愛される金融

自分が運用業界に入って以来、ずっと目指してきたのは、「お客さまに愛される、選ばれる投資サービスを提供する」ということでした。
特に関心を持っていたのは資金の出口、つまり投資家のお金がどういう風に使われているのか、どのように経済的・社会的価値を生み出すのか、ということでした。

そのような観点から、SRI(社会的責任投資)には学生の時から関心を持っていましたし、最近でもPRI(国連責任投資原則)やスチュワードシップコードには関心を持っています。

また、運用会社以上に資金提供力及び企業への影響力の大きい銀行の存在にも関心を持っており、留学先にオランダを選んだのも、ESG投資に強い、ロッテルダムに本社を置く運用会社・ROBECOのほか、ユトレヒトに本拠を置くトリオドス銀行の存在に関心を持っていたからでした。

トリオドス銀行は預金によって集めた資金の使用においてESGを考慮しているのはよく知られているのですが、そのようなポリシーはトリオドス銀行だけでなく、他にもそのような社会的価値を重視した資金提供ポリシーを持っている銀行があります。

そのうちの一つが英国のCharity Bankで、この銀行も社会的な価値を重視した融資方針で知られており、自分自身話を聞いてみたいと常々思っていました(まだ叶っていませんが)。
(あとは英国マンチェスターのCooperative Bankなども有名です)

日常業務に埋没しているとはいえ、金融サービスを通じて社会的価値の創造につなげるというポリシーは辛うじて(汗)保っているので、時折関連団体のニュースを読んでいるのですが、たまたまCharity Bankのストーリーがジーンと来ましたので紹介したいと思います。

 

このストーリーはCharity Bankのユーザーのお話。

犬好きの人が野良犬を保護するための施設を創設するために融資を受けようと思った時にCharity Bankに話を持っていったら、社会的意義の理解が早く、早期に融資が成立したという話です。
また、Charity Bankのスタッフは助言や激励をしてくれて、一般的な銀行では生じえない人としてのつながりを作ることができたとのこと。

そして、「また融資が必要になったら、必ずCharity Bankに行く」とまで言わしめています。

金融は文字通りお金を融通するビジネスですが、モノと違って形がありません。
敢えて言うなら、資金を融通する「条件」だけが形といえます。

金融各社は各業態で日々商品開発という名の新たな「条件」開発にいそしんでいますが、そう簡単に新しい商品はできませんし、「条件」にすぎないので、新しいものもすぐに模倣されてしまいます。

そのような金融業界において、条件とは別の価値を顧客に提供し、顧客を維持し続けているCharity Bankその他のソーシャルファイナンス企業は素晴らしい存在だと思いますし、我々金融業界が目指すべきものを示唆しているようにも思います。

また最近では、「一般的な銀行」も社会的な価値を生み出すことで自分たちの価値を高めるよう動き始めています。

例えばオランダのABNアムロ銀行は、今後たばこ企業への融資を行わないことを決定し、さらにオランダの銀行業界に働きかけていくとのことです。

 

また、パリ協定が影響し、エネルギー業界への融資額が急減しているようです。
世界大手37銀行の2016年時点のエネルギー業界への融資額は2015年から22%も減少しています。

もっとも、化石燃料が地球温暖化をもたらすものとして抑制されるのは仕方ない一方、我々自身が化石燃料によって得られるエネルギーによって便利な生活ができているのも事実であることを忘れてはいけないと思いますが。

 

ともあれ、世の中にはこのような社会的価値の創造によって顧客に愛され、安定した顧客基盤を築こうという動きがあります。

その中で、自分は日本の金融業界が社会的価値を生み出すために、そしてその結果お客様に愛されるようになるために何ができるのか、ということを考えることを怠らないようにしたいと思います。

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