ゲームの世界観の中の歴史学
歴史学を学ぶと、日常生活の中でも歴史学の存在を意識するようになりました。
そして歴史学(の魅力)をどのように多くの人に届けることができるのか、ということも。
そんなことを考えている矢先、遊んでいるテレビゲームの中でしっかり歴史学が登場していました。
日本ファルコムという老舗のゲームメーカーが出しているRPGに軌跡シリーズ(英雄伝説シリーズ)というタイトルがあるのですが、そのうちの「閃の軌跡Ⅲ」で主人公が歴史学の先生になっています。
軌跡シリーズは何作ものタイトルが同じ世界観でつながっている大河シリーズで同じ世界を複数の視点から見るようになっているのですが、そのようなシナリオの中で主人公が歴史学を教えているという設定は非常に興味深いです。
それだけでなく、軌跡シリーズの最初のタイトルである「空の軌跡(FC (1)/SC (2))」では考古学の設定が凝っていて、かつ重要人物と関係する要素の一つになっているなど軌跡シリーズにおける歴史学の位置づけはかなり大きいといえます。
人間社会を扱う大作ストーリーには歴史的な要素が必要不可欠なのかもしれません。
ちなみに軌跡シリーズと並ぶ日本ファルコムのタイトルとしてイースシリーズ(アクションRPG)がありますが、そちらでも主人公の冒険家が歴史好きでやはり歴史が重要な地位を占めます。
日本ファルコムのシナリオライターは歴史を学んでいたか相当歴史が好きなのではないかと個人的には思っています。
もっとも私がプレイしたことがあるのは『イースⅧ』とその前の『イース セルセタの樹海』くらいなのですが(汗)
先日最新作『イースⅨ』がNintendo Switchで発売されて買ってあるので、軌跡シリーズ(と歴史学の勉強)が終わったらプレイしたいと楽しみにしています。
そして、二つのタイトルをプレイしただけでもイースの中で歴史が大切に扱われているのはよくわかります。
イースⅧはイースシリーズの中でも特に名作として知られる作品ですが、ストーリーの中では遺跡が重要な舞台になっていますし、冒険家である主人公・アドルが歴史好きということも触れられています。
冒険や歴史の話になると食いつきが非常にいいのが素晴らしい。
サブキャラクターにも古生物学(考古学は人類の歴史を対象にするので違う分野)に詳しい人物がいたりして、歴史や古生物の話がよく出てきます。
イースⅧの前のタイトルである『イース セルセタの樹海』でもやはり古戦場や遺跡などの舞台が設けられています。こちらもストーリー上歴史的なテーマがよく出てきます。
イース自体が昔の歴史を掘り出すようなコンセプトのストーリーだと思いますので、歴史と相性がいいのかもしれません。
あと歴史の話からは外れますが、日本ファルコムのゲームのBGMは非常に素晴らしいです。ゲームをしていない時でもずっと聴いていますが全然飽きません。音楽が素晴らしいだけでなく、ゲームのシナリオとしっかりかみ合ってます(むしろ音楽が先にできてシナリオが音楽に合わせることもあるらしいです)。
しかも日本ファルコムは自社の音楽の提供に寛容で「ファルコム音楽フリー宣言」という方針を公表されています。会社のプレゼンで使用したらテンション上がりまくってしまいそうです(笑)
音楽が素晴らしいのはもちろんですが、こういう自社の音楽を積極的に広げていく方針もまたすごいと思います。日本ファルコムへのインタビュー記事も公表されていますが、こちらも日本ファルコムのゲーム音楽に対する哲学がよくわかって面白いです。
なお、イースシリーズや軌跡シリーズのBGMはyoutubeやAmazon Musicにも公式のものとしてアップロードされているので自由に視聴することができます。
軌跡シリーズと歴史学
さて、冒頭に触れた通り、軌跡シリーズでは随所に歴史学との接点が現れます。
中でも一番歴史学との関係が深いと思われるのは、軌跡シリーズ3つ目のタイトル、閃の軌跡の主人公、リィン・シュバルツァー。閃の軌跡は彼の学生時代からのストーリーですが、長じて彼は歴史学の教師になります。
主人公が歴史学の教師なんて、歴史好きとしてはそれだけで胸アツです。
ストーリーの進行具合を示す画面で主人公の身分証明書もみられるのですが、しっかり担当に歴史学と書いてあります。
他の分野が担当でもストーリーが成立しないわけではないですが、ストーリー的にも歴史学がしっくりくるのは閃の軌跡で歴史がストーリー的にも小道具的にも重視されていることを示していると思います。
ストーリーの中で博物館に行ったときには教え子からも歴史オタク呼ばわりされる始末。
歴史の先生は大体歴史オタクだと思いますが、多分に漏れずということですね。
いやいや、素晴らしい。
主人公が歴史学の先生なので当然授業があるわけですが、ゲームの中で歴史の授業のシーンを見るのは初めてですし、ましてそれを主人公が行うというのは感動ものです。
授業以外にも教師としての活動がゲームの大きな部分を占めるのですが、教師としての姿勢や生徒たちとのコミュニケーションは見ていて楽しいです。
ちなみに主人公の授業はわかりやすいと好評のようです。
歴史の授業は暗記が多くて嫌という人もよく見かけるのですが、このようにわかりやすく丁寧な解説があれば歴史を好きになってくれる人も増えそうですね。
ちなみに奈良大学のスクリーニングでも授業や動画を見ましたが、わかりやすく、丁寧にというのは意識されているように思いました。歴史好きの生徒が多いから授業にも張り合いがあるのでしょうか。
閃の軌跡では課外活動が重要なパートで、閃の軌跡Ⅲでは主人公と教え子が課外活動でいろんなところを巡ります。
街にせよ、自然の中にせよ、人があるところには歴史があり、歴史があるところには痕跡があります。
逆に言うと人の活動の痕跡があれば歴史があることを裏付け、歴史があると歴史の先生からすると授業のネタになります。
課外活動自体は歴史の授業とは別なのですが、そこは歴史の先生。いろんな機会を使って歴史の話をしてくれます。
しかも教え子のほうも結構歴史に関心があるようで、先生の薫陶素晴らしきことを伺わせます。
ちなみにこのシーンは歴史学として扱うと割と玄人っぽい分野(だと思う)なのですが、それを歴史学としてシナリオライターの歴史学の造詣を感じます。
軌跡シリーズをプレイしていると歴史とストーリーがうまく組み合わさる仕掛けを感じるのですが、こういうのをきっかけに歴史が好きになってくれる人が少しでもいると軌跡ファンとしても歴史ファンとしても嬉しいものです。
もちろんストーリーの中で歴史という題材を活かすためには設定がしっかり作りこまれている必要があります。
そして軌跡シリーズはその点ぬかりありません。
何作にもわたる大河ストーリーなので設定の蓄積が多く、しかもプレイヤーがその設定をきちんと消化するために各作品では図書館などで歴史上の出来事やそれぞれの舞台の設定を確認することができるようになっています。
ちなみに画面中の「百日戦役」という出来事はストーリー上重要なもので、内容を理解しておくとストーリーの楽しみ度合いがグッと上がるので、細かい設定や配慮は本当にありがたいものです。
軌跡シリーズは各舞台の歴史的な経緯も重要なポイントなので、その舞台の設定と解説も非常に重要です。
軌跡シリーズの二つ目の舞台(『零の軌跡』・『碧の軌跡』)となるクロスベルは複雑な政情から特に歴史的な経緯が重要で、歴史というのが単に断絶した過去ではなく、現在とつながるものであることをよく示してくれています。
歴史は単なる過去の事象にとどまるものではない、ということは歴史学を学ぶ者として改めて考えておきたいとゲームをしながらしみじみと感じてしまいました(笑)
歴史学の勉強を後回しにしてプレイしているのは皮肉ですが。
軌跡シリーズでは各地でその土地の歴史を感じさせる考古資料に触れることができますが、クロスベルでも考古資料が登場します。
こういう設定は本当にしっかりしています。
そのうち考古資料の発掘までしそうな勢いです。
というか、自分がまだプレイしていないところでそういう設定があるかもしれません。
軌跡シリーズはミニゲームもやりこみ要素として魅力的なのですが、考古資料の発掘ミニゲームとかあっても面白そうです。
このように歴史好きとしては歴史という要素を重視したストーリー展開やキャラクター造形に魅力を感じる軌跡シリーズですが、壮大なストーリーやBGM以外も見どころはたくさんあります。
RPGといえば戦闘が非常に重要な要素ですが、戦闘システムも戦略的で頭を使って戦いを進めていくことが必要になります。
各キャラクター自身の能力を活かすだけでなく、キャラクター間の関係・相性や戦闘の状況を活かした戦術も鍵となってきます。
軌跡シリーズでは難易度が選べるのですが、標準的な難易度でも戦闘は結構タフなのでRPG好きな人は手ごたえを感じながらプレイできるのではないでしょうか。
BGMと相まっていい感じで楽しめること請け合いです。
歴史とは関係ないですが、ここはやはり軌跡ファンとしてアピールしておきたいところです。
戦闘システムの基本的な部分は最初の空の軌跡から同じなので、どのタイトルから始めても楽しめます。
ちなみに最新作『黎の軌跡』はPS4で本日(2021年9月30日)発売!!
Nintendo Switch派の私はしばらくお預けです…
歴史学を学ぶにあたっての目標
ここでいきなり自分語りになりますが、私が奈良大学で歴史学を学ぶ目標として、学術的な根拠に基づいて多くの人に歴史の魅力を伝えたいということがあります。
奈良大学の入学審査書類にもそのようなことを書きました。
そして、信長の野望や三國志シリーズの光栄さんや軌跡シリーズはまさに歴史・歴史学のすばらしさを自らのコンテンツに乗せて多くの人に伝えている好例だと思います。
そのような先例を一ファンとして素晴らしいなと思いつつ、いつか自分も自分なりの形で歴史・歴史学の魅力を誰かしらに伝えていきたいと思っています。
とりあえずはこのブログを通して、ということになりそうな気がしますが、他にもスキルあればなあ。
※イースシリーズ、軌跡シリーズの画像については著作権法の引用のルールに従い掲載しているもので、著作権は日本ファルコム株式会社にありますのでご注意ください。