美術史概論(2)_自習

知識が増えると生活の彩りも増える

先日所用で三重に行ったのですが、せっかく関西に行くのなら奈良大学でいろいろ学んでいることだし関連する場所にも行ってみようと思い、京都に足を延ばすことにしました

外国人観光客にも人気の京都を楽しむなら今のうちに行っておいた方がいいというのもありますが、それ以上に美術史概論のテキストで触れた仏像を実際に見てみようと思ったことが大きいです。

神社仏閣は好きでよく訪れるので仏像も目にはしますが、仏像自体を積極的に観察しようと思ったのは初めてのことです。
最初は単位のためとか、一応知識としては頭に入れておこうと考えて履修した美術史概論ですが、関心が薄くても能動的に学ぶとそれはそれで関心が出るもので、知識が増えると関心や好奇心を感じるポイントもその分増えて、見える景色も変わってくるものだと思いました。生活に彩りが出る、ということもできるでしょうか。

ということで、半日という短い時間でしたが奈良大学の科目の延長の個人学習(?)をご紹介したいと思います。

 

美術史概論・自習編

東寺(教王護国寺)

京都には何度か訪れたことがありますが、京都駅の北側ばかり行っていて南の方には行ったことがないので、今回は南側を動こうと考えていました。

その中で是非とも行きたかった場所の一つが東寺(教王護国寺)でした。
というのも、美術史概論のテキスト『日本仏像史』では平安時代の仏像として東寺のものが多く取り上げられていて、せっかくなのでテキストと実物を見比べてみたかったのです。あと、テキストの説明を見ながら実物を見てみたかったのもありますね。

京都には観光日前日の夜に到着する予定だったので、東寺の近くのホテルに泊まったのですが、たまたまライトアップのイベントが開催されていたので、ホテルに荷物を置いてすぐに行ってきました。

ライトアップされた東寺の五重塔

調べてみると京都だけでも複数のお寺でライトアップのイベントが開かれているようでした。紅葉の季節ですから、どのお寺・神社でも幻想的な景色が広がっていそうです。
私が見た景色も写真よりもっときれいだったので、もう少しうまく撮影したかったです(汗)

それはさておき、翌朝改めて仏像を拝見しに東寺へ。

五重塔や御影堂もよかったですが、お目当ては講堂の仏像群です。

東寺の行動と美術史概論のテキスト。テキストのおかげで有意義な学びに。

講堂の仏像はいくつかテキストの中で説明があったので、テキストの写真や説明と見比べながら実物を観察しました。
テキストの写真と実物では印象が異なりますし、テキストの説明も実物を見るとそうかなあ?と必ずしも腹落ちしなかったのですが、これも実物を見たことによる学び・収穫だと思います。
もちろんテキストの説明を否定するつもりはないのですが、美術という分野では自分で何かしら感じることも大事でしょうし。

萬福寺

今回の京都観光で行きたかった場所は東寺と宇治の平等院鳳凰堂でした。
そのため、東寺から京都駅に戻り、JR奈良線で宇治に向かったのですが、途中で黄檗駅という駅があることに気づきました。
黄檗駅というと、江戸時代に広まったとされる禅宗の黄檗宗と関係があるのかと思い調べてみると、黄檗宗の総本山の萬福寺があるということなので途中下車して伺うことにしました。

萬福寺総門

萬福寺の魚梆

萬福寺にもテキストで紹介されている仏像がありました。十八羅漢の蘇頻陀尊者という仏像で、テキストでは生々しい容貌・ねちっこい衣文表現という説明がされていましたが、確かに濃い表情で衣服もひだが多い印象を受けました。そしてそれは中国由来の黄檗宗独特の表現で一般的にはならなかったそうですが、確かに他の仏像とは全然違う感じでした。
もっとも、日本の仏像も昔から中国の影響を受けているので、黄檗宗のものが当然に異質な存在になったわけではなく、長い時間を経て日本でも日本独自の仏像のあり方が確立していたというだけなのでしょう(テキストでも奈良時代においてすでに唐風は盲目的な追従の対象にはならなかったことが指摘されています)。

また、萬福寺の魚梆(ぎょほう)も名物のようで御朱印にもなっていました。
たたいて時間を知らせるものらしく、ちょうど僧侶の方が叩いているのを見かけました。

平等院鳳凰堂

萬福寺の後は本命の平等院鳳凰堂へ。
宇治駅を降りて少し歩くのですが、その途中にはお茶のお店がズラリ。さすが宇治。

そしてお目当ての平等院鳳凰堂。思ったよりは大きくありませんでしたが、池の前に悠然と佇む様はまさに世界遺産。ただでさえ美しいのに紅葉に彩られているので、ずっと見ていても飽きません。

平等院鳳凰堂。正面から見たら10円玉の景色に。

鳳凰堂の中に入るのは待ち時間が長かったのでパスしましたが、鳳凰堂に保管されている品々は見学可能でした。テキストでは雲中供養菩薩という仏像群(たくさんあります)のいくつかが紹介されていて、それと見比べながら見ていました。雲中供養菩薩はその名のとおり雲に乗っている菩薩が色んな楽器を弾いたりしている仏像なのですが、ユニークなので興味深かったです。記念にポストカードを買ってしまいました(笑)

伏見稲荷大社

仏像見学という意味ではこれで終わりなのですが、京都の南側というと千本鳥居で有名な伏見稲荷大社も外せません。

こちらも奈良線が最寄り駅なので、宇治から京都駅に帰る途中に寄りました。

千本鳥居。迫力がすごい…

千本鳥居はその名のとおり鳥居がひたすら続く鳥居のトンネルですが、之だけ鳥居が並んでいると圧がすごいです。

 

言語伝承論・自習編

JR奈良線で宇治に向かっていると、木幡駅という駅があるのに気づきました。
その駅を見て思い出したのが言語伝承論のテキスト。というのも、取り上げられている歌に木幡を詠んでいるものがあり、著者が木幡駅の駅名標の写真を載せているのが印象に残っていました。
ちなみに駅名標という言葉を今調べて初めて知りました(笑)。

せっかくなので、自分でも一枚撮影。

言語伝承論のテキストにも載っていたJR奈良線の木幡駅の駅名標。

ちなみに取り上げられていた歌は下記のものです。

青旗の 木幡の上を 通ふとは 目には見えども 直に逢はぬかも 
(万葉集 巻二の一四八)

この歌は天智天皇の皇后・倭太后が天皇の危篤にあたって詠んだ歌で、天皇の魂が木幡を通っているのは見えるのに物理的には会えないという辛い感情が表されているとされています。

ここでなぜ木幡という地名が出たのかというと、木幡は交通の要衝で太后の下に通う天智天皇の魂を表現するに相応しいからという理由があるそうです。冒頭の青旗は語呂として木幡と合うということで用いられています。

言語伝承論も勉強する前はそれほど関心を持っていませんでしたが、勉強しておいてよかったと思いました。どこで何がつながるかわからないものですね。

 

平安文学論・自習編

宇治といえば宇治茶のほかに源氏物語の舞台となったことでも知られています。
源氏物語の終盤の「宇治十帖」が宇治を舞台にしていて、宇治川付近では源氏物語のモニュメントがたくさんありますし、近くには源氏物語ミュージアムもありました。

源氏物語ミュージアムは時間の関係で行けなかったのですが、源氏物語のモニュメントを見ながら平安文学論で源氏物語の婚姻関係も勉強したことを思い出しました。
ちなみに試験も源氏物語のヒロイン・紫上の法的なステータスについて述べるというもので、なぜ紫上は妻ではなく妾であるのかを論じました(試験は無事合格しました)。

宇治十帖をモチーフにしたモニュメント。

平安文学論では古典そのものを読み込んだわけではなく、源氏物語もしっかり読んだことがないのでこれを平安文学論の自習といっていいのかわかりませんが、まあ少しでも関心を持てたということでヨシ!

 

学びは旅行を楽しくする

ということで、駆け足で京都の南側を巡ってきました。

奈良大学で学んでまだ半年程度ですが、それでも京都の旅行を有意義にした学びが多かったことを実感しています。
特に美術史概論・言語伝承論・平安文学論と履修前は関心が薄かった科目の学びが貢献していて、そのような分野を学ぶことができたということが特に収穫のようにも思えます。

そして、学んで知識をつけると旅行が楽しくなるということも改めて感じました。
これは歴史や芸術に限らずどの分野にも言えることだと思いますので、これからもアンテナを高く張って旅行のスパイスにできるように意識していこうと思います。

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