城を攻める 城を守る

歴史や観光と楽しむ切り口は人によって様々ですが、その中でも多くの人が惹かれるポイントの一つに「」があります。

そして、城の味わい方についても、その城の歴史、構造などの見栄え、周囲の景色とのマッチングなど、それぞれの人のこだわりがあることでしょうが、そのうちの一つに、その城にまつわる物語、ということが挙げられると思います。

そして、城にまつわる物語の中でも特に人の関心を引くのは、その城を巡る攻防戦ではないでしょうか。

現在大規模な天守閣が残っている、あるいは再建されている城の多くは、戦国時代以降に建設されたもので、城の役割が防衛から政治の中心、あるいは権威の象徴に移り変わっていく時期であったこともあり、本格的な攻防戦・籠城戦を経験していないものが多いように思います。
例えば世界遺産として名高い姫路城は現在の姿になってからは攻防戦の事例はないと思われますし、やはり名城として名高い名古屋城や彦根城もおそらく同じです。
天守はありませんが、江戸城や青葉城(仙台城)もやはり戦争の舞台とはなっていません。

個人的な認識ですが、現在観光名所として有名な城のうち、本格的な攻防戦を経験したものは、会津若松城や大坂城、熊本城、松本城など、案外少ないのではないかと思います。
もちろん、小田原城や上田城など、他にも多くあることはあるのですが、例えば国宝に指定されている城郭の中で戦争を経験した城の割合はかなり低いように思えます。

それは城の役割や歴史を考えれば当然のことで、戦国時代に大きな役割を果たした城も江戸時代になるとその役割を終え、廃城になるケースもありますし、また政治や権威の象徴として機能することを求められる城の方が、見栄えもいいでしょうし、時代も新しいことから保存状態もよく、人の目を引くのだと思います。

しかし、城の魅力である物語に目を向ければ、天守閣も残っていなければ、観光名所として有名ではない城が活き活きとしてきます。

そんな城の物語に焦点を当てて、城の魅力を描き出してくれる書籍を読みました。
城を攻める 城を守る」。城の物語でも最も華々しい籠城戦の物語を描き、その城の魅力を再発見させてくれます。

この書籍の素晴らしいところは、有名な戦いだけでなく、重要だけれどもあまり注目されなかった攻防戦についてピックアップしてくれている点です。
例えば、桶狭間の戦いといえば、織田信長が今川義元を打ち取った場面ばかりが注目されますが、その前哨戦としていくつかの攻城戦があり、その流れの中で桶狭間における野戦となっており、そのあたりが描かれているのは興味深いです。

また、豊臣秀吉による小田原征伐については、本城である小田原城の戦いではなく、支城である八王子城・鉢形城・韮山城・山中城の戦いに紙幅を割いているのが心憎いと感じました。
特に韮山城では寡兵ながら善戦していたり、山中城は北条家の築城技術の粋を尽くした堅城といわれながらあっさりと抜かれたり、と注目すべき点は多いにもかかわらず、この両城の戦いはあまり注目されていなかったように感じていましたので、これらの城の物語に触れることができたのはとても印象的でした。
(八王子城・韮山城についてはこちら、鉢形城についてはこちらもご覧いただければと思います)

ちなみに、最近山中城に行ってきましたので、景色を少しご紹介します。

 


北条家特有の技術である畝堀

戦国時代には城砦を含めると、日本中至るところに城があり、そして多くの攻防戦が繰り広げられました。
その多くが、現在は人の関心を集めることなく、ひっそりと佇んでいますが、少しでも多く、その地で必死に生き続けた人たちの物語を知りたいと思いますし、共有していけたらと願います。

ちなみに本書では戦国時代のほか、幕末や西南戦争における城の物語も取り上げられていますので、ご参考まで。

城を攻める 城を守る (講談社現代新書)
伊東 潤
講談社
売り上げランキング: 146,992

 

カテゴリー: 歴史人物(日本史), 読書 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です