西洋史概論(3)_レポート返却

西洋史概論レポートの結果

西洋史に全く土地勘のない私が苦労して作成し、昨年末に提出した西洋史概論のレポートが1か月ほどして返却されました。

西洋史に触れるのはほぼ初めてで、政治体系にしても習俗や宗教なども、そもそも地理的感覚もほとんどない中でテキストや参考文献を読んで、大丈夫かなと心配しながら提出したレポートでした。西洋史(後期ローマ帝国)の理解だけでなく、レポートの構成や論理の展開も適切か自信はありませんでした。

そんなレポートの結果はこちら。

かろうじて合格はいただきましたが、これまでのレポートの中で最も厳しい評価となりました。ご覧のとおりコメントがたくさん書かれていますが、足りない点をいろいろご指摘いただいています。
講評については冒頭以外はぼかしていますが、着眼点はよかったもののレポートの内容はわかりにくい、とのことでした。やはり論述の展開の仕方に問題があったようです。確かに重複した内容もありましたし、スムーズに読み進められるような感じではなかったかもしれません。苦手な分野だと論述自体のクオリティが下がってしまうというのは何度も経験があるのですが(汗)、これから卒論に臨む身として反省すべき点だと思います。

 

レポートの内容と講評

ちなみにレポートは古代ギリシャ・ローマについて与えられたいくつかのテーマの中から一つ選んで論述するというものでした。

私はそのうち、後期ローマ帝国体制について、具体的には軍人皇帝時代以降のローマ帝国(西ローマ帝国)における統治体制について論じました。具体的な内容は下記の記事に書いた通りです。

統治体制といってもいろんな論点がありますが、そのうち政治・行政の表層部分として皇帝の出自と元老院議員の位置づけの変化に重点を置いて論じました。
その点については着眼点がよいという評価を得たのですが、やはり統治体制というのは皇帝・元老院、あるいは行政組織のみで完結するものではないので、その穴埋めをしていた存在についても言及する必要がありました。

実際のところ、元老院議員の役割が後退する一方で行政機関が肥大化する中で住民サービスはどのように変化していったのかという統治の根本的なポイントについてはあまり考慮していませんでした。
現代社会でも住民サービスの変化の潮流は政権とは別の次元で「も」考えられるべき(少子高齢化の流れやNPOの展開云々)だと思いますが、それは古代ローマも同じで現場レベルでは何が変わっていたのかを考える必要があったと思います。

私が文献を読む限りでは特段そのあたりの言及がなかったので意識していなかったのですが、いただいたコメントによると教会が施与行為に代わる貧民救済や地方自治の代替を担っていたようで、住民の視点から見るとこういう面の方が統治体制の変化としては重要であったかもしれません。
改めてテキストを読むと確かにキリスト教の台頭の一面として慈善事業の普及なども述べられていて自分でも線を引いていたのですが、教会=宗教という意識が強く、統治体制と関連付けることができていませんでした。

もっとも、我が国においても宗教と統治体制は無関係ではなく、江戸時代には統治体制の中に寺院を組み入れ、宗門人別改帳が戸籍の役割を果たすなど、統治体制を論ずるにあたって宗教は考慮すべき重要な要素といえると思います。
厳しいコメントではありましたが、自分の足りない点をはっきりと指摘いただいたのはありがたいです。

ちなみにコメントの最後には誤字(元首制→元首政、帝制→帝政)が指摘されていました。重要なポイントだと思っていたので気をつけていたつもりなのに大間違い、お恥ずかしい。

 

試験に向けて

とにもかくにもレポートは合格だったので次は単位修得試験です。
試験では古代ギリシャ・古代ローマ全般が範囲となるため、レポートで扱った後期ローマ帝国だけでなく、テキストで学んだ範囲を広くカバーしておかなくてはなりません。

正直、古代ギリシャのあたりはいまだに地理関係や国家間の関係の認識が曖昧なので、この辺は注意しておかないといけないと思います。
あとキリスト教の勃興と発展についてもテキストを一読しただけなので、前述の内容も含め改めて勉強しておいた方がよさそうです。

恐らくこれが今年度最期の試験になるので、しっかり単位を取って終わり良ければ総て良し、といきたいものです。

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文化財学演習Ⅱ(2)_卒業論文テーマ仮決め

課題提出

この冬受講していたスクーリング科目の文化財学演習Ⅱでは課題のテーマが卒業論文の研究内容の報告でした。
こちらは現時点で固まっている必要はなく実際の卒業論文のテーマは違っていても問題ないようなのですが、やはり課題の提出ですし、また一度考えたテーマを変えるのも簡単なことではないので、実際の卒業論文のテーマ、さらにはその後の大学院等における研究テーマも見据えて何をテーマにするか考えていました。

私のようなアマチュアの歴史好き、だけど歴史をライフワークにしようと考える人間にとってはそのようなテーマを考えるのは容易ではありません。
研究、すなわち学術上の活動と銘打つ以上、単に好きなテーマをポンと打ち出すだけでは不十分で、そのテーマの何がこれまで明らかにされておらず、自分が何を明らかにできるかを考えておく必要があります。学問とはこれまで明らかになっていなかったことを、ごくわずかでも明らかにする活動だと思いますので、明らかになっていなかったことと明らかにできること、この二つは常に意識しておくべきことだと思います。

しかし、明らかでないこと、明らかにできること、そのそれぞれを明確にすることは意外に難しいことでもあります。
これまで明らかでなかった物事を「明らかでなかった」と言い切るには厳密には過去の研究成果のすべてを確認し、そのうえでそのように言い切る必要があります。すべてとは言わなくても主要な研究成果は把握しておかなくてはならないでしょうが、それも自信をもって言い切るためには相当な読み込みが必要だと思います。
また、過去の研究成果を踏まえて自分が新たに何かを明らかにできるのかという問いは、学術研究の核心であり、自分の知識や能力に対する挑戦であるといえます。過去の巨人たちがたどり着けなかった答えに自分がどのようにたどり着けるのか。自分はまだ歴史学や考古学、あるいは自然科学関係に対する知識をほとんど持たない子羊のようなもので、これに対する答えを出すのもまた大変なことです。

学部の卒業論文とはいえ、やはり大学で学んできたことの集大成であり、またこれからの歴史学の研究活動への第一歩でもある以上、このような問いを避けることはできませんししたくありません。子羊であっても一個の研究主体である以上、上記のようなアカデミックなスタンスは持っていたいものです。
・・・と考えると、過去の研究が比較的されていなくて、かつ自分でも新たな観点で論ずることができるテーマを探すことになるのですが、そこに自分の好きな小田原北条氏(後北条氏)関係という条件を重ねるとさらに絞り込みが大変です。

はてさて、テーマの検討はどうなることやら。

 

卒業論文テーマ(仮)

テーマ探しが大変だ、といっても課題の提出は月末と決まっているのでそれまでには提出する必要があります。しかも提出は郵送で月末必着なので実際には少し前にはテーマを決め、必要な事項を報告書にまとめなければいけません。のんびり考えているとそもそも単位が取得できないという本末転倒なことにもなります。

そのため必死にテーマを考え、その結果卒業論文のテーマは小田原上水(早川上水)について書くことにしました。一応仮決定という感じですが、おそらく早川上水を中心に論じることになると思います。
というのも、テーマ決めに際して参考文献を探してみましたが、戦国期の水道整備について論じられた文献はあまり多くなさそうで、その中でも早川上水について詳しく論じた文献はごく僅かでした。

そのうちの一つは郷土史家の方が書かれた書籍でしたが、非常に参考になりました。小田原城と比べて注目度が低い早川上水ですが、その価値を認めて焦点を当て研究をされているのは素晴らしいと思います。
自分も郷土史家に憧れがあるのですが、小田原で歴史学を学ぶ人間としてかくありたいものだと思わされました。

 

早川上水に限らず、世の中には人の認知は得られないながらもその時々で社会の役に立った施設や人の働きが多くあると思います。
そのようなものの価値を再発見し、人に知らせるのも歴史学を学ぶ人間としての社会への貢献だと思いますし、自分もそのようにありたいと考えています。

卒業論文や今後の歴史学の研究が実際にどのような成果に結びつくかはわかりませんが、そのような問題意識や志を忘れずに今後の学習・研究に励みたいと思います。

なおゲームの中の歴史学、というテーマも面白そうなのですが、軌跡シリーズは創の軌跡で歴史学のリィン教官が降板ぽく、新シリーズの黎の軌跡もまだ未プレイなのでお預けです(笑)

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美術史概論(4)_現代の文化財?

新しい種類の文化財?

本ブログでは奈良大学で歴史学について学ぶ内容についてご紹介していますが、私は特に文化財について学習を進める予定です。
ちなみに奈良大学の通信課程では文化財と(文献)史学のどちらを学ぶか当初の履修時に選択することとなり、史学を選択した場合は史学講読などの科目を履修し、主に史学を学ぶことになります。もっとも履修が必要な科目は文化財と史学のどちらを選択しても大きく変わらないので、講読・演習科目と卒業論文以外は同じ内容を学ぶともいえそうです。

話を戻して文化財を学ぶということになれば、文化財とは何かということが気になります。
文化財とはざっくりいうと長い歴史の中で各地の人たちが作成・形成してきた文化を体現する有形・無形の存在で建造物や遺物などの有形のものや芸能・伝承といった無形のものなど様々なものが含まれます。
文化財の体系については下記の文化庁の資料にまとめられています。

文化財の体系図(出所:文化庁ウェブサイト)

この図にある通り、文化財とはかなり広い概念で極論を言えば歴史を経ているもの、歴史を感じさせるものであれば何でも文化財ということもできそうです。

そして歴史は現在進行形のものであり、今この瞬間もいつか歴史上の時間として認識されることになります。そうなると現在我々が扱っているものや楽しんでいる風景もまた文化財として扱われる時が来るのでしょう。
事実、博物館などでは高度経済成長期の家電製品などが文化財のように展示されていますし、もしかすると初代ファミリーコンピューター(ファミコン)やゲームボーイあたりももはや文化財として扱われているかもしれません。

したがって文化財となるものの性格は時代によって変わり、今身近にあるものが文化財として我々の歴史を未来につなげる役割を持つことになります。そのため、せめて自分が大事に思うものだけでもきちんと扱っていきたいと思いますし、多くの人にも自分が大事に思うものはそのような役割を持ちうると思って大切にしてもらいたいなと思います。
その意味でもオタク志向の人って大事!

ちなみに投資信託の歴史を調べているときには初期の投資信託の目論見書やその他の書面を読んでみたいと思ったので、そういった事務書類的なものですら価値のある文化財となりうると思います。最近はデータで容易に残すことができますが、それでも実際に印刷された資料とは質感や読みやすさが違うので、実物を残すことは有意義だと考えます。

 

新時代の文化財来たる!

時代によって文化財の性格は異なるという話をしましたが、その好例として立体像が挙げられます。
美術史概論では日本の仏像史について学びましたが、日本に仏像が持ち込まれた飛鳥時代から奈良時代、平安時代、さらに鎌倉時代以降にかけて仏像の製作手法や特徴は大きく変わっていきました。
これは技術の進歩や仏教の位置づけが変化する以上当然のことだと思います。

そして現代においては3Dプリンターが登場するなど立体像の作成の概念自体が大きく変化しようとしています。
また二次元の表現手法が多様化する中で立体像の造形も多様化しているように思います。
そのような表現手法の変遷を具現化するものとして現在我々が手にしているコミックやイラスト、フィギュアなども十分文化財となりうるものだといえそうです。

私も文化財について学ぶ者としてそんな将来の文化財候補を大事にしていきたいと思っているのですが、そんな私のもとに本日新たな文化財が到着しました。
『閃の軌跡』シリーズの主人公にして歴史学の教官、リィン・シュバルツァーの1/8フィギュアです。ちなみにリィンは第二弾で、第一弾は彼の教え子で『閃の軌跡Ⅱ』から登場するアルティナ。こちらも当然お迎えしていたのですがさすがに女性キャラだけだと紹介しずらいので本日文化財としてご紹介することができました。
ちなみにアルティナのエピソードは泣けたりジーンとくるのが少なくないので(特にⅢとⅣ)、アルティナが第一弾になったのもわかります。軌跡ファン以外にはどうでもいい話ですけどね…。
第三弾も企画されているらしいのですが、誰なんだろうな。

 

 

記念に我が家の文化財(立像分野)を撮影してみました。

我が家の有形文化財。フィギュアもねんどろいどもよき!!

1/8のリィンとアルティナの造形の繊細さが目立ちます。サブカルチャーのフィギュア化の歴史は仮面ライダーやウルトラマンの頃には始まっているので結構長いと思いますが、長い時間をかけて非常に精巧になっています。恐らく目に見えない部分も大きく進化しているのでしょうし、まさに進化の歴史を体現した文化財といえます(熱弁)。

一方、『零/碧の軌跡』のSDキャラのフィギュア(ねんどろいど)も各キャラクターの特徴をよく表現していて、かつかわいい感じになっていてよきです。
軌跡シリーズのキャラクターのねんどろいどは多くの種類があるようなのですが出回っている数が少なかったり海外限定のものが多かったりでなかなか集まりません。機会があればお気に入りキャラだけでもゲットしたいものです。文化財保護のためにも(熱弁)。

 

文化財はすぐそばに

以上、自分の趣味に文化財を無理やり絡めて熱弁してしまった感がありますが、日常生活の中で身の回りにあるものが文化財になりうるというのは確かだと思います。
文化財学演習Ⅱの資料の中で千田先生も研究すべきテーマは日常生活の中や見知っている景観の中にもあるということをおっしゃっていますが、我が意を得たりという感じです。

キャラクターものが好きな方や鉄道模型が好きな方などは人の目や家族からのプレッシャーなどで肩身の狭い思いをしていることも多いかもしれませんが、これも文化財だ!と堂々とその趣味やキャラクターを愛してほしいと思います。
我々は未来の文化財の保護者です!

まあそのような濃いものでなくても、身近な風景、例えば出勤した時に見るビル街の風景だって将来歴史的景観として保護の対象になるかもしれません。
そう思うと日常の一瞬が違ったものに感じるでしょうし、大切に思えそうです。
そんな風に自分の時間、自分の場所を大切にできるのも幸せなことではないでしょうか。

実は奈良大学に願書を書いた時の志望動機にも、多くの人に身近にある歴史的な文化財から歴史を感じるきっかけを提供したいということを書きました。
さすがに軌跡シリーズのフィギュアは研究対象にはしないと思いますが(笑)、いつか多くの人に文化財の意義、そしてその文化財が刻んできた歴史を知ってもらえるような活動ができるようになりたいと思います。

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はじめての〇〇かい

実務家研究者として生きていくために

長年の努力が実り経営法で博士号をとって早半年。実務家研究者としてもキャリアを積んでいきたいと思っているのでアカデミックな活動にも力を入れていきたいと考えていたところ、ご縁があってとある研究プロジェクトに参加させていただくことができました。

このプロジェクトは非常に勉強なるうえ自分の実務経験も活かすことができるので自分のアカデミックな活動の第一歩としてはとてもありがたい機会なのですが、プロジェクトである以上終わりがあるので、継続的にアカデミックな活動を行う道を考えなければなりません。

ほとんどの分野アカデミックな活動を行う場としてはおそらく学会が最も一般的なものだと思いますし、複数の学会に所属している研究者も多くいらっしゃるようです。
そのため、とりあえず学会に入ってみようと思ってどんな学会があるのか調べてみました。

関心のある分野が投資信託などの投資運用業関連ということで「投資信託 学会」で検索してみるといくつかヒットしました。
それぞれの学会のウェブサイトを見てみると機関誌に寄稿されている論文も面白そうなものがあり、理事の先生も有名な研究者や読んだことのある論文の著者だったりする学会もあり、こういう学会に入会してみるのもいいかもと感じました。
特に日本金融学会という学会は歴史に焦点を当てた歴史部会があり、歴史も重点的に学びたいと思っている身としては惹かれるものがあります。

一方で、学会に入会するにはハードルもあります。一つは会費、もう一つは学会にもよりますが会員の推薦が必要なことです。
会費は飲み会代程度のことが多いので飲み会を我慢したと思えばいいのですが、それでも入りすぎると会費の負担は大きくなりますし、多くの学会に入ってもそれぞれの学会で十分な活動が行うのは難しいでしょうから、多くても3つか4つくらいに留める必要がありそうです。

それ以上に大きいのが会員の推薦だと思います。そもそも自分の周りに入会したい学会の会員がいるかどうかわかりませんし、わかったとしてもその方との関係がそれなりになければ推薦を依頼するのも容易ではないと思います。
生粋の大学院生や研究者だとネットワークもあるのでしょうが、私のような実務家はどのように会員にアクセスすればよいのか、それだけで悩んでしまいます。

アカデミックな活動への道のりの最初から暗雲が立ち込めています。。。

 

小さな行動が転機をもたらした

そんな風にどうやって学会に入会してアカデミックな活動を始めようか考えていたところ、転機が訪れました。

ある日Twitterを眺めていたら論文を書かなきゃ―、みたいなことをおっしゃっていた方がいたので、自分も「論文を書きたいな」とつぶやいたら反応していただいて論文を書く機会をいただける学会を紹介いただき、とんとん拍子に入会することができました。

雑誌や学会誌などに論文を投稿する予定のことを「論文債務」といったりするようなのですが、その論文債務という言葉に憧れていて自分も「論文債務履行しなきゃ…」みたいなことを言ってみたいと思っていました(笑)
そして、学会に入会させていただいた流れで論文債務もいただくことができました。

論文債務の履行時期はかなり先で内容もあまり考えていないですが、せっかくなので投資信託の実務関係でホットなトピックを扱うことができればいいと思っています。

論文債務といえば、おそらく来年度は奈良大学の卒業論文も作成しなければいけません。
卒論など学位論文は自分のためにするものなので論文債務とは言わない気がしますが、ともあれこちらの論文もしっかり仕上げたいと思います。
できれば歴史学の方も学会に入るなどしてアカデミックな活動をしたいと思っていますので、こちらの方面も今後の研究分野を絞っていきたいところです。

本当は法学の研究と歴史学の研究で交差してくれるといいのですが、今のところはなかなか接点が思い浮かびませんね。
思いついたものとしては、投資運用業では日本版スチュワードシップ・コードが注目されているので、そのスチュワードと日本の荘園制度を絡めて、日本の歴史から考察した日本のスチュワードシップ・コードはこういうものだ、みたいな話は面白いかもしれません。
荘園の管理者も荘官・下司から地頭に移行する中で荘園領主に対する姿勢も変わったでしょうから、そのあたりも日本のスチュワードシップの変遷として面白いかもしれません。
いずれにせよ、荘官や地頭の義務と現代金融事業者のスチュワードシップ・コードを同様に語ることはおかしいのですが、金融と歴史の交差点としては面白い視点だとは思います。
まあ、このテーマが論文としていけるかはともかく、しっかりと言い論文を書ける世に準備をしないといけないですね。

ということで、法学も歴史学もアカデミックな活動につなげられるよう、今年はしっかり基礎固めにいそしむ所存です。

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文化財学演習Ⅱ

奈良大学といえば…

奈良大学には歴史関係で多くの強みがありますが、奈良大学に所属していない歴史好きの人が「奈良大学といえば?」と聞かれて答えるのは千田嘉博教授ではないでしょうか。
(無論千田先生以外にも各分野で有名な先生はいらっしゃいます)

千田先生は城郭研究の第一人者であり、テレビでも城郭・歴史関係の番組に頻繁に出演されているのを見かけます。また大河ドラマ『真田丸』では考証を担当されていたことでも知られています。

私にとっても奈良大学は千田先生が所属されている大学というイメージが強く、奈良大学への入学を決めたのも、もしかしたら千田先生の授業を受けて生の千田先生にお会いできるかもしれないというミーハーな理由があったことは否めません(笑)
実際、同じような動機の人は少なからずいそうな気がします。

ということで、もちろん履修科目を決めるときには千田先生が担当される科目も履修して直に千田先生のお顔を拝見するのを楽しみにしていたのですが、残念ながらコロナ禍が収束していないということで夏と同様に在宅での受講ということになってしまいました。
履修登録をしていても受講せず来年に回すこともできるのですが、単位はできるだけ早くとりたいこと、来年度もいくつかスクーリングの授業を履修する予定で、スクーリング科目を増やすと実地での受講となった場合に時間的にも経済的にも負担が大きくなることから、在宅での受講で時間的・経済的な負担が小さいことをむしろ奇貨として今回は在宅で受講することとしました。ポジティブ思考大事!

 

授業の内容

在宅での受講となるため、今回は事前に送付された資料を使用して、動画を見ながら学習します。スクーリング科目でやはり在宅での受講となった文化財学講読Ⅱと同じパターンです。そういえば文化財講読Ⅱの記事は書いていなかった…

まだ資料をパラパラとめくっただけですし、また内容について詳述はすべきではないと思いますので詳細は省きますが、千田先生のご専門であるお城あるいは考古学にフォーカスした内容ではなく、文化財学の意義や基本的な留意事項、及び研究を行うにあたっての姿勢など文化財学の基礎的な事項を広く扱っているような印象を受けました。

研究にあたっての姿勢については、学生と社会人の違いとしてもよく言われることですが、決まった答えにたどり着くのではなく、まだ答えがないことを明らかにするということを述べていらっしゃいました。
学部生といえど、また通信制といえどただ学ぶだけの学生ではなく、一人の研究する主体として扱われているのは背筋が伸びる思いです。

なお、授業で使われる資料の内容自体は戦国時代のものが多いようで、私を含め戦国時代好きの人には楽しめそうな気がします。千田先生というと戦国時代の印象が強いですし、千田先生の授業を受けているという気になれたらいいなと期待しています。

 

卒業論文の内容を考える

一研究主体としての学部生の研究活動の集大成が卒業論文であり、文化財学演習Ⅱでは現時点で考えている卒業論文の研究テーマについて報告することが課題となっています。
実際の卒業論文のテーマとは異なっても大丈夫なのでまだテーマが固まっている必要はないのですが、卒業論文という一大プロジェクトが近づいてきたのを感じます。

卒業論文の内容は長らく考えていますが、将来的に歴史に関する活動を続けていくことを考えるとそのベースにもなるためなかなか決められずにいます。

後北条氏が好きで小田原に住んでいて、これからも小田原に縁のある活動をしようと思うと北条氏関係を扱いたいところですが、小田原城関連だと先行研究が多すぎますし、また北条氏の民政に関心のある身としてはそちらの方面で研究をしたいと思っています。
一方、北条氏の民政については文献史料は豊富にあるのですが文化財としてはすぐに思い浮かぶものが小田原上水(早川上水)くらいしかなく、こちらも研究が進んでいそうな気がしていて自分に何ができるのだろうという感はあります。

ただ、水問題は現代に至るまで人類にとって重要なテーマであり、水資源を争った事例は枚挙に暇がないことを考えると、北条氏の民政の証としての水資源管理は研究テーマとしてありかもしれないと今書いていて思いました(笑)
金融業界で重要なテーマとなっているESG・グリーン投資などとも関連付けられるかもしれませんし。

ちなみに現在は主に税金で整備されている社会インフラが税金など公共の資金で整備されるようになったのは戦国大名の施策に遡るらしく、それまでは受益者負担、すなわち地域の住民などの自己負担で整備されていたようです(黒田基樹『戦国北条家の判子行政』第七章)。このような施政の転換についてもやはり北条氏の記録が充実しているようで、私でも何らかの成果が出せそうな気がしてきました。

もっとも、書棚にある戦国大名の土木事業に関する書籍を読んでみると建築関係の専門的な用語や見方が多く出てくるので、そちらの勉強も必要になってきそうな気がして課題は山積ではあります。まあ、勉強を避けては卒論も研究もできないので腰を据えて取り組むしかないですね。

とりあえず卒論のテーマのイメージができたところで動画を見て研究テーマ報告に取り掛かりたいと思います。
今月中には史料学概論のレポートも済ませたいところですが、こちらも今後の研究を進めるうえで重要な内容なのでテキストを精読しなければならず、時間が足りるか心配です…

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西洋史概論(2)_レポート提出

苦手な科目は学習に時間がかかる…

奈良大学で学習する歴史は考古学あるいは日本史に限らず、東洋史や西洋史など海外の歴史も含まれます。東洋史などは中国の現代史までカバーします。
その中には自分が今まで関心を持っておらず土地勘がない分野も含まれます。そのような分野もカリキュラムの中で強制的に学ぶことになるのは大学という枠組みの素晴らしいところだと思いますが、やはり学習に時間がかかります。

4月末くらいに本格的に学習を開始して半年ほどは学びやすい科目を中心にテキスト購読やレポート・試験を進め、順調に単位を取得していました。特に今年は試験が在宅であったこともあり、かなり余裕があったと思います。
しかし、苦手な科目、関心の薄い科目を後回しにしたツケは当然回ってくるわけで、10月頃に美術史概論に学習を始めてからはテキストの内容が頭に定着しないし、レポートでも何を書けばいいのか整理に時間がかかりました。

それでも美術史概論は日本の歴史上の作品がテーマだったので少しずつ前進しましたが、その後の西洋史概論はさらに苦戦しました。
以前の記事でも書いたように西洋史になじみがないので似た名前の人物が多数登場すると誰が誰かわからなくなってしまうということがよくあります。
加えて地理関係も日本ほどわかるわけではないので、歴史上のイベントがイメージしにくいというのも理解を妨げていた要因だと思います。

それでも何とか年内にはレポートを提出するという目標を達成するために何度もテキストを読んだりノートで整理したりして、一応レポートを提出することができました。
テキストを読み始めてレポートを提出するまで2か月以上。これほど苦戦するとは思いませんでした。

ただ、先ほども書いた通りこのような機会がなければ古代ローマに関する書籍を複数精読して、歴史上の人物の名前や業績を整理したうえで理解することはなかったでしょう。また、苦労したからこそ記憶に長く残るということもあると思います。
やはり自分の関心のないことも学ぶことになるカリキュラムは視野を広げるうえでも大事だと思いました。

 

後期ローマ帝国の統治体制

西洋史概論のレポートは古代ギリシア・古代ローマについて与えられた7つのテーマから一つを選び、6400字程度で論じることとなります。
そのうち私が選んだテーマは後期ローマ帝国体制についてでした。「後期ローマ帝国体制」と一言で言っても論点は様々ですが(なおキリスト教の普及については独立した別のテーマになっていました)、私はそのうち統治体制に焦点を当てて論じることとしました。

古代ローマは王政から共和制、元首制から帝政へとその政体を変えつつ、最終的には東西ローマ帝国に分割され、西ローマが476年に帝政を終え消滅し、その後は東ローマ帝国が単独で残り、1453年(いわゆるコンスタンティノープルの陥落)まで続くと理解していますが、後期ローマ帝国体制はそのうち元首制が終わった時期(セウェルス朝断絶時)から西ローマ帝国の消滅までを論じています。

後期ローマ帝国体制の統治体制も多くの論点があると思いますが、私が着目したのは元老院議員の地位の変遷分割統治体制の導入です。
よく知られていますが、ローマ帝国という国家は基本的には元老院議員がリードする政体でした。元首制の時代に入ると特定の人物(アウグストゥス)に権限が集中するなど実質的には帝政ともいわれながら形式的には共和制の体をとっており、元首も元老院議員の構成員でした。我が国の総理大臣が国会議員であることと似ているかもしれません(首相は立法府の長ではありませんが)。その中で元老院議員は影響力を維持していました。
そして元老院議員は超富裕層であり、多くの人に施しを与える名士でもあったため市民からの支持もあったといえます。
何より、ローマ帝国の(主権者の)呼称であるSPQR(ローマの元老院と市民)という文言に元老院の存在感が現れています。

しかし、その元老院の位置づけは後期ローマ帝国の統治の変化と合わせて変わっていきます。言い換えると、ローマ帝国の統治者であった元老院の位置づけの変化自体がローマ帝国の統治体制の変化を表していることになると思います。

また、広大なローマ帝国を一人で統治するのは限界があるためウァレリアヌス帝やディオクレティアヌス帝によって分割統治体制が導入されましたが、当然この体制は良くも悪くもローマ帝国の統治に大きな影響を及ぼしたため、この点の論述にも力を入れました。

最初に分割統治体制の導入について考えた時には思い切ったことをするものだと思いましたが、実は分割統治という事例自体は意外にあるような気がします。
例えば日本でも室町時代には京都の室町幕府と鎌倉の鎌倉府(鎌倉公方)で東西を分割統治していたことを思い出しました。
現代では企業経営におけるカンパニー制が分割統治のイメージなのかもしれません。

 

・・・とつらつらと書き連ねると意外に簡単に6400字になりました。決して人名が長いからではないと思います(笑)
使用した参考文献がテキスト含め3冊しかなかったのでそこをどのように見られるか不安ではありますが(奈良大学の掲示板を見るとかなり参考文献を読んでいる方が多い印象です)、紹介されている参考文献リストでそれ以外に図書館で借りられるものがなかったので、とりあえず参考文献は3冊という状態で提出しました。
それでもそれなりに内容はある…はず。

自信満々とは言えませんが、難関だった科目のレポートを年内に提出することができ、のんびりと年越しをすることができそうでよかったです。
残る概論系科目は史料学概論のみ。こちらも重量級のようですが関心のある内容なので楽しんで取り組みたいと思います。

2021年は法学も歴史学も大いに学習が進んだ一年でした。
2022年も実りある年になりますように!!

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