大抜擢

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いよいよ新年度。新社会人の旅立ちの時でもありますが、社会人にとって年度末、年度始めのこの時期は人事が気になるものです。

人事で特に気になるのが抜擢人事。抜擢された人には期待したくなる一方、複雑な思いで見つめなくてはいけないこともしばしばあるのかもしれません。
ともあれ、組織の起爆剤として抜擢人事は結構影響があるようです。


ということで、人事のこの時期にぴったりの大抜擢のお話を紹介します。

●アメリカ海軍の大抜擢


日米が死闘を演じた太平洋戦争。
緒戦で圧勝して以降、優勢を保っていた日本軍ですが、次第に守勢に回ります。
その背景には物量差や戦略・戦術の失敗などが挙げられますが、要因の一つとして人事の差も挙げられるのではないかと思います。


日本海軍を率いているのは当代一流の軍人・山本五十六司令長官でしたが、人事については年功序列の慣習もあり、必ずしも適材適所とは言えませんでした。

例えば、名将の名高い山口多聞少将を十分に活用できなかったほか、南雲忠一中将や小沢治三郎中将(最後の連合艦隊司令長官)もその専門と異なる(全く逆)配置を行ってしまいました。
特に山口少将は山本司令官と共に米軍に最も評価されていた人物で、この人物を十分に生かせなかったのは日本軍の人事の失敗と評されても仕方ない面もあるでしょう。

結果、日本海軍はその実力を十分に発揮することはできなかったと言えます。



一方、アメリカ海軍といえば、緒戦の敗北後、チェスター・ニミッツ少将を二十数人抜きで太平洋艦隊司令長官に抜擢。階級も一気に大将に。ルーズベルト大統領が、彼こそ最適任の人物だと見込んだからこそ実現した人事だと言われます。


その後、彼は海軍の歴々をよくまとめ、陸軍のマッカーサー大将と競って日本軍を追い詰めたことはよ
く知られています。


太平洋戦争における日本の敗因については、小室直樹「日本の敗因」(講談社+α文庫)などを読んでみると面白いと思います。今の日本にも結構当てはまるものがあり、少々背筋が寒くなります。

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●GEのスーパーCFO

発明家のエジソンが創業し、「20世紀最高の経営者」とも評されるジャック・ウェルチが成長させたことで知られる、アメリカの大手電機企業・GE。

日本でも著名なこの会社、成長の陰には偉大なCFOの姿がありました。

CFO(chief finance officer)とは、日本風に言うと経理・財務担当役員ということになりますが、その役割は財務諸表の作成やIR活動にとどまらず、事業パフォーマンスの測定や投資事業の選定(及び事業からの撤退)、最適な資金調達計画の策定や企業年金制度の立案など幅広い業務に権限が及びます。事業とおカネはほぼ一体と考えると、その権限が広範に及ぶことが簡単に想像できると思います。

「世界で1位か2位になれない事業しか行わない」という方針でGEの成長を実現したウェルチが抜擢し、CFOとしてその財務戦略を支えたのが、デニス・ダマーマン氏(元AIG取締役)です。

ウェルチが副社長の頃、彼に経営上の質問をしたところ、回答が気に入って、さらに業務上の成績も良かったことから、後にCFOに抜擢。弱冠38歳のときでした。

彼は事業のパフォーマンス測定に強みを発揮しただけでなく、財務に強い人材の育成にも貢献しました。
彼は財務以外の部門からも幅広く人材を集め、財務に関する教育を施しました。その結果、各部門に数字に強い人材が配置されることになり、会社のパフォーマンス向上に寄与することになりました。

彼はウェルチに仕えたのち、GEの副会長にまでなりました。
また彼のCFOとしての名声は全米に轟き、AIGなど多くの会社の経営に参画することになりました。
38歳の彼を登用し、ここまでの活躍をさせたことは、まさしくウェルチの慧眼と言えるでしょう。

これまで活躍してきたCFOの奇跡については、井出正介「最強CFO列伝」(日経BP社)が参考になります。

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