明治維新・文明開化から150年ほどになりますが、今や日本人でもコーヒーを楽しむことは普通のことになりました。
コーヒーのチェーン店も増えてきて、ひいきのコーヒーの味やチェーンがあるということも珍しくないように思います。
その中で、高めの価格設定ながら一定の人気のあるブランドの一つにタリーズコーヒーがあります。
タリーズはアメリカのコーヒーブランドですが、その味に感動し、日本で展開を始めたのが、現参議院議員(みんなの党)の松田公太氏です。
実は松田氏は私の居住地の選挙区で、また彼のインタビューを聞いた時に興味が出たので、彼の著書「すべては一杯のコーヒーから」を読んでみることにしました。
本書では、松田氏の人生観を形成した経験や創業の経緯、タリーズジャパン初期の状況について語られています。
もともと食に関心があった松田氏ですが、家庭の都合でいくつかの国に住むうちに、自分のアイデンティティについて考えるとともに、食文化の違いにもふれることになりました。
例えば、ウニや生魚をおいしそうに食べていると奇異の目で見られたりしたそうです。
そんな彼がコーヒーに目覚めたのは、大人になって米国に行ったときに、たまたまコーヒー店に行列ができているのを見て、コーヒーを飲んでみたら非常においしく、スペシャルコーヒーを日本でも、と思ったそうです。
彼の経験は起業家を目指す人にはもちろん、一般の社会人にも教訓になります。
一番大事なことは情熱を持ち、チャンスを逃さないこと。彼はまったくコネもない状態からタリーズにメールを送り続け、会長が日本に来ていると知った時には即座に面会に行っています。
また、事業を拡大する中で、規制との戦いもありました。
細かい規制や縦割り行政のために些細なことにも多大な時間とエネルギーを費やすことになったそうです。
二つの規制がぶつかった際に、第三者として調整してくれる機関があれば少しはそのような状態も緩和されるでしょうが、そういう機関や部署はあるのでしょうか。
松田氏のキャリアの始まりは銀行員からということですが、銀行でもいろいろ不可解な規則や奇妙な話があったそうです。
規則は大事ですが、柔軟性がないと仕事もしにくいし、無用のストレスもためてしまいそうです。
今は変わりつつあるのでしょうが、銀行に限らず、できるだけ何かに縛られずに仕事ができたらいいと思います。
そのほかにもいろいろな経験談があって面白かったです。
一から自分で事業を立ち上げているため、問題意識も具体的に指摘されています。
おかげで一つ一つが勉強になりました。
前述のとおり、松田氏は現在政治家として活動中ですが、氏の経験を活かして、ベンチャー企業がより活発に活躍できるような仕組みづくりに期待したいと思います。
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