ルワンダ中央銀行総裁日記

開発後進国の悲劇といえば、貧困や衛生問題とともに紛争が挙がりますが、その中でもアフリカのルワンダという国は民族問題(ツチ族フツ族)に伴う紛争と大虐殺という悲劇が生じたことで知られています。

ルワンダ紛争は1990年から始まっていますが、それまでのルワンダは比較的繁栄していて、また、紛争後の目覚ましい復興は「アフリカの奇跡」とまで言われるそうです。

そんなルワンダの発展の陰には、一人の日本人の活躍があったそうです。

服部正也氏。日本銀行・IMF勤務の後、ルワンダへの技術援助の一環としてルワンダ中央銀行総裁として赴任。

在任はなんと6年間。日本銀行の総裁の任期を考えると、相当な長期間であったと思われます。

外国人なのに中央銀行の総裁を務めるとはどんな人だろうと関心を持ち、彼の著書「ルワンダ中央銀行総裁日記(増補版)」を読んでみました。

服部氏はもともと、ルワンダの通貨改革のための赴任でしたが、その枠を超えて、ルワンダ経済全体の責任者のような役回りを果たし続け、国際収支の改善のみならず産業振興にも貢献されました。

当時は中央銀行といってもスタッフは少ないうえ、能力的にもまだ未熟。建物だって小さい。

先進国から顧問の人も来ていたとはいえ、使い物にならない人材が多かったそうです。

そんな中、スタッフの育成や現地外国企業との交渉、法令諸規則の立案など細かいことも含めてかなり自分で動かれていたそうです。

そんな服部氏が強調するのは「人」の大切さ。

国家の発展を支えるのも妨げるのも人であり、だからこそ人のやる気や能力開発を重視したそうです。

また、思い込みを捨て、謙虚な目線で現地人を理解することも大事だと指摘されています。

先進国出身の人間が途上国に行くと、つい自分の方が正しいのだという考えを持ってしまいがちですが、現地には現地なりの合理的な考え方があるため、じっくりと観察したり接触して理解しなければならない。

ほとんど縁のない開発後進国に一人で乗り込み、政府関係者や企業のトップたちと交渉をし続ける精神的な強靭さにも感銘を受けます。

着任当時まだ50歳にもならない若さだったようですが、その若さで一国を背負い、真剣勝負を繰り広げたというのは本当にすごいことだと思います。

よく「若手起用」の対立項として「経験重視」ということが言われますが、経験とは年齢ではなく、その濃さだと思いました。

なお、氏はルワンダ中央銀行総裁辞任後、日本銀行復帰を経て世界銀行に転職、副総裁まで務められたそうです。

なお、彼の著書には、その後のルワンダ紛争についての文章が掲載されていますが、さぞかし無念だったと思います。

その文章の中で、マスコミの変更についての記載がありますが、やはり自分なりに情報源を広げて、自分で考えられるようになりたい、と感じました。

といいつつ、つい新聞に頼りがちなので、言うは易く、行うは難き、そのものなのですが。

彼は日本への帰国の際に、初めてルワンダ人の真心に触れ大変感動されたそうですが、こういう仕事って、本当に冥利に尽きると感じ、自分のキャリア形成にも参考にさせていただこうと思いました。

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