお願いする必要があります。
販売会社に新しい投資信託を提案したり、新たな販売会社を開拓するのが販売会社開拓、マーケティングという業務です。
販売会社の担当者も当然金融のプロであり、そのような人たちに提案するので、投資信託やその周辺知識、あるいは機転が求められる仕事です。
⑦商品販売資料作成
販売会社が実際にお客さんに投資信託を販売するときには目論見書では難しいので、パンフレットやポスターなどを作ります。
このような資料を作るためには、資料の展開を考えることはもちろん、さまざまな統計・データを収集したりする必要があるため、商品性の理解に加え、外部情報の収集力が求められます。
もちろん、データ端末やパワーポイントの使用にも慣れなければいけませんし、細かい校正も必要。
また、金融商品取引法等で求められる要件もたくさんあり、そちらも知っておかなければいけません。
クリエイティブではありますが、結構大変なお仕事です。
でも、自分の作った資料が店頭に並ぶと、きっと嬉しいと思います。たぶん。
⑧計理
投資信託にも株式のように、毎日値段が付きます。投資信託の値段を基準価額と呼びます。
計理部門では、この基準価額を毎日正確に算出するために神経を使います。
こちらもトレーディングと同様、海外の取引が増えるとともにやりとりが大変です。
世の中には時価が獲得しにくい有価証券があったり、データの扱いが難しかったり。
それでも、基準価額の算出は投信会社の最重要業務の一つ。
縁の下の力持ちと言えるかもしれません。
⑨コンプライアンス・法務
投資信託は法令の塊。
直接関係するだけでも、金融商品取引法、投資信託法があり、さらに信託法や投資信託協会の規則・・・と枚挙に暇がありません。
もちろん、会社ですから会社法にも気を使うし、その他の一般的な法律にも必要に応じて留意しなければいけません。
昨今コンプライアンスが注目されている一方、法令は日々変化しているので、コンプライアンス部門の役割は非常に重要です。
⑩リスク管理
投資信託はお客さんの大切なお金を運用しているため、お客さんに忠実に、かつ専門家として適切な注意をして運用に臨まなければいけません。これは単なるポリシーではなく、金融商品取引法にも定められています。
そのため、運用会社としては好き勝手に運用するのではなく、リスクの管理をしっかりしておかなくてはなりません。
リスク指標をモニタリングし、不適切な運用を防ぐのが運用リスク管理の目的と言えると思います。
多額のおカネを預かる運用会社にとって、リスク管理が非常に重要なのは言うまでもないでしょう。
⑪総務・人事・監査等
委託会社も会社ですから、一般の会社と同じように総務や人事、監査部門などがしっかりあります。
これらの見方はあくまで私の私見ですので、誤りもあるかもしれませんが、あくまで参考程度にお考えください。
多分、こんな感じに免責事項をつけたり、断定的表現をしないあたりが投信会社の人間なんでしょうね。