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世の中には優れた本がたくさんあります。
その中には、本業の作家ではなく、本業を別に持った人の著作も数多くあります。
本業を別に持った方の作品は、ベースになる実務・知識・経験があるため、そのスタンスに立った独特の視点から書かれていて面白いことがよくあります。
個人的には、自分もそんな風になれたらなどと考えることがあります。
ということで、今回は本業と著述業を両立させた人物のお話です。
●カエサルと「ガリア戦記」
紀元前ローマの混乱に終止符をつけるとともに、ガリア(フランス)等に対する外征でその勢力を拡大し、帝政による集権制を目指す半ばにして暗殺された、ユリウス・カエサル。
彼はリーダーシップや戦闘指揮能力など数多くの点において歴史上屈指の英雄とされていますが、彼のすぐれた業績として文筆が挙げられます。
「賽は投げられた」のように、コピーライターとしても優れた彼ですが、彼の文筆業における最高の作品としては、ガリア外征中に書かれた「ガリア戦記」が挙げられます。
ガリア戦記の詳しい評については、例えば塩野七生氏のベストセラー「ローマ人の物語(ユリウス・カエサル ルビコン以前)」などにありますが、歴史的資料として一級品であるだけでなく、文章の技巧的要素にも優れていたそうです。
ちなみに、「ガリア戦記」はもともとローマ本国への報告資料だったそうで、簡潔なのはそれゆえなのかもしれません。
もし、会社の調査レポートなどでそれが歴史を超えた一級資料になることがあるかと考えると、その凄さがわかろうというものです(そういう意味でも「もはや戦後ではない」という白書の言葉は凄い)。
もとい、現代におけるレポートというのは書き方がある程度あると思いますので、カエサルのような文筆家がその制約のもとで才能を発揮できるのかどうかはわかりませんが。
・・・ちなみに私は「サブプライムローンと証券化」なるテーマでちょっとだけこの壁に挑んでみましたが全然ダメでした(泣)
●曹操と孫子・詩
カエサル同様、リーダーシップや戦闘能力によって中国の大部分を勢力下におさめ、大国・魏を築きあげた中国史上屈指の英雄・曹操。
彼もまた、文筆業によってその名を歴史に刻みます。
彼のその方面での業績としては、「孫子」に注釈を記したことや名高い数々の漢詩を作り上げたことなどが挙げられます(五言の形は彼が形成したとも言われます)。
ちなみに、「志は千里に在り」や「(烈士は暮年にして)壮心やまず」といったフレーズは彼の漢詩から来ています(歩出夏門行)。また、「短歌行」もよく知られています。
曹操の子の曹丕(文帝)は文章で、曹植は漢詩でその名を知られています。
また、曹操は人材の収集に熱心だったことでも知られていますが、ライバル・袁紹との戦いの際に、その部下の陳琳が曹操を罵倒した檄文を名文であると褒め、戦後迎え入れています。