分別も久しくすればねまる

日々仕事をしていると、考え込んでしまった挙げ句、巧くプロセスを進めるタイミングを逃してしまったりすることがあります。

先日も関係者からあるメールが来て、対応を熟慮しているうちに他に人がさっさと処理してしまったと言うことがありました。

そんな時、ふと思い出したのが、「分別も久しくすればねまる」という言葉。
ねまる、とは九州の方言で腐る、ダメになると言う意味らしいです。

これは、九州の戦国大名・竜造寺隆信が残した言葉です。

彼が九州の覇権を争っている時、中央では豊臣秀吉が急速に勢力を拡張していました。
当然、龍造寺家でも秀吉につくのか、つかないのか検討することになります。

色々意見は出ますが、なかなか対応がまとまりません。
そんなとき、隆信がいったのが、「色々考えるのはいいことだけど、時間をかけすぎるとせっかくの熟慮も無駄になる(=分別も久しくすればねまる)。ここはとにかくすぐに結論を出さなくてはいけない。」

ということで、隆信の判断で秀吉につくことが決まりました。
実際には龍造寺家が秀吉傘下に入る頃、隆信は島津家との戦いで戦死していると思われますが、一代で北九州に大勢力を築いた隆信らしい逸話です。

自分も仕事でああだこうだ考えているうちに、肝心のタイミングを逃した結果、アウトプットの評価を下げてしまうことがあり、隆信らしい思い切りの良さが欲しいものだと思うことがよくあります。

ちなみに、隆信は思い切りが良すぎたのか、家中の粛正などもやりすぎて、人望を失ったりする失敗も犯しているので、思い切りだけでもよくないみたいで、要はバランスが大事という当たり前の結論になりそうです(?)。

いずれにせよ、今後は少し思い切った仕事の進め方を心がけようと思います。

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内閣総力戦研究所

かつて日本が太平洋戦争に突入する前に、『日本必敗』の結論を出していたことで知られる内閣総力戦研究所

かねてより興味があったのですが、この度幸運にも総力戦研究所について記された本を読むことができました(こんな記事を書いてました)。
まさかこのテーマでも書籍があったとは、ちょっと驚きです(ないわけない?)。
ちなみに著者は猪瀬直樹前東京知事でした。

内閣総力戦研究所が本格的に稼働したのは昭和16年の4月。
太平洋戦争開戦のわずか8ヶ月前でした。

元々は英国に同じような組織(Royal Defence College)があり、それをベースに設立されたそうです。英国でも軍人と文官が集まって学んでいたそうです。

第一次世界大戦以降、戦争のあり方はこれまでと異なり、国家の総力を挙げて遂行されるものになっていました。
ただ戦闘に勝てば良いのではなく、資源配分・生産・物流を含めた経済全体を維持し、戦争を続けなければいけません。
特に米国・英国といった大国との戦争は総力戦になることは間違いありませんでした。

そのような事情から、軍部だけでなく各省庁・民間企業の英知を集めて計画を検討することが必要になっていました。
それ故に、米英との戦争が近づいている時期に内閣総力戦研究所が設立されました。
ちなみに、英国に倣って「大学」という名称にしたかったようですが、法令の関係で研究所となったそうです。

とはいえ、いざ設立となっても何をすべきかを理解していた人は学生側にも教員側にも少なかったようで、最初の時間割には大学さながらに体育の時間まであったようです。
既に社会人となって第一線で働いている面々には大変不評だったとか(ただ球技はみんな楽しんでいたみたいです)。
一方で海軍の演習を見学して山本五十六連合艦隊長官と議論したりもしていたり、見聞を広げるためのプログラムも用意されていました。

そして7月12日、内閣総力戦研究所最大の研究成果である「総力戦机上演習(第2期)」が始まります。
各省庁・民間企業から集められた研究生たちは、青国(日本)の各省庁・公的組織の大臣や長官などの役割を割り当てられ、色々なシナリオの下、教官たちとロールプレイングを行うことになります。ちなみに教官たちはロールプレイングの調整を行うと共に、(政府がコントロールできなかった)統帥部として政府と対する役割を担いました。
ちなみに総理大臣は農林中金出身の窪田角一氏。最年長かつ民間出身で中央象徴の縄張り争いに関係しなかったことから選ばれたそうです。

政府(研究生)の中でも各シナリオへの対応について意思統一が難しい上、統帥部もまた政府のコントロールをよしとしないため、喧々諤々の議論が続きます。
シナリオは随時追加されていきますが、それが現実の国際情勢とリンクしていたりするので、非常に緊迫感のある議論になったようです。

そして、彼らは最終的に日本必敗との結論を出しました。
彼らの研究成果は、戦争4ヶ月前の8月に東条内閣に報告されました。
しかし、東条内閣はその研究成果を受け入れることはありませんでした。
これこそが、本書のタイトルである『昭和16年夏の敗戦』です。

研究生はそれぞれの組織で将来を嘱望された人物だけに多くの人が出世を遂げたそうですが、政治家になった人はいなかったそうです。

彼らの英知を結集した研究成果が当時の内閣の容れるところとならなかったことは残念ですが(何らかの参考にはされたかもしれませんが)、色んな組織の英知を集め、色々な政策や国家・社会の行く末を純粋に議論する、という場は非常に興味深いと思いますし、今後も有意義なのではないかと思いました。

役所等の超党派での議論の場というのは聞いたことはありますが、さらに幅広い立場の人が議論・シュミレーションに参加し、その成果が何らかの形で政策やビジネスに反映される、という場があるといいな、と本書を読んで強く感じました。
具体的なイメージはまだないですが、いつかそんな場を作ってみたいとも思ったりしました。

日本人はなぜ戦争をしたか―昭和16年夏の敗戦 (日本の近代 猪瀬直樹著作集)/小学館
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金融の世界史

仕事で色んな金融の仕組みや制度について調べていると、その仕組みや制度ができた過程について気になったりすることがあります。

特に様々なリスク管理のシステムやバーゼル規制といった金融規制は、その導入の背景や目的が非常に重要です。

一方、金融市場や保険、デリバティブといったものは、自然発生的に成立したものだと思いますが、そもそも誰がこんな便利な仕組みを思いついたのか、ということについ今日身をもってしまいます。
自分だったら絶対思いつかなかったでしょうから。

そんなことを考えながら日々仕事をしていると、偶然、証券・投資業界の検査機関である証券取引等監視委員会の大森事務局長が、面白い本の紹介をされていましたので手に取ってみることにしました。

タイトルは、そのものズバリ、「金融の世界史」。
著者は、以前紹介した「日露戦争、資金調達の戦い」の著者・板谷敏彦氏です。
これだけでも関心を持ってしまいます。

上述の大森氏の書評では「官民を問わず金融に携わる全ての人にとって、備えておくべき常識のデータベース」と評価されていますが、その評の通り、融資や株式・債券、さらにはデリバティブ、投資理論といったテーマを横軸に、時系列を縦軸に、マトリクス形式で分かりやすく話が展開されています。

本書によると、金融の発祥は紀元前3000年前、すなわち今から5000年も前のメソポタミア文明にさかのぼるそうです。
肥沃な土地で、自給自足を超えた生産が可能になったことから様々な統治機構や職業が生まれ、さらにそこから融資や不動産取引が生まれたそうです。
そのころはまだ貨幣はなかったそうですが、契約や利子という概念があり、既に現在の金融につながる要素があったとも言えそうです。

また、面白いことに(株式や債券の現物取引から派生した)金融派生商品と総称されるデリバティブ取引ですが、その一つであるオプション取引や先物取引は、実は株式や債券の登場よりも先だったそうです。もちろん、株式や債券のデリバティブではありませんが。
そして、オプション取引の歴史は、やはり紀元前のギリシャにさかのぼるようです。

人類が様々な生産活動をするなかで、融資や為替、保険といった金融の仕組みが自然発生し、それらは人類のビジネスの高度化や政治との摩擦や協働といった関わり、時には大きな事件や事故を経て、現在の形に近づいてきています。
ちなみに、バブルで有名な南海会社も、国債も政府の戦争による巨額の債務に端を発していたりして、良くも悪くも政府部門と金融システムとの関わりは興味深いです。

金融の中心となる都市も、時代によって異なります。
16世紀頃まで、北ヨーロッパの商業・金融の中心はベルギーのブリュージュだったのですが、それがスペインに占領されたことで、多くの人がその北のオランダ・アムステルダムに移り、アムステルダムが国際金融の中心になります。
しかしながら、今度はそのアムステルダムがナポレオンに占領され、アムステルダムを始めとする欧州各都市の金融業者が、既に金融事業が発展しつつあったロンドンに逃亡し、ロンドンが国際金融の中心地になります。
しかし、1915年の第一次世界大戦では、米国が英仏の多額の国債を買い支えたニューヨークに国債金融の中心が移り、現在に至ります。
ちなみに、1905年の日露戦争において日本は英国だけでなく米国でも国債を発行しており、両市場における発行において米国の金融業者が大きな役割を果たしていることからも、ニューヨークの勢いがわかります。
また、1896年にはダウ・ジョーンズから世界初の平均株価指数が発表されており、平均株価指数という概念の歴史の長さにも驚かされます。

本書が示すように、金融商品も制度も、金融都市も、それを取り巻く環境によって常に変化しています。
今日も新聞をにぎわす事象があり、それが明日の金融商品・制度の変化につながるかもしれない。そう思うと、毎日の事象を考察するのが少し楽しくなりそうです。
それと同時に、小さいなりに自分もその担い手になることがなることができるかもしれないと思うと、仕事に張り合いも出そうです。

大森氏の書評の通り、各種金融商品の成立・進化の背景と時代の流れがよく分かる、非常に充実した内容でした。

金融の世界史: バブルと戦争と株式市場 (新潮選書)/新潮社
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次なるステップへ

8月ももう下旬ですが、まだまだ暑いですね。。。
いつになったら涼しくなるやら。
春よ、来いではなく、秋よ、来いと言いたくなります。

それはさておき、ご報告が遅くなりましたが、この暑い夏の最中、今月から新しい会社で働いています。
前職と同様、外資系資産運用会社でコンプライアンスを担当しています。

運用会社のコンプライアンスといっても幅広い業務があるのですが、現在担当している業務はこれまで担当してきた業務と毛色がかなり違っていて、勉強することが多いです。
大変なこともありますが、新たに色んなことを知ることができるのは新鮮で楽しいです。

前職でもそれなりに幅広い業務を担当していたこともあり、現在の担当業務についても一人前になれば、運用会社のコンプライアンス業務については一通り経験があるという状態になれそうです。

そうなると運用会社のコンプライアンス担当者として更なる価値が付き、将来の選択肢も広がっていくと思いますので、一つ一つ課題をクリアしていきたいと思います。

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ボスキャリに関するQ&A

ご無沙汰しています。
前回更新してから、気がつけば半年以上経ってました…

この間、公私ともに色々ありまして、何か書こうと思いながら、なかなか投稿できていませんでした。

最近、ようやく落ち着いてきたところ、ちょうどボストンキャリアフォーラムについての質問がありましたので、質問者の方の同意を得て、そのQ&Aを載せることにしました。
これからボスキャリの準備をされる方に、少しでもお役に立てたら幸いです。

なお、これはあくまで私のケースに基づくものであり、また就職活動で失敗した部類に入る人間の回答であることをご承知置きください。

(1)業界分析、企業分析はどのようにされましたか?

企業分析についてはウェブサイトを見るなどのほか、できるだけ現職の方に話しを聞くようにしました。
友人の伝手やLinkedInなどを使えば、ある程度色んな会社の方にお話を伺うことができると思います。
某社の方には面識がないにも関わらず、色々教えて頂いたほか、人事にプッシュして頂くなどのお力添えをいただいたこともあります。

特定の業界に関心があった訳でもないので、業界分析は企業分析に付随する程度でした。

(2)SPIなどの筆記試験はありましたでしょうか?あった場合どのような物を使って対策なされたでしょうか?

ボスキャリについていえば、筆記試験はありませんでした。
ボスキャリ以外の場面では筆記試験を受けたこともありますが、特に対策はしていませんでした。
ただ、戦略コンサルなどでは特別な対策が必要な状況もあるかもしれません。

(3)ボストンキャリアフォーラムにおいて、フォーラムサイト上の企業ページでは、アメリカのような具体的なポジションに申し込むわけではなく、総合職事務系か技術系かのような大まかな区切りしかないように見えます。企業からどのように希望職種を聞かれ、伝えたでしょうか?

ご指摘の通り、特に日系企業においては応募する職種が細分化していることは稀で、基本的に新卒同様総合職というカテゴリーでの扱いになります。
面接の中ではこれまでの経験からどういうことができる、どういう業務を希望しているということは話の流れでいえますが、その程度です。
特に日系企業においては、面接の内容がその後の配属・業務内容を保証するとも言えないのではないかと思います。

(4)どのようにその会社、またはポジションにおけるニーズ(その会社、ポジションで抱える問題)を把握しましたでしょうか?

上記の通り、ウェブサイトを見たり、人に話を聞いたりする程度でした。
ボスキャリではjob descriptionも曖昧なので、最終的には面接で聞くことになるのではないでしょうか。
その点、転職エージェントを使った転職の場合、事前にjobdescriptionがあるので、会社・ポジションのニーズやそれにどう応えるかを考えるのは用意だと思います。

(5)ブログを拝見し
CSR関連にキャリアのご興味がおありかと存じます。応募先のポジションには必ずしもマッチされなかったと思います。直接関係のないポジションに応募された際、自分の興味をどのように伝え、アピールに使われたでしょうか?

その場合、あまり
CSRには触れませんでした。
アピールの仕方にもよるかもしれませんが、基本的にCSRは面接でウケるテーマではなく、面接者もあまり関心を持ってくれない印象でした。
それよりは自分のこれまでの経験・専門性をアピールする方がよいと感じました。

(6)面接練習はどのようにされたでしょうか?

面接は学校の先輩に
Skypeで付き合ってもらったり、学校の就職課の担当者に模擬面接を頼んだりしました。
また自分でも面接の様子を録画して、声の出し方、話し方を修正していました。

(7)自己
PRや強みは、どのように見つけブラッシュアップしていったでしょうか?

本当は人に聞くのが良いと思いますが、基本的には自分で考えていました。
自分の日々の生活を振り返ったり、他人からのコメントを振り返っていくつかピックアップしていました。
それに具体的なエピソードを紐付けて、それがどのように仕事で活かせるか、ということを掘り下げるようにしていました。

(8)履歴書、職務履歴書などは応募先やポジションによって手直しされたでしょうか?

特にしていないです。

(9)ボストンキャリアフォーラムで内定頂いた際、給与の提示などはすぐにあったでしょうか?

私の場合はボスキャリでは給与の提示はなく、1ヶ月後に郵送で、給与の額が記載されたオファーレターを頂きました。
 

(10)卒業後、今の会社にお勤めになられたと思いますが、ご経験から給与のアップは卒業前後で
MBAホルダーはどれくらい期待できるかと感じられているでしょうか?

私の場合、日系から外資系への転職であり、また英語ができるということが評価されたこともあり、給与アップにつながりました(ボスキャリ経由ではありません)。

ただ、それまで数多くのポジションに応募しましたが、
MBAだから給与のアップが見込めるとも言えず、多くのケースで前職の給与+αであったり、給与が下がるということもありました。

投資銀行や戦略コンサルなど、業界として給与が高い場合は未経験であったり若年であったりしても相当の給与アップが見込めると思いますが、多くの場合、“MBA”というだけで給与アップにはつながらず、業界・前職の給与水準、年齢、経験とポジションのrequirementsとの親和性、当該ポジションにおける英語力の要否といった要素の方がむしろ給与に影響するように思います。

(11)覚えている範囲で、ボストンキャリアフォーラムにおいて、企業からどのような質問を受けたでしょうか?

ボスキャリでの面接では、
・バックグラウンド
・志望動機
・自分の強みと弱み
・どのように貢献するか

といった、一般的な質問が主だったように記憶しています。

私が面接したのは金融機関(投資銀行ではない)がメインでしたが、コンサルや投資銀行などではユニークな質問があるかもしれません。

(12)曖昧な
Job Descriptionの中で、ボストンキャリアフォーラムでの面接の時、CSRの興味についてお話されたでしょうか?もしされた場合、企業側の反応はどのようなものでしたでしょうか?

基本的に
CSRについては話さなかったです。
一つだけ
CSR関連のポジションを受けましたので、その時にだけ話しました。
ただ、一般的に面接の担当者は
CSRそのものについては大した反応は示さないものと思われます。

(13)ボストンキャリアフォーラムでいただいた内定を辞退する際、理由はなんでしょうか?
辞退決断にあたり、誰かに相談してアドバイスいただいたのでしょうか?私費留学としては非常に悩ましい問題かと思ったため共有していただけると有り難いです。

条件面で折り合わなかったこと、及び今後のキャリアにおいてその給与がベースとなる恐れがあったこと(転職時の給与は現在の給与を基準に決められることが多いです)もあり、辞退しました。
無論、自分の市場価値として受け入れられなかったということもあります。

本件については、誰かに相談することもなく辞退しました。

ただ、相談する場合はクラスメイトや就職課の人などに意見を求めるといいと思います。私の印象ではボスキャリで就職を決めた人は必ずしも多くなく、またボスキャリだから良いポジションに決まりやすいということもないため、あまりボスキャリにこだわらず、エージェントなどを幅広く使った一般の転職活動も視野に入れた方が良いと思います。

そちらの方が選択肢も広がりますし、より自分にあったポジションを見つけられるように感じます。
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以上、これからボスキャリに臨まれる方のご参考になれば幸いです。

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CSR会計を導入する

CSRを考えるにあたってよく課題として挙げられるのが、「CSRを企業価値貢献としてどう評価するか」、「CSRをどのように数値化するか」ということです。

そのヒントとなるのが「CSR会計」。まだまだ発展途上のCSR会計ですが、CSR会計の考え方や事例などが説明されています。

CSRの数値化が進めば、税制やSRIなど様々な応用が効くと思われますので、是非研究を進めていただきたいと思います。
同時に、各社のディスクロージャーでもCSR会計の取り組みが進めば面白いのではないかと思います。

昨今ではSROI(Social Return on Investment )の議論が進んでいますので、それがCSR会計の発展にもつながることを期待しています。

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