私の愛読書の一つである山崎豊子「沈まぬ太陽」がついに映画化されました(公式サイト)。
モデル(と言われている)の日本航空が再建で四苦八苦しているこのタイミングでの公開は皮肉な感もありますが、待望の映画化です。
「沈まぬ太陽」は、空の安全を守るために、労働者の待遇改善を強硬に求めた、将来を嘱望された恩地元が報復人事を受けながらも節を曲げず、御巣鷹山事故の後、外部から招聘された会長と協力し、社内改革を進めるも・・・という話です。
正義のために節を曲げず、報復にも負けなかったというのは、まさに人間としての理想像であり、小説の登場人物とはいえ、恩地元は私の最も尊敬し、目標とする人物の一人です。
また、ある乗客が、墜落の恐怖の中で家族への愛情あふれる遺言を遺すシーンに思わず涙を流してしまいました。小説でもこの場面はいつも目頭が熱くなります。
一方、国民航空のやり方、幹部の無責任さに憤りを感じるのは当然なのですが、一方で必ずしも否定しきれない部分もあり(ある意味で行天の企業への貢献は大きい)、企業として清く正しく生きるということは本当に難しいことなのだと思いました。
また、恩地が節を通す一方で家族が犠牲になっているという面もあり、この点でも何が正しいのか、正しいことは全ての点で正しいと言えるのか、などと考え込んでしまいました。
ついでながら、観ていて国民航空とJR西日本が重なってしまうのは私だけではないのではないでしょうか。
本作品は3時間半の長編ですが、1分も気を抜くことなく見入ってしまいました。
主演の渡辺謙さんはさすがです。恩地のイメージにぴったりすぎます。
香川照之さんは、「カイジ」の利根川からイメージ違いすぎ・・・。