ベンチャーの風穴

生命保険業界における新興勢力・ライフネット生命が、保険の原価を開示するようです(詳細はこちら)。

私も前職では生命保険会社のディスクロージャーに携わったことがあるので、少しだけ生命保険会社のディスクロージャーの考え方に触れたのですが、保険そのものの開示には結構消極的なところがあったような気がします。

例えば、三利源

保険会社の利益は、死差・費差・利差からなっているといわれます。

すなわち、想定していた死亡率より実際の死亡率が少なくなって保険金の支払いが少なくなったことによる利益。

想定していたより少ない費用で保険を運営することによる利益。

そして、想定していた利率より効率よく資産運用できたことによる利益。

保険から生まれる利益は、この3つです。

もっとも、利率については、低金利が続いたことにより、また一部の商品はバブル期に高い利率を約束したことにより高予定利率となっていることから、むしろ損が出る「逆ザヤ」傾向にあります(改善傾向にありますが)。

(なお、三利源から生じた利益は、配当という形で契約者に還元されます。)

で、現在でこそ多くの会社がこの三利源を公開していますが、実はこれも最近のこと。

保険金の不払いで最初にたたかれた明治安田生命が、信頼回復の策として打ち出したのが三利源の開示。

これを開示してしまうと、保険会社の利益の構造がかなり見えてしまうので、保険会社としては気持ち悪い。

ということで他社はやや冷やかな目で見ていましたが、第一生命が続いて開示すると、あとは雪崩を打って開示していたように思います。

が、これはまだ会社全体の話。

しかし、今回ライフネットが行おうとしているのは、個々の保険における原価(保障の部分)。

ライフネットの売りは、従来の(営業職員チャネルを主体とする)保険会社とは違う、シンプルで低コストの保険。

これは彼らのマーケティング政策でもあるのでしょう。

しかし、これは他の保険会社はたまらない。

「ライフネットは開示しているのに、どうしておたくは開示しないの?」

なんて顧客に聞かれたら大変。

そうでなくても横並び意識の強い業界です。

報道によると、お怒りの方もいらっしゃるようで。

そういえば、業界に顧客のための情報開示を提言して一蹴されたことがありますが、いい思い出です・・・

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