世の中にはいろんな業態の金融業がありますが、共通して言えるのは、「規制が厳しい」こと。
大きな規模のお金を動かしているため、経済に対するインパクトが大きいことから、健全な業務運営、財務体質を確保するために厳しい規制が課せられているといえます。
主なところでいえば、銀行には銀行法があり、証券には金融商品取引法、保険には保険業法があります。
私が所属する資産運用会社も、やはり金融商品取引法や投資信託法といた業規制に服しています。
しかし、Fintechの登場により、これまでの業規制では対応しきれない金融のあり方が生じています。
一方で、Fintechといえど、金融サービスを提供する以上、適切な業規制に服することが健全であると考えられます。
では、Fintechはどのような業規制に服するのか、服すべきなのか、同時にFintechビジネスを展開しようとする際にはどの規制に留意すべきなのか。
金融が規制業態である以上、このような観点は必要不可欠です。
特に私はコンプライアンスを生業としており、Fintechにも関心があるので、この点については一度整理しておきたいと考えていました。
そんな折、ちょうど学校で「Fintechと法律」について授業があったので出席しました。
しかも講師はFintechに詳しい弁護士の方。ワクワクします。
以下、学んだことを少しだけご紹介。
考え方にもよるのでしょうが、Fintechの影響を受けFintech対応された法令は3つ。
銀行法、資金決済法、そして金融商品取引法。
銀行法では、銀行は関連業務を除き、他社の株式を5%超保有することは認められていません。
資金力を誇る銀行が他社株を制限なく保有することができると、その支配力が過度に大きくなるためであると考えられます。
しかし、Fintech関連の会社であれば、例外として株式保有の制限が適用されません。
したがって、Fintech関連の会社には制限なく出資することができ、Fintechビジネスの発展にまい進することができます。
ちなみに保険業法では保険会社はやはり一部例外を除き、10%を超える他社の議決権を保有することはできない規定がありますが(第107条第1項)、この規定とFintechについては触れられませんでした。
今後保険業法はどのように変わっていくのかということにも注目したいところです。
資金決済法においては経済的価値の交換や決済のあり方が定められていますが、この中で「仮想通貨」の定義がなされました。
ブロックチェーン等Fintechで生まれた新たな価値の流通の体系が、法令にも組み込まれたと言えそうです。
もっとも、資金決済法の中では整理されたとはいえ、金商法や貸金業の中での整理はまた別だと思いますので、複雑な法体系の中にブロックチェーン等が組み込まれていくのはまだ先のことになるのでしょう。
金融商品取引法では、クラウドファンディングに対応して業規制が改正されています。
原則として、株式や債券の募集は第一種金融商品取引業者、組合持分などの募集は第二種金融商品取引業者が行うことができますが、それぞれ資本規制などが厳しく定められています。
しかし、クラウドファンディングで株式や組合持分などを募集して資金調達する場合、規模が大きくないため、第一種・第二種金融商品取引業者としての業規制をクリアするのが難しいという課題がありました。
そのため、クラウドファンディング業者限定で、第一種少額電子募集取扱業・第二種少額電子募集取扱業というカテゴリーを新たに設定し、クラウドファンディングを行うことに限定して、業規制のハードルを低くし、クラウドファンディン業界の振興と規制の網をかけることを両立させています。
このように、いくつかの法令ではFintechに対応して法改正がなされています。
ただ、Fintechのビジネスも概ね既存の金融の延長線上にあることから、抑えておくべき法令も基本的には自分の行いたい業態に即したものであり、Fintechだから特別に押させておく必要がある法令というのは多くはなさそうな印象でした。
しかしながら、Fintechが今後どのような形で金融業を変えていくかは未知数であり、その形に即して法令を抑えられるように、コンプライアンス担当者としても、ビジネスの本質を理解する能力はこれまで以上に重要になってくるようにも思いました。
Fintechに関する法令を概観する機会はこれまであまりなかったので、貴重な授業でした。
ちなみに授業終了後、本校の卒業生で、オランダ留学時代に同じ大学で学んでいた方と遭遇しました。
卒業後も顔を出されていたようで、世間の狭さを再確認しました(笑)。