Fintechの可能性

先週の木曜日は無事に退社できたので、関心のあったFintechの授業に出ることができました。

今回のテーマは、「Fintechは銀行の市場をどのように侵食(代替)できるか」というもの。

まず、銀行の役割と強みについて議論があるわけですが、ざっくり言えば、銀行とは「預金プラットフォームと審査機能を武器に資金需要に応える」存在といえます。

そのような銀行に、Fintechはどのようなインパクトを与えるのか。

審査というのは、貸手と借手の間における情報の非対称性を解消することであり、そのために様々な情報を基に借手の信用性・信頼性を評価することです。
判断の根拠となる情報は多種多様で、定量的なものもあれば定性的なものもあり、また検証がしやすいもの(情報の硬度が高い)もあればそうでないものもあります。

例えば、ある人が信頼できるかどうか、ということを判断するにあたっては、勤務先や家柄で判断する方法もあれば、その人の言動で判断することもできます。
このうち、前者が情報の硬度が高く、後者が低いということになりますが、これまでは言動や身なりといった情報は身近な限られた人しかアクセスできず、したがって、知り合いでない人はその人の信頼性を判断することが難しかったという状況でした。

交友関係を築くだけならそれでもいいのですが、ソーシャルレンディングのように、知らない人にもお金を貸す(ためのプラットフォーム)というビジネスを考えるなら、このような情報の非対称性は解決しなければならない問題です。
財務諸表もない(あっても信用できるかわからない)、人柄もわからない、プロジェクトがうまくいくかもわからない(成功しても分配するかもわからない)、ではなかなか資金の提供はできません。

しかし、最近ではインタビューや動画から人格も定量的、統計的に分析ができるようになっているようで、このような情報が硬度の低い情報の分析を可能にし、ソーシャルレンディングなどのP2Pビジネスにおける情報の非対称性の解消に貢献することが期待されています。

このような人格、言動の分析は金融に限らず、人事や教育、結婚相談所など、幅広い分野での活用が見込めそうで、今後の展開が楽しみであると同時に、自分の知らないところで自分がどう分析されて、どう扱われるのかを考えると、少々身震いする気持ちもないでもありません。

また、Fintechの隆盛は監査などの周辺分野にも影響を与えることが想定され、それらのあり方についても深く考える必要があることが示唆されました。
もちろん監査だけでなく、インサイダー取引や相場操縦などの市場モニタリングやコンプライアンスについても同様のことがいえそうです。

Fintechの個々の動きというより、Fintechは何を変えるのか、という本質を考えさせられたひと時でした。
個々の動きを知ることも面白く、大切なことですが、やはり本質について考えるということは、Fintech時代に自分はどのように対応するべきなのかということを考えるにあたって最も重要なことだと思うので、大変勉強になりました。

続きが今から楽しみです。

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研究内容発表

博士課程では、指導教官について博士論文を執筆するということだけが要件なので、ほぼ自分(と指導教官)だけで完結させることが可能なのですが、自分の考えを説明して、色んな人から意見をもらうこともよい論文を執筆するために必要だと思います。

そういうこともあってか、私が所属する指導教官のゼミ(同じ指導教官につく人が集まって意見を言い合う授業)では、それぞれが研究内容や検討内容を報告し指導教官や所属する(社会人)学生が質疑応答をすることになっています。

先日、今年度初回のゼミがありましたが、新入生ということで早速研究テーマを発表することになりました。

私が博士課程で研究しようと思っているテーマは「投資信託委託会社(資産運用会社)の忠実義務」という内容で、投資信託業界のある実務慣行に基に、投信会社の忠実義務について考えていこうと思っています。
※投資信託委託会社(投資運用業者)は投資家のために忠実義務・善管注意義務を負うことが、金融商品取引法第42条で定められています。

同じ指導教官に付くということは、ある程度似通ったバックグラウンドと関心事があると思っていましたが、やはり金融関係のお仕事をされている方がほとんどでした。
とはいっても業態は様々で、投資信託委託会社に勤めている方は他にはいませんでした。
ちなみに職位は若手から役員の方までいたのですが、学校という場ではフラットに話せるというのは非常に魅力的な環境だと思います。

それはさておき、いざ発表です。
投信業界の人はいないため、最初に投資信託の仕組みや取り上げる実務慣行を簡単に説明したうえで、それがなぜ忠実義務の観点から整理されるべきなのか、ということを話しました。
投資信託の実務自体がなかなか業界外の方には理解されにくいこと、また業界内ではかなり議論はされている問題であり、論点がクリアになっていることもあり、質問についてはしっかり答えられたと思います。

発表自体はそれでよかったのですが、業界内で議論がかなりされていることから、博士課程で掘り下げていくには少々テーマが狭いのでは、という指摘をされました。
博士課程というのは、仰々しく言えばこれまでの人類の知見に新しいものを加えることが求められますが、業界内で錚々たる経験者が議論を深めていく中で、博士号に足る新たな知見を加えることは容易なことではありません。

そういう指摘もあったので、研究の方向性については熟慮する必要がありそうですが、まずは研究の第一歩を無難に踏み出せたのはよかったです。

今後、研究で苦悩するのは間違いないと思いますが、頑張って日本の投信業界に、博士号に値するような新たな知見を提供し、少しでも業界の発展に貢献していけたらと思います。

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北条氏康の子供たち

戦国時代、関東を席巻した後北条氏ですが、関東に本格的に飛躍を果たしたのは、三代目当主・北条氏康の時代になります。

ざっくり言うと、氏康の前半生は関東の既得権益勢力との戦い、後半生は新たに関東に入ってきた勢力との戦いといえるのではないかと思います。
具体的には、前者は扇谷・山内(関東管領家)の両上杉家、後半は越後長尾家・甲斐武田家等との戦いになります。
もちろん、前半期においても甲斐武田家との戦いがあったり、後半期においても里見家や佐竹家などの関東諸勢力と戦っているので一概には言えませんが、概要としてはそのように言えるのではないかと思います。

そして、前半期の終盤から後半期にかけて関東に大きく勢力を広げていくのですが、そこで大きな役割を担ったのが、氏康の子供たちです。
氏康は子だくさんで、その子女にそれぞれ重要な役割を担わせ、彼らがその役割を果たしていくことで北条家は発展していきました。

では、氏康の子供たちは具体的にどのような人物で、どのような役割を担ったのか。
そのような観点から北条家の人たちとその発展を描き出したのが、黒田基樹氏・浅倉直美氏編著「北条氏康の子供たち」です。

本書は、氏康の息子、氏康の娘、北条家の城の三編からなっていて、それぞれ専門家の方による紹介・考察が掲載されています。
氏康の子供たち、というと嫡男の氏政をはじめ、活躍した氏照・氏邦・氏規がよく取り上げられますが、それ以外の息子・娘についてもその位置づけや果たした役割について考察されていて、大変勉強になりました。

本書において特に印象に残ったのは、氏邦の北条家中における位置づけは変動があり、兄弟中不動の三番目(氏政・氏照・氏邦・氏規)ではなかったことと、政略結婚で嫁いだ女性とその夫の人生はシンクロし、その人生を語ることはそのままその夫、あるいは嫁ぎ先の家を語ることになる、ということです。

氏邦の位置づけですが、兄弟中第3位の位置づけは最晩年のもので、当初は氏規の下で、かつ氏康の弟・氏堯の息子で氏康の養子とされる氏忠・氏光よりにも下位に位置づけられていました。
氏邦と氏規のどちらが年長かが実は特定できていないという事情もありますが、それ以上に氏邦が庶出で、氏政・氏照・氏規と異母兄弟であったという可能性が指摘されます。

ともあれ、兄弟中では下位の方に置かれた氏邦ですが、最終的には兄弟中第3位という位置づけになります。
その背景には、氏邦の担ってきた役割があります。
氏邦は秩父地方に本拠を置き、上野を所管し上杉氏と最前線で戦い、その後の越相同盟の締結にも貢献しています。
また、信長が上野に進出してからは、本能寺の変後の神流川の戦い、天正壬午の乱などでも活躍します。
このような氏邦自身の活躍や役割の増加が家中での地位向上につながったと見られています。

一方、彼が尽力した越相同盟は父・氏康死後に破棄されていて、結果として外交における彼の発言力が低下し、兄・氏照が外交に復帰したことによって兄弟内に軋轢が生まれ、小田原征伐時には氏照をはじめ主要な一族が小田原城に籠城する中、氏邦は居城・鉢形城に籠城するといった方針の違いを生んだとも推測されています。
一般に北条氏は一族の結束が固いといわれていますが、それでもこういう相克があったというのは興味深い指摘でした。

氏邦に限らず他の人物にしても、これまで持っていた印象と異なる研究結果が紹介されていて、非常に面白かったです。

また、氏康の娘の人生についても紹介されていますが、彼女たちの人生もまた興味深いものです。
彼女たちは政治や戦いの最前線に出ることはほとんどありませんが、彼女たちの動向はその夫や嫁ぎ先の家の動向であり、彼女たちと同時に夫や家中の動きを知ることができる、ということについて読みながら気づきました。
それは、彼女たちが妻・母という立場でその夫や息子をサポートしたことと同時に、北条宗家の娘の存在が、嫁ぎ先の家にとって非常に重要であったことを意味します。
北条宗家の娘と縁組をすることは、家臣であれば当然ながら家格向上につながりますし、北条家の外の大名家であれば、特別な同盟関係になります。

そして、彼女たちは、嫁ぎ先の当主の妻・母という立場で、あるいは北条宗家の娘という立場で大きな影響力を持ち、それは夫や家中の動きと一体のものとなっていきます。
考えてみれば当然のことかもしれませんが、氏康の娘の紹介、といったときに彼女たちの個々の特徴(人格など)などより嫁ぎ先の話が多くなっていることから、当時の名家の娘の役割が伺えますし、現代に生きる自分からみると大変そうだと感じてしまいます。
もちろん、政略結婚であっても仲睦まじく暮らしていれば幸せだったと思いますが。

他にも、難攻不落を誇った北条家の城の発展史が紹介されていて、その発掘結果などから構造物としての城の発展のみでなく、北条家の文化度、交易の発展度合いなどが垣間見えるといった研究も興味深いものでした。

北条家は他の戦国大名に比べると地味な印象がありますが、魅力的な人物はたくさんいますし、研究が進んでより彼らの実像を知ることができれば、と研究者の皆さまのご活躍に期待しています。

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2017年上半期の授業

今月から法学博士課程に就学することになりましたが、私の大学では博士課程の場合は授業で単位を取ることは必須となっていません。

しかしながら、自分は法学の教育を受けたことがなく、また関心のある授業がいくつかあったので、今年度の上半期は2つ授業をとることにしました。

一つ目はFintechに関する授業。
FintechとはFinanceとTechnologyを合わせてできた造語で、新しい技術を使用して金融業務にイノベーションを起こすことを指します。
銀行や保険といった各種金融で取り組みが進められており、資産運用業界でもAIを使った投資判断を行うなど、Fintechという言葉を目にしない日はないといっても過言ではないくらいです。

これからの金融業界を大きく変化させる可能性のあるFintechとはどのようなものか、またその最前線にいる人はどのようなことを考えているのか、ということを知るため、この授業をとることにしました。

・・・が、先日の初回の授業は仕事が忙しくて出席できず(汗)
次回以降は何とか出席できるようにしたいものです。

二つ目は金融商品取引法に関するもの。
資産運用会社でコンプライアンスの業務を担当していると、金商法を意識しないことはありません。
運用会社でのコンプライアンスの経験も長くなってきましたので、金商法や関連する実務慣行についてはそれなりに理解しているつもりです。

しかし、業務で関係するのは金商法のほんの一部分で、理解ができていない部分の方が多いのが実態です。

そこで、金商法の全体像を把握するべく、また法学の授業を受けることで法学の素養を身につけるため、この授業を受けることにしました。

この授業は判例研究がメインで、自分で判例分析をして報告するという宿題を早速出されました。
判例研究、判例分析をしたことはないのですが、博士論文を書くためには必須のスキルだと思いますので、少しでも法学の考え方を身につけたいと思います。
このほかに必須の授業として、研究科全体で行う研究報告会的な授業とゼミがあります。
研究報告については博士課程の人も必須で、現在報告のプレゼンを作成中です。
自宅で作業をすることになり、学生に戻ったという実感が湧いてきます。

業務が終わってから授業に参加するのは大変なことではありますが、これまで知らなかったことを知り、スキルが上がっていくのを実感するのはとても楽しいことでもあります。

まだ始まったばかりですが、息切れしないように学習を続けていきたいと思います。

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法学博士課程に入学しました

自分は現在投資信託委託会社でコンプライアンス(法令順守)の業務を担当していますが、この業務を始めて結構な時間が経ちました。
以前はコンプライアンス以外の業務も経験してみたいと思い、MBAを取得したりしていろんな可能性を探ってきましたが、それ以降もコンプライアンスの仕事をすることになり、こうなればコンプライアンスの専門家として生きていくしかない、と腹をくくるようになりました。

コンプライアンスの仕事とはその名の通り、会社の業務が法令に則って行われるようにルールを整備したり、チェックを行ったりする仕事です。
法令順守というからには法令を理解したうえで業務を遂行することが求められるのですが、判断の基準には法令そのもののほか、業界のルールや社内規程、それに加えて業界の慣行などがあり、これらを理解したうえで判断を行う必要があります。

しかし、投資信託は複雑な仕組みの制度であることに加え、昨今では海外の運用会社に運用を委託したり、海外の投資信託を組入れたり、あるいは日本の運用会社が海外で販売されている投資信託の運用を行うなど、海外との関係も深くなっていて、さらに複雑になっています。

そのような要因もあり、法令の文言をそのまま読むだけではなく、それを投資信託のビジネスの実態にいかに沿う形で解釈するかということが重要になっています。

そのようなこともあり、業界としても各種のルールや慣行ができているわけですが、それが本当の意味で法令の趣旨にかなっているか、あるいは投資家に対して責任を果たすことになっているか、ということは判断が難しいケースもあります。

もちろん、当局や業界のルールや指示に従っていればペナルティを受けることはない、という意味ではそれらを把握しておけば会社に対するコンプライアンスの責務は果たされるのですが、それが本当にあるべき姿であるのか、もっと良いあり方はないのか、ということを問い続け、改善を目指すことも業界のプロフェッショナルとして重要なことです。

そこで自分自身も、投資信託ビジネスのあり方について長らく課題であると考えていたテーマについて研究すべく、法学の博士(後期)課程に入学することにしました。

博士課程とは一般的には研究者の卵を要請する課程であり、これまでの研究の集大成を博士論文として昇華させることが求められています。

一方、自分はといえば、学部は経済学部で、修士課程は経営学(MBA)と、法学について体系的に教育を受けたことはなく、また修士論文も書いたことがないという、法学については素人とっても過言ではない状態です。

しかしながら、法学と実務の橋渡しをすることによって業界の発展に貢献するという目標を果たすには博士課程が適しており、その考えを入学試験においても理解していただき、法学の博士課程に入学することになりました。

専門的な教育を受けていないということで苦労をすることも多々ありますが、自分の目標を達成し、キャリア的にも新しい挑戦ができるように頑張っていきたいと思います。
願わくば、標準期間の3年間で博士号を取得したいと思いますが、それ以上の時間がかかっても今後の目標のために最後まで頑張りたいと思います。

今後、博士課程での体験についても綴っていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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就職活動・社会人1年目を頑張るあなたへ(就職活動編)

前回は就職活動・社会人1年目の方向けに、過去の自分に向けてのメッセージの形で生活のアドバイスを送ってみましたが、今回は就職活動について書いてみたいと思います。

今でこそ人並みに生きていますが、就職活動では超のつくほどの劣等生で、惨憺たるものでした。

就職活動は大学卒業時と(社会人になった後)MBA中・終了時の2回経験しましたが、どちらも苦労の連続でした。
新卒時は比較的売り手市場でしたし、MBA卒業生は比較的容易にいいところに職を得る傾向があるので、なおさら自分の劣等生ぶりが際立っていました。

本来はそんな人間が就職活動についてアドバイスをすることはおこがましいのですが、そんな人間のアドバイスこそ役立つことがあるかもしれませんし、あくまで過去の自分に伝えたいことですので、その辺はご海容ください。

【就職活動時のアドバイス】
1.自分を差別化する

事実かどうかはわかりませんが、就職活動中にはよく「副部長」「副キャプテン」が登場すると聞きます。

リーダーシップをアピールしつつ、部長・キャプテンだと色んなリスクがあるから「副」なのでしょう。

しかし、これは非常にもったいないアピールの仕方だと思います。
というのも、就職活動で勝ち抜くということは他の人と競争で勝ち抜くことであり、他の人と同じアピールをするということは、その枠で激しい競争をすることになります。

それよりは、他に自分がアピールできる経験や技能を見つけ、それを前面に出した方がよいと思います。
組織というのはいろんな役割の人がいて成り立つものであり、決してリーダーの集団ではありません。
また、リーダーシップというのは役割のみに基づき発揮されるわけでもなく、個々人の頑張る姿や気遣いが人をリードしていくこともあります。

もちろん、「副」として頑張ってきたのであれば、それをアピールすることにも意味があると思いますが、無理に「副」を押し出すよりは、他の人とは違った自分の長所をアピールした方がよいと思います。
どんな小さなものでも、組織に貢献できるのであれば、聞き手にとっては新鮮で面白いものになるのではないでしょうか。決して奇をてらう必要はありません。

2.色んな業界・会社を見てみる

世の中は自分の思っているより広く、自分の知らない業界や仕事がたくさんあります。
社会人になってもそう思いますし、学生さんにとってはなおさらだと思います。

就職活動にあたって、業界や会社を絞ってエントリーをする人も少なくないかと思いますが、それ以外に自分の知らない面白い仕事がある可能性を考えると、それはもったいないことだと思います。
特に、就職活動中は多くの会社が大っぴらに会社のことを話してくれますが、それは社会人になるとなかなか得られない機会です。

ステータスを目的として、特定の業界や会社を志望する場合もあるでしょう。
その気持ちはよくわかりますが、それもあまりお勧めできません。

ステータスで会社を選ぶと、会社の存在が自分のアイデンティティの大きな割合を占めることになります。
プライベートで自己紹介をするときに、「○○会社のxxです。」と始めてしまうような人というような感じでしょうか。
それは時として愛社精神として評価されるのでしょうが、会社はあくまで自分とは別の存在であり、それが一体化するのは寂しい気がします。

またステータスに縛られると、どんなに辛くなっても、他の仕事がしたくなっても、自分の気持ちに正直に行動することができなくなります。会社のステータスと自分の幸福度が比例するとは限りません。

さらに、会社のステータスは時代による変わる可能性がありますし、その重要性も変わります。
世界に名だたる大企業でも危機に瀕してリストラ敢行という事例はたくさんありますし、また個人的な感想ですが、若い世代の人は昔の世代の人に比べ、会社のステータスより「どのような仕事をしているか」「個人としてどのような人間であるか・価値があるか」ということを重視している傾向があるように思います。
そのような時代の中で「自分は●●会社に所属している」というステータスは、昔ほど重視されるものではないようにも思います。

だからこそ、最初から業界や会社に絞るのではなく、いろんな業界や会社を見てみて、自分の可能性を広げてみることは大事だと思います。
一番大事なのは、仕事の内容や会社との相性、それに待遇・ステータスなどを加味した総合的な満足度・幸福感であり、より多くの選択肢の中から選択した方が大きな満足度を得られる可能性があるのではないでしょうか。

3.具体的な仕事をイメージする

志望する会社を選ぶとき、その会社の手掛ける事業やプロジェクトを見て、「こういうことをやりたい」と思ってエントリーすることが多いと思いますが、その会社の個々の従業員が行っていることは「事業」や「プロジェクト」ではなく、その人たちに割り当てられた具体的な業務・作業です。

例えば「ロケットを飛ばす」というプロジェクトがあったとして、それは「ロケットを飛ばす」という仕事があるのではなく、ロケットを設計する、材料を調達する、資金を確保する、行政の許認可を得る、報道機関に情報提供をする、といったいろんな業務があります(あくまでイメージですが)。
そしてそれはさらに細分化され、「文書を作る」、「何かを調べる」、「資料・データを分析する」、「関係者と調整する」といった具体的な(そして、大抵は地味で地道な)業務に落とし込まれます。

そして、就職活動で採用された人に期待される役割も、当然具体的な業務・作業を行うことです。
そのため、その会社で貢献するためには、そういう具体的な業務をこなすことができるということが必要で、またやりがいを感じるためには、そういう具体的な業務に魅力を感じることが必要です。

そのため、志望動機を考えるにせよ、自分の能力をアピールするにせよ、具体的な業務をイメージしてみることが第一歩だと思います。
そうすれば、自己アピールもより採用側に響きやすくなるような気がします。

4.社会人とできるだけ話してみる

前項のとおり、志望動機を考えたり、自己アピールをしたりするにあたって具体的な業務をイメージすることが大事と書きましたが、学生が自分の頭で考えても、具体的な業務、あるいは自分が業務をしている姿をイメージすることは難しいと思います。

であれば、具体的な業務をしている社会人に話を聞くのが有効です。
卒業生を紹介してくれる大学もあるでしょうし、バイト先の先輩などとコンタクトをとることもできるでしょう。
最近であればSNSを使って希望する人とコンタクトをとることも不可能ではないですし(Twitterやココナラなどでそういう人にコンタクトできます)、それも難しければ、家族・親戚から話を聞くこともできます。

実際に仕事をしている人に、「具体的な業務として何をしている(してきた)のか」、「その業務にはどういう能力が必要なのか」、「その業務は会社全体の中でどのような役割を果たしているのか」などを聞いてみると業務のイメージが多少は描けるでしょう。
また、「●●といった仕事をしたいと思っているのだけどこの会社でできるか」、「●●をしたいとして、具体的にどういう業務をすることになるのか」という話を聞いてみるのもよいかもしれません。

社会人と話すことのもう一つのメリットは、社会人慣れできるということです。
自分が就職活動を始めたころは、社会人と話した経験がほとんどなく、面接の都度緊張したり、マナーに戸惑ったりしました。気づかないうちにマナー違反で失敗したこともあったと思います。
もう少し事前に社会人と話して慣れておけば、多少は緊張の度合いも下がったでしょうし、マナーについてももう少し勉強したり、指摘を受けたりして改善できたと思います。

いきなり学生から話を聞きたい、なんて言われて迷惑ではないかと躊躇される方もいるでしょう。
でも、それを心配する必要はあまりありません。
おそらく、多くの社会人は普段話さない若い学生と話すのは歓迎だと思いますし、自分の経験が求められるというのも嬉しいものです。
もちろん、中には多忙であったりそういうことが苦手で取り合ってもらえない時もあるでしょうが、それなりの確率で話を聞かせてもらえることと思います。

最初は慣れないこともあるでしょうが、時間を割いてもらっていることの感謝と、その方が仕事を頑張っていることに対しての敬意を忘れずにいれば、気持ちよく話を聞かせてもらえると思います(ただし、自分で調べれば簡単にわかるようなことを質問するのは不可)。

5.面接は芝居ではなくミーティングである

大学生の時、就職活動の面接は芝居だと思っていました。
面接という芝居をうまくこなすため、志望動機や自己アピールは暗記して、すらすらと答えなくてはいけない。
面接者から聞かれた質問についてはすぐに返事しなければならない。
最後の質問もとりあえず言っておかなければいけない。

実際、自分の周りもそんな感じでしたし、採用側も多くの候補者を短期間に評価しなければならないため、一定の枠にはめられた形が効率的なのでしょう。

それはそれで受け入れる必要があるのですが、本来あるべき面接とはそのような形でしょうか。
面接とは本質的には会社が候補者の労働力を購入するという商談であり、そのためのミーティングです。
商談をするときには決して暗記には頼らず、お互いに資料を見ながら話しますし、場合によっては相手には出さない手持ち資料も使います。
また社会人がミーティングをするにあたって筆記用具を持たないことはありえず、メモをする、メモを見るというのは自然な行為です。

したがって、面接中にメモをみながら話したり、質問した時には回答をメモするというのは許容範囲ですし、むしろ社会人としての行動原則に則っていて評価の対象になるのではと思います。

社会人になった後の転職活動ではそのような考え方から、面接時には手持ち資料を見ながら回答・質問したり、こちらからの質問の回答をメモしたりしていますが、特段悪い評価をもらったことはないですし、むしろ好評価をもらったこともあります。

もちろん、新卒採用と社会人が転職するときの面接では状況が違いますし、自分のやり方を押し通して採用側の差しさわりになること(面接の時間が延びてしまうなど)は避けなければいけませんが、そのようなことがないのであれば、社会人としての行動原則に則った面接の仕方を試してみてもいいと思います。
緊張しやすく、頭が真っ白になりがちの人にとっては、特に有効かもしれません。

 

以上、就職活動中の自分(と就職活動中の方)に向けたアドバイスを書いてみました。
賛否両論あるかもしれませんし、もっと有意義なアドバイスもたくさんあることでしょう。
ただ、過去の自分はこういったことも十分にできていなかったし、自分のように就職活動がうまくいかない人はこういったところを気をつければ、少しでも状況がよくなっていくかも、ということで自分の思うところを書いてみました。
参考になるかはわかりませんが、少しでもお役に立てれば幸いです。

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