学生時代、東アジア共同体に関心があった関係で、経済学者の故・森嶋通夫氏の著作を読んだことがあります。
その中で、沖縄は歴史的経緯もあり、日本から独立して別個の国になったほうがよい、というご意見があったように思います。
それを読んだ時、趣旨は分かるけれども、現在の政治的な環境や日本とのつながりの歴史を考えると難しいな、と考えた記憶があります。
県民の意思はともあれ、沖縄戦では日本のために多くの犠牲者を出した経緯や在日米軍基地の大部分を引き受けてもらっている現実もあります。
しかし、現職の政権幹部が軽々に沖縄独立を語ったのを聞いて、心底怒りを通り越して呆れました。
政権交代直後、菅総理(当時副総理)が沖縄県選出の喜納参院議員に対して、基地問題は重すぎるし、正直触れたくない。いっそ、沖縄は独立した方がよいのはでないか、などと語っていたそうです。
これが事実であるとしたならば、沖縄県民に対する侮辱のみならず、日本国民に対する背信とも言えると思います。
政権直後の本格的な行動も行わないうちからこんなことを言うとは、政権公約は口だけ、基地問題を取り上げたのは選挙のためだけでした、と白状するようなものです。
また、政権の沖縄に対するこのような態度は安全保障についても大きな影響があるでしょう。
これまで日本(本土)のために犠牲も払い、我慢もしてくれた沖縄の方々に何と言う?
喜納氏はジョークだったとしても重い、と多少のフォロー(?)はしていますが、こんなことをジョークで言う方がよほどおかしい。
真剣に考えて考えて、という結果の方がまだ救いがあるように思います。
そんな菅総理は23日に沖縄戦65周年の式典参加のために沖縄を訪れるのだとか。
こんな発言をしておいて、沖縄の方々にどんな顔をして会うと言うのか。
仙谷官房長官も、この話については「検証しようがない」と特段の確認を行うつもりはないそうです。
著者と総理に確認して、何らかのコメントもできようものを。
「社会起業家の父」ビル・ドレイトン氏は講演で「社会起業家に最も必要なのは人の痛みを感じることだ」とおっしゃいました。
政治家というのは社会起業家の最たるものだと思うのですが、沖縄の人々の痛みを感じることもなく風をやり過ごそうとしている政治家は、残念ながら社会起業家とは言えないと思います。
菅総理のこの発言が事実と異なっており、それが公式にコメントされることを願います。