その言葉を目にしない日はないくらい盛り上がりを見せているFintechですが、その中でも最も注目されている技術の一つがブロックチェーンです。
すでにビットコインなどで実用化されていますし、MUFGなど銀行が独自のコインの導入を目指す動きも起こっています。
個人的にもブロックチェーンやビットコインといった技術には多くの可能性を感じていて関心があったのですが、先日Fintechの授業でブロックチェーンについての講義を受けることができました。
日本におけるこの分野の第一人者の方がゲストとしてプレゼンを行ってくださったのですが、こういう機会を得られるのも大学院のありがたいところです。
講義の内容はブロックチェーンの技術的な説明とその応用・実用の説明でした。
技術的な部分について、これまで漠然とした理解しか持っていませんでしたが、専門家の方から説明を受けて、少し理解が深まりました。
また、その技術的な限界についても説明を受け、ブロックチェーン・ビットコインも万能ではないのだということを知ることができました。
例えば、ブロックチェーンの技術を使ったビットコインの世界では、概ね10分に1回新しいブロック作成のための計算(マイニング)がなされていますが、そのための計算には膨大な電気を消費することになり、そのコストは無視できないものです。
しかも、取引が多くなるほど計算量も多くなり、したがってコストも高くなります。
自分の計算により新しいブロックが作成されたときは、自分に入金するという報酬が発生するのですが、報酬額はブロックの累計数に応じて逓減していくため、マイニングの報酬がコストに見合わなくなるとそのシステムが適切に機能しなくなると思われます(ブロックの作成時間が長くなる、あるいは新たなブロックが作成されなくなり取引が止まる)。
しかも、そのブロックチェーンシステム上に貨幣取引以外のアプリケーションが稼働していた場合、それらのアプリケーションも機能しなくなる恐れもあり、この不安定性が社会インフラとしてのハードルであると指摘されていました。
また、チェーンの分岐(唯一性)、ネットワークやガバナンスにおける課題も紹介されており、これらも興味深いものでした。
もちろん、このような課題を含みながらも、ブロックチェーン、あるいは分散レッジャー(台帳)といった技術はこれからも進歩するでしょうし、その中で新しい活用方法も考えられていくものだと思います(講師の方もそのようにおっしゃっていました)。
また、カンボジア中央銀行がHyperledger Irohaとよばれる分散レッジャーを銀行決済に導入する取り組みを進めており、実現すれば世界初の法定通貨のデジタル化となるということをおっしゃっていました。
興味深かったので関連する記事を読んでみると、ブロックチェーンによる決済を安定して迅速に行う基盤として導入を検討しているようです。
ソラミツ株式会社プレスリリース「ブロックチェーン「Hyperledger Iroha(いろは)」の中央銀行・金融監督当局への採用」
決済システムの整備が遅れている途上国がイノベーションにより、既存のシステムの改善ではなく、一足飛びで決済システムの向上を図るという点が興味深かったです。
途上国では通信システムが先進国に比べ発展していない一方、携帯電話の普及率が先進国並み、あるいはそれ以上ということも珍しくなく、その状況もこのようなイノベーションに適しているといえるのかもしれません(この携帯電話の事例自体が、イノベーションにより既存のシステム改善を飛び越えたケースでもあります)。
講師の方もおっしゃっていましたが、新しい技術の活用を考えるなら、目先ではなく中長期的な目線を持つことが必要で、その間の社会のトレンドや課題・ニーズを考えて、その中で求められる技術やビジネスを展開していかなくてはならないと思います。
我々の資産運用業界においてもFintechの波は押し寄せていますが、例えば今から10年(~30年)の間に資産運用業界にはどのようなトレンドが訪れ、どのような課題・ニーズに応えていかなければならないのか、ということにしっかりと向き合っていく必要があると思います。
もしかすると、それに気づいたということがこの講義の一番の収穫であったかもしれません。
今後もこの課題を頭の片隅において業務・勉学に励みたいと思います。