マイクロファイナンスという画期的な手法で、市場の最前線で貧困と闘うグラミン銀行創設者、ムハマド・ユヌス。
その功績によってノーベル平和賞も受賞した彼の生き方や考え方を知りたいと思い、彼の自伝を読んでみました。
貧困層の女性に焦点を当てて、その可能性を見事に引き出し発展してきたグラミン銀行ですが、当然ながらその過程には多くの失敗や借り手の夫や他銀行、当局などの抵抗がありました。
しかし、ユヌス氏はそれらに対し粘り強く理解を求め、協力を引き出していきました。
ユヌス氏の先見の明はもちろんですが、このような粘り強さや実行力についても学ぶべきところは多いと思いました。もちろん、貧困を目の当たりにして、象牙の塔から実務の世界へ飛び出す勇気も大いに賛同するところです。
また、一見借り手とするには不安にも思える貧困層の女性の可能性を一貫して信じてきたことについても感銘を受けました。
自分自身、いまだに信じられない気持もあるし、多くの銀行家もこの点について強い懸念を示し続けています。
しかし、よく考えてみると、この仕組みはホームレスの方が販売しているビッグイシューと似た点があります。
ビッグイシューも最初10冊の冊子を原資として与えられ、そこから少しずつ販売量を増やしていきます。
この最初の10冊こそ、まさにクレジットなのだと思います。
また、我々は失業問題の対策として雇用の拡大にばかり目を向けますが、グラミン銀行は自営の可能性に焦点を当てます。
いろいろと我々の常識とは違う考え方を見せてくれますが、興味深いのはこのビジネスモデルがバングラデシュのみならず、アメリカを含めた先進国でも成功していること。
可能性を信じたい人の根源的なエネルギーや絆を求める本能は各国共通ということでしょうか。
グラミンの考え方、発展の過程を感じるのにベストの一冊です。
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